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沙希の悪戯1-1
Sex Junkie
沙希の悪戯
学生の頃、アパートから駅までの途中、狭い路地だったが、レンガ道があった。
少し坂になったこの道が、駅に向う広い通りにぶつかるその角に小さなコーヒーショップがあって、俺は、毎朝、モーニングを注文した。
学生の頃、俺、夕方から夜遅くまでバイトしていた。
大柄だった俺には、ここのモーニングは少なすぎる。
誰が見てもそう感じただろう。
もちろん、俺が一番それを感じていたのだが…。
毎朝、俺がここに顔を出していたら、ある日、マスターが黙って2杯目のコーヒーを注いでくれた。
礼を言うと、スペシャルモーニングがあると言う。
そんなものメニューには載っていない。
いくらかと聞くと、マスターは通常のモーニングの料金より30円だけ高い金額を言った。
それじゃぁと注文すると、パンとゆで卵が2個になって、トマトがついた。
ハムエッグにロールパン2個、ゆで卵2個とトマトが1個、トマトが桃缶になることもあったが…。
大学を出て、アパートも引っ越した俺は、もうその店に顔を出すことはなかったが、何年かして、そこを通りかかったとき、レンガ道は拡張され、アスファルトで舗装されてしまっていた。
コーヒーショップのあった場所は、ファンシーな小物を扱う店になっていた。
その後、俺は何度か引っ越した。
結婚したとき、仕事を辞めたとき、そして離婚したとき。
俺も彼女も再婚はしていない。
息子と娘がいる。
年に何回か子どもに会う。
去年、子ども達を送っていったとき、駅から公園脇を抜けるレンガ道にコーヒーショップがあった。
なぜか懐かしく、店に入った。
俺はもちろんすぐにわかった。
あれから20年以上経っているのに、驚いたことに、マスターも俺を知っていた。
いや、マスターのほうが先に俺の名前を呼んだのだ。
俺の家から車で30分、決して近くはないが、俺は、また、この店に顔を出すようになった。
俺の名は中島優作。
世間では大手といわれている某商社の一員だ。
第1章
1.始末屋
「課長、どういうことですか?」
優作は、課長の真鍋に詰め寄った。
「何が?」
「何が?じゃないですよ。なんでケーキ屋の支援に入らなきゃならないんです?」
「末端が元気になって売ってくれないとどうしようもないだろ?」
「そりゃそうですが、そこは、うちの末端じゃないでしょ」
「中島、ちょっと会議室に行こうか?」
真鍋は、引き出しから煙草を取り出して、席を立った。
大企業というところは、ときどきわけのわからない仕事が舞い降りてくる。
中嶋優作、31歳。
大手商社に勤めて、8年。
同い年の妻と7歳と4歳の娘がいる。
この若さでは異例の課長代理という肩書きがついているが、花形コースからは大きくそれている。
肩書きは、その代償みたいなものだ。
会議室という名の喫煙所。
真鍋と優作はそれぞれ、自販機のコーヒーを持って、テーブルを挟んで向かいあった。
「本部長から名指しだ」
真鍋はいきなり切り出した。
「名指し?うそでしょ」
「本当だ」
「なんで、俺のこと知ってるんですか?」
「この前の件は、ぜんぶ報告してある」
「ちょっと待ってくださいよ。あれは、課長が受けたことでしょ」
「俺は、部下の手柄を横取りしたりはしない」
(はぁ?)
優作は、今にも口から飛び出しそうな言葉をコーヒーと共に喉に押し込んだ。
大手商社が、直接、街のケーキ屋さんと取引することなどない。
当然、優作が支援を依頼されたケーキ屋とも直接取引はない。
間には、一社、別の会社が入っている。
末端の販売店を開拓するのも、それを支援するのも、本来はこの会社、バイヤーの仕事だ。
優作の部署は、この間に入ったバイヤーを支援するところであって、末端の販売店の支援はしない。
そんなことをしていたら、人件費で倒れてしまう。
それは、会社としての方針なのだが、その方針を平気で覆してくる。
なぜか?
