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人妻あやの失敗 2-2
2.明日、会える?
行為が終わると高志は、すぐに服を着始めた。
余韻も何もあったものではない。
「ごめん、今日、これからバイトなんだ」
「そうだったの?言ってくれればよかったのに」
あやも身体を起こした。
「会いたかったから…」
ばかばかしい会話には違いない。
高志の言葉をそのまま真に受けるわけではないが、悪い気はしない。
「これ」
起き上がってショーツを穿こうとしたあやに高志が、袋を手渡した。
「何?」
「ストッキング、穿いてみて」
あやは、袋を開けた。
黒のストッキングとガーターベルト。
「これを穿くの?」
高志は、あやが手にしていたショーツを取り上げた。
「まさか、これだけ?」
「そう」
あやは、ストッキングだけを穿いた。
「どう?」
「どうって…」
Tバックでもないとあるでは大違いだ。
股間を覆うものがないというのは、なんとも心もとないが、それよりも、ストッキングで生足を晒さずに済むことのほうがありがたかった。
「こっちのほうがいいわ」
「そう?」
高志は、あやをぎゅっと抱きしめた。
服を着た高志に、ストッキングだけ、ほとんど裸の格好で抱きしめられるのも悪くない。
大きく開いた股間に高志の指が侵入してきた。
「高志…、だめ、出かけるんでしょ」
「うん、そうだけど…、あやさんの格好、エロくて…」
「ばか、あなたがさせてるんでしょ」
「そうだけど…、ねぇ、顔は撮らないから後ろ姿だけ撮っていい?」
高志は二三歩下がって、携帯をあやに向けた。
あやは反射的に高志に背中を向ける。
「あやさん、すごいセクシーだから、ぜったいすごいから…」
あやの返事も待たず、高志がシャッターを切る。
あやは、前かがみになってお尻を突き出し、ブラをつけた。
高志が、気にいってくれている自分のお尻。
正直、あやは自分でもそのお尻を見てみたかった。
あやが服を着終えると、あやの携帯にメールが入った。
「今の写真、送ったから…」
「ばか」
「これが、僕のバイト先」
高志は、パンフレットをあやに渡した。
あやの駅の二つ先だ。
「同じ方向よ、うちから遠くないわ」
「そう?じゃぁ、いっしょに行こう」
「いいけど…」
「わかってるって、外じゃ他人な」
あやは、駅まで高志の少し後を歩いた。
高志もあやに話かけたりしない。
駅のホームでは、あやの後に高志が並んだ。
高志の手がそっとあやの腰にあてがわれる。
まるで十代の乙女のようにあやの心はときめく。
(ばか…)
電車が来た。
この駅の乗降客は多い。
多くの乗客が降り、入れ替わるように多くの人が乗る。
あやは、まっすぐ反対側の扉まで進む。
あやの駅では、そちら側の扉が開く。
あやの後にぴったりと高志が寄り添う。
扉が閉まる瞬間、駆け込みの乗客に押され、ぐっと扉に押し付けられる。
真後ろにいた高志が人に押され少し横にずれた。
電車が動き出す。
あやは、斜め後の高志の胸に寄り添うように身体を預けた。
高志の右手があやの腰に回って、あやをぎゅっと自分の方に引き寄せる。
高志の左手は前に回って、あやの股間へと伸ばされた。
(やだ、高志)
高志の手が、あやの太ももを這う。
あやは、少し足を開いた。
太ももをなでる高志の手の人差し指と親指の股が、あやの股間に押し当てられる。
ショーツは穿いてない。
生だ。
高志の指が入ってきた。
(高志、だめよ)
「僕のを触って」
高志が耳元で囁く。
(できないわ、そんなこと)
あやがためらっていると、あやの腰にあてられていた高志の右手が、ゆっくりと下がり始めた。
