スポンサーサイト
新しい記事を書く事で広告が消せます。
秘密 2
あやのエッチな毎日☆
秘密 2
一応、ハウスメイドなので、掃除、洗濯、料理は基本のコースだが、亜矢の場合、そういったものに割いている時間はない。
普段は食事のしたくは、予め用意してきたものをレンジで温めるだけだ。
亜矢は、直人の部屋に入るとすぐにエプロンをした。
高校生が相手では、裸にエプロンという格好はまずい。
亜矢が、そう広くもないキッチンで食事の仕度にとりかかると、後ろから直人が覗いている。
「料理って、わたしも簡単なものしかできないけど…」
亜矢の背中越しに直人に話しかける。
「簡単なのがいいんです。僕もそんな時間かけたくないから、早くできておいしければ最高」
「じゃぁ、今日はまずご飯の炊き方からね」
亜矢は、おそらく一度も使われたことのない炊飯器の内釜を取り出した。
「計量カップってあるの?」
「えぇーっと、たぶん、これかな?」
おそらく炊飯器についていたものだろう小さな計量カップを直人が取り出した。
「ねぇ、普段どのくらい食べるの?」
「どのくらいって…?」
亜矢は、手じかにあったちょっと大きめのお椀を持つと、
「これで2杯くらい食べる?」
「うん。まぁ、そのくらいは食べるかな」
「じゃぁね、このカップにいっぱいのお米を3杯。それが一回分の目安よ。いい?」
亜矢なら1日で食べきれないほどの量だが、高校生の男の子なら、このくらいは一回で食べるんだろう。
亜矢の知り合いの女性の子供が、男の子で高校生で柔道をしている。
夫婦とその子の3人なのだが、毎日、一升、ご飯を炊くらしい。
そのほとんどをその子が食べるのだと聞いたことがあった。
亜矢は、お米をボールに入れて、研ぎ始める。
「まず、お米を研ぐの」
「とぐ?」
「学校で習わなかった?」
「洗うんじゃないの?」
「そうね。“洗う”でもいいけど。こうやって、ごしごしって…、水を流して洗うだけじゃダメよ」
「ふーん。それで、研ぐって言うの?」
「たぶん…」
亜矢は、料理をしているところを夫に覗かれたことはない。
と言うより、たいていそんな時間に夫はいなかった。
誰かと話をしながら食事の仕度をするのは、初めてだ。
何ということもないのだが、それでも少し楽しかった。
「じゃ、ご飯が炊けるまで、お掃除しましょうか」
亜矢は、炊飯器のスイッチを入れて、キッチンを出た。
「掃除は、いいよ。亜矢さんが来るまでちょっと時間があったんで僕がしたから…」
部屋がきれいに片付いていたのは亜矢も知っていた。
「そう?でも、一応、仕事だから…」
亜矢には、ハンディモップと雑巾を持ってリビングのテーブルや棚を拭いた。
床は、掃除機がかけられていたが、テーブルや棚の上には若干、ほこりが乗っている。
「こっちの部屋にも入るわよ」
「あっ、そこはいい。僕の部屋だから…」
「だめよ。ちゃんとしないと…」
亜矢は強引に直人の部屋に入った。
思ったとおりだ。
机の上に、いろんなものが山積みされていた。
片付けたのではなく、リビングにあったものを移し変えただけだ。
「これじゃ、勉強できないでしょ」
亜矢が、机の上に雑然と置かれた雑誌や、DVDやゲームを揃え始めると、直人が慌ててそれらをまとめてストッカーの中に収めた。。
「いいんだって、そのままで…」
直人が狼狽している理由は亜矢にはわかっている。
雑誌とDVDだ。
ちょっと人には見られたくないものに違いない。
「そう?じゃぁ、コーヒーでも飲む?」
キッチンの道具でコーヒーメーカーだけが使われていたのを亜矢は思い出した。
「コーヒーなら僕がいれるよ」
「それじゃ、わたしの仕事がなくなっちゃうわ。座ってて」
それでも直人は亜矢の後ろについてきて、亜矢がすることを見ている。
「ねぇ、亜矢さん」
直人が話しかけてきた。
「何?」
「変なこと聞くけど、いい?」
「何?変なことって」
「SかMかで分けると、亜矢さんはどっち?」
「ほんと、変なこと聞くわね。興味があるの?」
「えっ、まぁ…」
照れた表情が、そこそこかわいい。
「そうね。“足をお舐め”とかってのは、ちょっと言えないから、Sではないと思うけど…」
「ふーん。女の人ってMの人が多いのかなぁ?」
「さぁ、どうかしら。SじゃないからMってわけでもないでしょ」
「そうだけど…」
「あなたは、Sみたいね」
「どうして?」
「違うの?」
「いや、よくわからないけど…」
直人は少し黙った。
「彼女がいるんだ」
「そうなの」
「ってか、告られたんだ」
「へぇ、で、どんな子?」
「かわいい子なんだけど…」
「いいじゃない」
「それがさ、何でも僕の言うとおりにするんだ」
「いやなの?」
「いや、そうじゃなくて、なんていうか、どんどんエスカレートするっていうか。できそうにないことをさせたくなるっていうか」
だいたいの察しはついた。
「で、彼女がMなのかって?」
「それもあるけど、僕がSなのかって。今までそんなこと思ったこともなかったから…」
「彼女が何でも応じるからエスカレートしてるんでしょ?」
「うん」
「彼女が嫌がる顔が見たい?」
「ううん。最初は嫌がるんだけど、でもやってくれるから…」
「じゃぁ、彼女がMなんじゃない?」
「どうして?」
「だってあなたがSなんなら、彼女がどう思おうが、あなたがしたいことをやらせるはずでしょ。でも、あなたは、彼女に応じてエスカレートしてるんでしょ」
「そう…だね。そう言えば…」
直人は何か考え込んだ。
相手がSだろうとMだろうとたいした問題ではない。
そのことを自分が好きになれるかなれないかというそれだけの問題だ。
亜矢の夫は、無口だ。
黙って、テーブルにつき、黙って食べる。
“いただきます”も“ごちそうさま”も言わない。
亜矢にはそれが耐えられない。
亜矢が離婚してもいいと思っている理由は、これなのかもしれない。
考え込んでいる直人に何か言ってやりたかったが、どう言っていいのかわからない。
「ご飯が炊けたみたい」
亜矢は、食事の仕度にまたキッチンに向かった。
秘密(1) ←戻る・進む→ (3) (4) (5) (6)