問題は単純だ。
ここの経営者が、本部長の愛人。
ただそれだけのことだ。
半年前、経営の思わしくない居酒屋を支援した。
課長の真鍋への依頼であったにもかかわらず、その仕事が優作に振られた。
たまたま娘が入院して、2週間、有給休暇をとった代償だ。
4店舗あった店のうち、3店舗を取引関係にある大手居酒屋チェーンに売却。
負債は、仕入れ操作で帳消しにしてやった。
あくまで、課長、真鍋の代行のはずだったのだが…。
真鍋にはめられた。
真鍋としては本部長からの依頼は断れない。
しかし、直属の上司である部長と本部長は派閥が異なる。
それもあって、部長の頭越しで依頼が来ているのだ。
しかも、今は、部長の属する派閥が主流になりつつある。
“はいはい”と調子よく引き受けるわけにもいかない。
頭越しの危険な依頼は、部下にスルーする。
大企業で、上から下へと受け継がれてきた処世術のひとつだ。
大きな取引の影には、小さな不正が山のように存在する。
(しょうがない。また、始末つけてくるか…)
「課長」
「ん?」
「俺、ケーキなんか食ったこともないですよ」
「クリスマスにもか?」
「入社以来、クリスマスはいつも仕事でしたから…」
「そうか、ちょうどいいじゃないか、今回は、仕事はこれだけだ。のんびりやって、たまには家族サービスもしてやれ」
“家に帰っても居場所がない”
酒を飲めば、必ず愚痴になる男からの貴重なアドバイス。
優作は、真鍋が会議室を出てから、煙草を2本吸ってから席に戻った。
沙希の悪戯1-2
2.夏目沙希
「で、どうだった?」
沙希は、物憂そうに愛美に訊いた。
「…がさ、あいつ、初めてだったのよ、たぶん」
「うそ?まじ?」
「本人はそうは言わないけど、ありゃ、どうみても初めてよ」
「5秒でいっちゃったとか?」
「そこまでじゃないけど…、キスとかは、まぁ普通だったんだけど、舐めてあげたわけよ」
「愛美から?」
「まぁ、なんていうか、そんな流れだったから…、そしたら、急に、なんかそわそわし始めて…」
「まさか、そこでいっちゃったとか?」
「そんな感じ、二、三回、じゅぼじゅぼってしてやったら、なんか慌てだして、あそこに指入れるわ、それをぐりぐり動かすわ。こっちは、まだだから、痛くて…」
「で、どうしたの?」
「痛いって言ったら、急に弱気になっちゃって、ちっちゃくなってくのよ」
「坊やじゃん」
「そっ、それ。あいつ、もっとあせっちゃって…。昨日、寝てないからとかって言い訳始めて…。わたしおかしくて…」
「まさか、笑った?」
「まさか。そこはぐっとこらえて、もう一回、優しく口にいれてあげたの」
「お姉さんじゃん」
「でしょ。そしたら、まぁ、すぐにまた大きくなったんだけど、そこであえなくフィニッシュ」
「口の中?」
「そう、ひどくない?何も言わずに急にどびゅっだよ」
「完全にお姉さんになっちゃったね」
「そうなのよ。しょうがないから、飲んでやって、もう一回舐めて」
「戻った?」
「早い、早い。しぼむ前にまたぐんと伸びて…」
「やったの?」
「ん、でも、怖いから、最初からゴムつけさせて…、それでも五、六分かな」
「早っ」
「もう、童貞なら童貞らしく、もっとしおらしくしてろってのよ」
「よね。男子って、たいがい見栄はるわよね」
「すぐばれるのにね」
「で、これからどうするの、彼?」
「ん?続けるわ」
「いいの?きっと言いふらしてるわよ。“俺、昨日、愛美とやったんだけどよ…”なんて…」
「言いふらしてるね、きっと」
「えらそうに、あることないこといっぱいくっつけて…今頃、“愛美なんかよぉ…”とかって語ってるよ、きっと…」
「たぶんね。でもさ、それって墓穴よね。だって、わたしが本当のこと言ったら、立場ないじゃん」
「それって、超、恥ずかしくない?」
「恥、恥。…ってことは、もしかしたら、あいつ、わたしの言いなりじゃん?」
「うふ、愛美屋、お主も悪党よなぁ」
「いえいえ、おでぇーかん様あっての愛美屋でございます」
「ははは」
ふたりして顔を見合わせて笑った。
「悪い、愛美、わたしちょっと買い物してくから、先に帰って…」
「わかった。沙希、明日、英語、追試だからね」
愛美に念を押された。
「わかってる。もう、あのばばぁ、なにかってとテストテストって…」
「48歳、独身。あー、やだやだ」
二人とも定期考査の成績が悪く、明日、追試が課せられていた。
「じゃぁね」
交差点を右に曲がった沙希の歩く速度が急に遅くなった。
別に買い物などない。
(あーあ…)
沙希は、ため息をついた。
今の会話は、沙希には少し辛かった。
夏目沙希。
中レベルの公立高校に通う女子高生。
愛美とは、中学からのつきあいだ。
早熟だった沙希は、仲間の中では誰よりもいろんな体験が早かった。
誰よりも早くキスもした。
フェラもした。
でも、まだバージンだ。
中2のとき、直前まではいった。
つきあっていた同級生の男の子が急に転校することになって、引っ越す前の日に彼と会った。
沙希も彼もそのつもりだったのだが、二人とも初めて…。
結局、うまくいかなかった。
(あのとき、“できなかった”って言えばよかった…)
何度も繰り返す後悔。