撫でるのではない。
スカートの裾まで下がると、そこから中に入ろうとする。
「だめ」
あやは、小さな声で高志にそう告げて、ズボンの上から高志のものを握った。
高志の右手はスカートの中に入らず、あやのお尻の上をさまよう。
電車の中でお尻を触らせている。
電車の中でおまんこをいじられている。
電車の中で男のものを触っている。
あやは、目を閉じた。
股間からぴちゃぴちゃという音が、聞こえる。
(高志、だめ、やめて、恥ずかしい)
太ももを冷たいものが伝って流れ落ちる。
高志の指が、激しく動き始める。
(あ、あぅ…)
思わず、声を出しそうだった。
(高志、だめ、もうだめ、立ってられない)
高志の胸に顔を埋めて寄りかかるあやを高志が抱きとめた。
「ふーっ」
あやがゆっくり大きく息を吐く。
車内アナウンスが入った。
あやの降りる駅だ。
駅が近づくと、この駅で降りる人の視線が扉側に集まる。
あやは少しだけ高志から離れた。
「明日、会える?」
「メールする」
顔を見合さず、扉に向っての会話。
「待ってる」
そう言って、あやは電車を降りた。
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人妻あやの失敗1-1
Bad Guys Ⅳ ミステイク
人妻あやの失敗
Bad Guys Ⅳ ミステイク 人妻あやの失敗
1.すれ違い
あやは、バスルームを出ると、ソファでテレビを見ている夫の幸一の横に座った。
幸一は、ここであやを弄るのが好きだ。
すぐに、幸一の手があやの肩に回った。
あやは、幸一の胸にもたれて、パジャマの上から幸一のものを握る。
あやは、大きくなる前のふにゃふにゃした状態が好きだ。
やわらかくてあったかくて気持ちがいい。
頬ずりしたくなる。
あやは幸一のパジャマからそれを取り出し、口に咥えて先端に舌を這わせ始めた。
フェラは好きだ。
口の中で柔らかかったものがどんどん大きくなっていくのが楽しい。
付き合い始めた頃、あやは男の経験がほとんどなかったので、フェラも幸一が最初だった。
幸一は、小さな声で、もうちょっとこうしてとあやに注文した。
あやは、上手になりたくて幸一の反応を見ながらいろいろ工夫した。
本も読んだ。
半年位した頃、幸一に褒められた。
「あや、フェラが上手になったね」
それがほんとに嬉しくて、いつも舐めた。
幸一の手が、あやのパジャマの裾にかかった。
あやは、脱がせやすいように少しお尻を持ち上げた。
幸一は裾を持ち上げ、あやの股間に指を這わす。
あやはパジャマの下は裸だ。
それも幸一の趣味だ。
幸一の指が、あやのお尻に回った。
(やだ、また…)
最近、幸一は、あやのお尻を刺激するようになった。
アナルバイブまで買ってきたが、最初は細いものだった。
たんに刺激されるだけならあやもいやではない。
ただ、幸一の目的は違った。
先週、あやは、お尻に挿入された。
興味もあったので、なんとか痛みをがまんして受け入れたが、正直言って痛いだけだった。
幸一があやをうつ伏せにする。
「お尻はいやよ」
先回りして拒否した。
「痛いか?」
「痛いわ」
「ゆっくりやるから…」
「いやよ」
あやが拒否しているにもかかわらず、幸一の指があやのアナルに侵入する。
「いやだ。痛い」
まだ、痛くはなかったが、あやは大きく身をよじって逃げた。
「わかった。悪かった、もうしないよ」
幸一は、そう言うと、立ち上がりバスルームに向った。
行為は、中途半端に終わった。
あやは何も言わず、背を向けて身体を丸めた。
どうして幸一がアナルにこだわるのか?
どこかでアナルセックスをして来たに違いない。
きっとまたどこかの風俗だ。
結婚している同僚や友人と話す時、夫の浮気が話題になることもある。
そんなとき、あやはただ聞いているだけだ。
浮気に寛容というか、そもそも浮気という基準が他の人たちとは違っていた。
浮気とは文字通り浮気なのだ。
本気じゃないのだから別にどうということもない。
相手の女が会社の部下とか、結婚できる対象となると話しは別だが、そうでなければ、夫が、どこかの風俗で処理しようが、AVを見て自分で処理しようが、自分に対する愛情が変わらなければ問題ないと思っていた。
ただ、幸一がこんなに固執するということは、相当よかったのだろう。
慣れれば、痛みもなくなるのだろうとは思うが、あやは慣れたくなかった。
一方的に押し付けられるのは、いい気分ではない。
幸一は、一時間以上たってベッドに戻ってきたが、もうあやに触れることもなくただ横で眠った。
たぶん幸一は怒っているのだろうが、怒られるいわれはない。
あやも背を向けたまま眠った。
朝の幸一は、普段と何も変わらない普通の顔をしていた。
会話も普通だったが、その日から、幸一は、あやの身体に触れようとしなくなった。
どうして?
わたしが悪いの?
できないことだってあるわ。
あやのほうから手を出すこともない。
セックスがないまま一月以上が経過した。
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人妻あやの失敗1-2
2.休日出勤
長引く景気の低迷で、どこの会社も削れるものは骨でも削るほどのコストダウンを図っている。
あやの会社も例外ではない。
社員が退社してできたできた欠員を派遣でまかないつつ、近隣に分かれていた分室を統合。
さらに組織を簡略化して、事務部門を一本化。
涙ぐましい努力で人員の補充をせずに済ますつもりだ。
分室に置かれていたあやの部署は、本社へ移転することになった。
移転は、土日、2日間で終わらせる予定で、明日の日曜日は清掃のために全員が休日出勤するが、今日は、あやだけが出勤することになっていた。
家庭があるので、毎日の残業をしないかわりに休日出勤を引き受けたというのが表向きの理由。
夫との関係がギクシャクしているので、休日に家にいたくないというのが本音だった。
「おはようございます。…荷物を運びに来ました」
若い男性が元気よく入ってきた。
引越しの業者さんだ。
「おはようございます」
若い。
あやは、一瞬、恥ずかしさを感じたが、すぐに平静を取り戻した。
あやの部署には、男性はいない。
若い男性と二人きりというのには慣れていない。
「南條って言います。よろしくお願いします」
「風間です、こちらこそ、よろしくお願いします」
こういう挨拶も初めてだ。
「ひとり?」
「えっ?あっ、はい。後二人来てますけど、下の階に大きな荷物があるので、そっちやってます。ここは、僕ひとりです」
(僕…)
ずいぶん、久しぶりにボクという言葉を聞いた。
「えーっと、どれから運びましょうか?」
「段ボール箱にAとかBとか、アルファベットが書いてあるでしょ」
「はい」
「これ見て」
あやは、移転先のフロアに置かれている収納の配置図を南條に見せた」
そこには、収納のラックや机ごとにアルファベットが書かれてある。
「箱に書いてあるアルファベットは、これの中の物なの。だから、同じアルファベットのところに置いてください」
「はい。向こうで、ちゃんと合ってれば、こっちはどれから運んでもいいですよね?」
「ええ。かまわないわ」
「はい、じゃぁ、運びます」
南條が、すぐに同じような大きさの段ボール箱を集めて台車に乗せて運び始めた。
元気のいい声だ。
あやも、まだ片付いていない自分の資料を整理し始める。
南條が部屋を出て行くとすぐにあやは、トイレでメイクを直した。
出勤ではあるが、引越し業務なので制服ではない。
白のパンツにスニーカーというラフな格好。
メイクもちょっと手抜きだ。
結婚してから、ONとOFFの落差が大きくなっている。
(だめだな、ちゃんとしないと…)
部屋中に積まれている段ボール箱。
それが少しずつ減っていく。
南條は、一人もくもくと段ボール箱を運び続けた。
「あのぉ、これ」
不意に声をかけられた。
あやが振り返ると、何条が缶の紅茶を差し出している。
「わたしに?」
「ええ。十時だし、ちょっと休憩」
まさか、お茶をもらうとは思ってもみなかった。
「ごめんなさい。わたしが準備しなけりゃいけないのに…」
「いえ、そんなことないです。僕が休みたいので、つきあってもらおうと思っただけですから…」
「他の方は?」
「今、一便で出ちゃったんですよ。向こうで休憩するって…」
「あら、あなたは置いてけぼり?」
「でかいものばかりで、三人行ってもしょうがないんで…」
プロにはプロのやり方があるということだ。
「これ、遠慮なくいただくわね」
「どうぞ」
「あっ、ここに座って…」
あやは、近くにあった椅子を差し出した。
「ありがとうございます」
たいしたことでもない会話に、ちょっとした緊張を伴う。
あやは、また胸がどきどきし始めた。
「南条さん、この仕事長いんですか?」
「えっ、いえ、バイトなんです」
「そうなの。学生さん?」
「はい」
「何年なの?」
「4年です」
「へぇ、じゃぁ、就職ね」
「そうなんですけど…」
「あら、まだなの?」
「はい」
「大変なの?」
「ですね」
会話が続かない。
話題を変えたいが、思い浮かばない。
「風間さん、今日お休みなのに一人で大変ですね」
「ううん。家にいてもすることないから…」
「バイト、いろいろやってるの?」
「ええ、まぁ、普段は、スポーツジムでインストラクターやってます」
「えっ、そうなの」
「体育会系なんですよ、僕」
「何やってるの?」
「ハンドボール」
「ハンドボール?」
「知らないですよね。マイナーだし…」
「ごめんなさい」
「フットサルって知ってます?」
「ええ」
「バスケットは知ってますよね」
「ええ」
「このくらいのボールをバスケットみたいに、ドリブルとかパスで運んで、フットサルのようなゴールに手で投げ入れるんですよ」
「ああ、知ってる。なんかすっごくジャンプしてやるんでしょ」
「そう、それです」
南條が嬉しそうに微笑んだ。
あやは、自分まで大学生の頃に戻ったような気分になった。
「さっ、また片付けちゃいますか?」
きっちり10分。
南條が立ち上がった。
「南條さん、お昼は?」
「お昼は仲間といっしょにどこかで食べます」
「そうなんだ」
「あのぉ」
「何?」
「僕、高志っていいます。南條高志」
「わたしは、あや」
「あっ、そうじゃなくて…。ふだんタカシって呼ばれてて、南条さんって呼ばれたことがないので、自分の名前なのになんかどきどきしちゃって…」
「あっ、そういうこと。ごめんなさい、わたしったら…」
あやは自分の早とちりに思わず頬が火照った。
「いいえ、僕がちゃんと言わないからで…ごめんなさい」
(ごめんなさい…)
こんなことば、子どものときに聞いたきりだ。
「ううん」
高志が椅子を元に戻し、あやもまた片づけを始めようと立ち上がった。
「あのぉ」
「なに?」
「あやさんって呼んでいいですか?」
「えっ…、ええ、どうぞ」
それだけ答えるのが精一杯。
あやはすぐに目の前のファイルを段ボール箱に詰め始めた。
顔が熱い。
真っ赤に違いない。
いい年をしてみっともない。
とても高志のほうを見られなかった。
高志は、きっと、自分の早とちりをフォローしてくれたんだろうと思ったが、ときめく心臓を止める方法がなかった。
人妻あやの失敗1-3
3.わたしの番号
分室での荷造りが終わると、午後は引っ越し先の本社での片付け。
運送屋は、統合されるもうひとつ別の分室での作業となった。
什器とその上に置かれた段ボール箱。
あやは、まず部署全体で使うものの整理にかかった。
詰めるより開けるほうが時間がかかる。
ただ、たとえ時間がかかっても、ひとりでやるほうがいい。
大勢でやると、後で必ず“あれはどこ?”という結果になる。
なんとか片付けたところで、時間はもう5時近かった。
一応は、休日出勤。
勝手に帰るわけにも行かない。
総務に電話連絡して、あやは作業を終えた。
突然ドアが開いて、バイトの高志が、小さな箱を持って入って来た。
「あら、どうしたの?」
「あっ、風間さん。すいません、一個、他に運ばれてて…」
呼び方が、風間さんに戻っていた。
「そうなの…、どうしてうちのだってわかるの?」
アルファベットは、どの部署の箱にも書いてあるはずだ。
「部署ごとに、運ぶときにマジックで色をつけたんです。ここのは赤」
高志は、小さな箱の横をあやに見せた。
確かに赤いマジックで少し線が入っている。
あやは、箱の上しか見ていなかったので気づかなかった。
「そうなんだ。しっかりしてるのね」
「僕じゃないです。会社です」
確かにそうだ。
高志は、小さな箱を入り口のカウンターの上に置いた。
そこは、あやが片付けた場所だ。
「あっ、もう片付けちゃったんですね。遅かったですね、すいません」
「いいのよ。また、明日やるから、置いといて」
「はい、じゃぁ、これで…」
「まだ、仕事なの?」
「いいえ、もう終わりました。これでおしまいです」
「わたしも帰るとこなの、いっしょに行きましょ」
あやは、高志と一緒にエレベーターに乗った。
玄関を出たが、運送屋のトラックはいない。
「車は?」
あやは高志に聞いた。
「車は帰りました」
「えっ、あなたは?また置いてけぼり?」
「バイトは、集合は会社ですけど、終わりは現地解散なんです。アルバイトは、社員さんに終了の報告をして、それでおしまい」
「そうなの?」
「僕、アパートが駅の向こう側なんです。交通費でないから、ここで解散のほうがありがたいんです」
「そうなんだ。なんか、厳しいのね」
あやは、高志と一緒に駅に向かった。
「そうだ。お茶のお礼しなきゃね」
「えっ、そんなのいいですよ」
「アパートって…、一人暮らしなんでしょ?」
「ええ」
「じゃぁ、どっかでご飯食べようか?おごるわ」
「缶ジュースとご飯じゃ割りがあわないですよ。いいんですか?」
「いいわよ。それより、あなた、ここに住んでるんでしょ?わたし、この辺詳しくないから、お店はあなたが選んで…」
「僕が…ですか?」
「あなた…」
「あのぉ、高志です」
高志が口を挟んだ。
「そうだったわね。たか…し、お酒は飲むの?」
名前を呼び捨てにするのは、勇気がいる。
「好きです。体育会系ですから」
「あっ、そうか。じゃぁ、あな…、たかしがよく行く居酒屋でもいいわ」
「そうですね…、じゃぁ、○○にしましょう」
高志が口にしたのは若い女性をターゲットにしたちょっとお洒落な居酒屋のチェーン店だった。
あやもよく行く店だ。
高志は、お酒のペースをあやに合わせて、その分、よくしゃべった。
あやは、話題を探す必要もなく、ただ相槌を打って、時に笑って、久しぶりに楽しかった。
「あやさん、結婚してるんですか?」
ビール2杯で、風間さんは、あやさんに変わった。
「ええ」
「そうか。そうですよね」
「何それ?」
「なんか、人当たりがいいって言うか、いい感じだから。そういう人は、ちゃんと結婚してますよね」
「どういうこと?」
「僕ね、どうも同年代や下の女の子ってのが苦手なんですよ」
「どうして?」
「これでも、何人かと付き合ったこともあるんですけど…、なんて言うか、なんかささいなことでつっかかってくるんですよ」
「ささいなこと?」
「“髪型変えたのに気づかない”とか、“メールの返信が遅いとか、心がこもってない”とか」
「そういうことね。わかるわよ、それ」
「そいうのって、性格ですかね?それともやっぱり、若いからってことですかね?」
「どうかしらね」
「あやさんも、“メールの返信が遅い”とかって言います?」
「誰に?」
「ご主人とか」
「とか?」
「お友達」
「ああ」
また、はやとちり。
まるで、浮気してますとでも言わんばかりだ。
「僕、10っこくらい上の女性があこがれなんですよ。シスコンとかマザコンとかじゃないですよ。同年代でも、落ち着いた感じの女性ならいいんですけど…。あやさんの知り合いで、誰かいませんか?なんて、就職も決まってない学生じゃ相手にしてもらえないですね」
「そんなに慌てなくても、10年たったら、同年代の女性も10っこ上の女性になってるわよ」
「するどい。ナイスなつっこみです」
「あやさん、明日も出勤ですか?」
「そう。片付けと掃除」
「午前中で終わるって聞いたんですけど」
「その予定ね」
「あやさん、うどんって好きですか?」
「ええ、大好きよ」
「僕、ちょっとうどんに凝ってて、自分で麺も打つんですけど、よかったら明日、お昼ご馳走させてもらえませんか?」
「自分で、麺を打つの?」
「はい。天ぷらも得意です」
「わたし、天ぷらは、えびとかじゃなくて、春菊とか玉ねぎがいいんだけど」
「合わします」
「ほんと?」
「はい」
「それは、ぜひ食べさせて…」
「いいんですか?」
「こっちこそ」
「やった。じゃぁ、僕の携帯の番号、教えます。仕事が終わったら電話ください」
高志が電話番号を教えるとすぐに、高志の携帯が鳴った。
「それが、わたしの番号」
あやは、高志の耳元でそっと呟いた。
人妻あやの失敗1-4
4.まぁ、いいか
翌日、片付けは、ほんの数時間で終わり、同僚にお昼を誘われたが、あやは断った。
“仕事、終わったら、メールください”
すでに高志からメールが入っていた。
待ち合わせは駅。
ただ、あやの会社とは反対側の改札口だ。
会社の同僚には見られたくない。
あやは、わざわざ駅から離れた場所で高架をくぐって駅の反対側に出て、そこから駅に向かった。
「あやさん」
突然後から声をかけられて振り向いた。
高志だ。
「びっくりした」
「ごめん」
「ううん。こっちなの?」
あやは、今歩いてきた方に向き直った。
「うん。こっち」
あやは、高志の少し後を遅れないように急いで歩いた。
歩き始めて5分。
マンションの建ち並んだ住宅街に出た。
「こっちは、住宅街なのね」
「どうかな?この辺だけですよ」
「そうなの」
「着きました」
ちょっとしゃれた3階建てのアパート。
外から誰でも自由に入れる階段で3階まで上がった。
「どうぞ…」
高志に案内されて、あやは、中に入った。
入ってすぐ横にドアが二つ並んでいる。
「こっちがバスでこっちがトイレ」
高志が説明した。
「別々なのね」
「お風呂は、やっぱり、ちゃんとつかりたいから…」
狭い廊下の先が、高志の部屋。
「きれいに片付いてるわね」
「まぁ…寝るだけですから…どうぞ」
高志は、あやにソファに座るようにすすめた。
「すぐ食事でいいですか?」
高志はキッチンに向いながら、あやに訊いた。
「あら、わたしも手伝うわ」
「だめですよ。お客さんなんだから、座っててください」
あやは、エアマットのようなソファに座らされた。
8畳くらいだろうか?
小さなキッチンと小さなカウンターのような調理台兼テーブル。
壁際に簡易なパイプベッド。
他には、ラックがひとつとその上にノート型のパソコンが一台。
テレビもゲーム機もオーディオ機器もない。
片付いているというより、ものがないというべきか。
ただ、調理台の上は、ボールだの何だのが所狭しと並んでいた。
「料理が得意なの?」
「うどんだけね」
勢いよく湯切りをしながら高志が答えた。
「で、どうしてうどんなの?」
「僕、香川なんですよ」
「そうなの」
「関東って、うどん屋さんがないでしょ」
「そう?」
「そば屋でうどんを食べますよね」
「そう言えば、そうかも」
「駅にあるのも立ち食いそばでしょ」
「えっ、うそ、香川は立ち食いうどんなの?」
「いなかで、そば屋なんていう看板見たことないですもん」
「じゃぁ、おそばは、どうするの?」
「うどん屋さんが作るけど、たぶんほとんど売れない」
「そうなんだ」
「さぁ、どうぞ。いなかじゃ、引越しも年越しもみんなうどんですから」
「これ、引越し祝いってこと?」
「あやさんの引越しじゃないですけど、ご近所さんになったわけだし…」
「おいしそう、じゃぁ、遠慮なく…」
美味しかった。
プロも顔負けの味だ。
「美味しい。すごいわ。自分で打ったの?本当?」
あやは、子どものようにはしゃいだ。
「ごちそうさま」
食べるのは高志のほうが圧倒的に早い。
「お茶出すね」
高志は、食器を重ね始めた。
「ああ、後はわたしがやるから…」
あやは、慌てて立ち上がって、自分の食器をシンクに運び、洗い始める。
「いいよ、洗わなくても、お茶にしようよ」
「すぐ終わるから、今度はあなたが座ってて」
「コーヒー入れようか?」
「じゃぁ、お願い」
食器を洗うあやの後で、高志はコーヒーを沸かし始める。
「ほんと、おいしかったわ。今度はお返しに、わたしが何か作るわね」
「だめだよ、そんなの」
「どうして」
「あやさんに何か作ってもらっても、俺、うどんしかつくれないから、お返しできないよ」
「そんなこと…」
「それより、今、お願いがあるんだけど」
「何?」
「二人でキッチンに立ってると、新婚の夫婦みたいじゃないですか?」
「何言ってるのよ、わたしもうおばさんよ」
不意に後からぎゅっと高志に抱きしめられた。
「5分間だけ、新婚夫婦になるっていうのは?」
高志の声が耳元で響く。
「うん、わかった。でも5分よ」
「ありがと」
あやは、このままぎゅっと抱きしめられるだけだと思っていた。
だが、高志は、あやの身体を自分のほうに向けようとする。
あやが振り返ると、ぎゅっと高志に抱きしめられた。
息が出来ないほど強く…
(ああ…こんなの…)
まるで二十歳の頃に戻ったかのようなときめきだった。
「僕、あやさんみたいな感じ、大好きです」
(えっ、告白?)
「そぅお…ありがとう」
高志の顔がすぐそこにある。
あやの胸が高鳴った。
高志は、右手をあやの腰に回し、左手を背中からあやの後頭部に伸ばしてあやの顔を上げさせると、唇を合わせた。
(うそ?)
キスされるとは思ってもいなかった。
(どうしよう?)
あやには、なんの心の準備も出来ていない。
(そうか、それで、新婚夫婦って言ったんだ)
高志は、新婚夫婦になると言った。
夫婦ならば、キスもありだ。
拒まなくてもいい。
(やだ…どきどきしてる…気づかれる)
キスに興奮するなんて…全く何年ぶりのことか。
容赦なく、高志の舌があやの中に入ってくる。
夫婦なら、これもありだ。
腰に回った高志の手があやのお尻にさがる
これは…?
今度は、高志の手が、ニットのワンピースの上からあやの乳房に乗せられた。
薄いピンクのハーフカップブラ。
下から乳房をもまれると、すぐに乳首がカップから飛び出した。
その乳首を高志がワンピースの生地の上からつかむ。
これはだめだ。
「だめ、高志さん、はぁ…」
拒絶はしたが、抵抗はできない。
自分のあえぐ息があやは恥かしかった。
(やだ…わたし…)
高志の唇が、首筋へと移動する。
「お願い、高志、だめよ、やめて…」
「後3分」
(3分…3分だもの、まぁいいか)
あやは、体の力を抜き、すべてを高志にゆだねた。
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