周りは、沙希に“体験済”の印を押したが、沙希はそれを否定しなかった。
“した”とは言わなかったが、“してない”とも言わなかった。
その後、何人かとつきあった。
バイト先で知り合った大学生。
友達には、求められる話題を提供したが、全部嘘だ。
そんな関係にはならなかった。
(あんな嘘、つかなければよかった)
これまた、何度も繰り返す後悔。
沙希には、密かに思っている男子がいる。
同じクラスの松下拓也。
ただ、今さら、同じ学校の男子とはつきあえない。
自分がバージンだと言うことがばれる。
ついさっき、沙希は、愛美の彼を笑ったが、笑える立場ではなかった。
「ケーキでも買って帰ろう」
沙希は、バイト先のケーキ屋に向かった。
沙希の悪戯1-3
3.元見習い
「ごめんなさい。お待たせして…、今日はなんだかばたばたして忙しくて…」
優作は、立って、入ってきた女を出迎えた。
女は、武宮静流(しずる)、43歳。
はやらないケーキ屋のオーナーであり、本部長の愛人だ。
たるんだ頬と二重あごはメイクでごまかし、ゆるんだ体は、補正下着という鎧でごまかしているが、漂ってくる品のなさはごまかせない。
店がはやらない理由はいくつかある。
細かく挙げれば、数限りなくある。
ただ、どれもこれもその元をたどっていくと行き着く先はたいていひとつだ。
すべての問題点の行き着く先、それは今、優作の目の前に座った。
“お待たせしました”
同じ言葉を発しても、“待たせて申し訳ない”という気持ちが伝わってくる人と、逆に、高飛車な態度が鼻につくやつがいる。
実際、優作はかなり待たされた。
まぁ、まだ20代の若造だから、待たされることは少なくはない。
そして、静流の言い方は、後者だ。
静流はその名前とはうらはらに、ハイトーンでしゃべり続ける。
話の大半は、店長、久保陽一に対する愚痴だ。
優作は、静流に気づかれないように壁の時計を見た。
かれこれ40分。
この女は、一日の大半を、こうやって愚痴を言って過ごしているのだろう。
さぞや“多忙な日々”を送っているに違いない。
「そろそろ、お店のほうに伺いたいのですが…」
優作は、やっとのことで話の切れ目を見つけ出し、言葉を挟んだ。
「そう?じゃぁ、お願いするわね。誰かに送らせましょうか?」
「いえ、歩いていけますから」
「ごめんなさいね。わたしがもっと見られればいいんだけど、忙しくて…」
(“もっと見られれば…”、もっと見てれば、とっくに潰れてただろうよ)
問題のケーキ屋は、静流のオフィスから徒歩で6分の場所にある。
店には近くに駐車場がなく、借りている駐車場は、静流のオフィスとは逆方向に徒歩5分。
従って、車で行くより歩いたほうが早い。
歩いてもたかだか往復で12分。
30分、時間があれば、“ちょっと顔を出す”程度はできる。
愚痴を40分も話す時間はあるが、店に顔を出す時間はないというわけだ。
「はじめまして、店長の久保です」
店長の久保陽一は、優作に深々と頭を下げた。
30代半ばだろうか、優作が想像していたよりはるかに若い。
どこかおどおどして落ち着きがないという印象。
接客にはまるで向いてない。
店長というよりはケーキ職人と言うべきか?
優作は、あいさつもほどほどに、店内を見て回った。
と言っても、回るほど広くもない。
「あのぅ、ちょっと訊いていいですか?」
年下である優作は、ことさらに気をつかった訊き方をする。
「あぁ、はい、何でもどうぞ」
「ケーキは、ここで焼いてるんですか?」
器具はあるが、使われている形跡がない。
「いえ、前は、ここで焼いてたんですが、今は…」
「今は…、どうされてるんですか?」
「系列にパン屋さんがあって、そこで作ってます」
(系列?)
確か、静流の実家がパン屋だ。
「オーナーのご実家?」
「ええ、はい、そうです。よくご存知で…」
(ばかか、お前?俺は、オーナーに呼ばれて来てるんだ)
「なんでやめちゃったんですか?」
「前の店長が、やめちゃったので…」
「やめられた方が、職人さんだったってことですか?」
「はい」
「で、久保さんは、以前からずっとここに?」
「はい、見習いだったんですけど、うまくできなくて…」
(ケーキを焼けない元見習い職人が店長?)
優作は、久保との話を打ち切り、店のほうに回った。
店内は、掃除は行き届いてきれいだ。
これだけは申し分ない。
たぶん、静流に厳しく言われているのだろう。
(こんなことしかチェックできないんだろうな…)
静流に頭ごなしに叱られる久保の姿が目に浮かんだ。
優作が振り返ると、その久保が申し訳なさそうな顔をして黙って立っていた。
「あっ、いえ、わたしは、あら捜しに来てるわけじゃありませんし、いろいろ逐一オーナーに報告するわけでもありません。気を遣わないで仕事に戻ってください。すいません、お手間を取らせて…」
「あっ、はい。では…」
久保は、奥に戻っていった。
そこに戻っても何もすることがないだろうに…。
(こいつ何なんだ?)
店には、20代前半のバイトの女性がいる。
ここでケーキを作ってないなら、販売員がいればそれでいい。
久保は、どう見てもショップ店員には向かない。
(バイトに聞いてみるか…)
ただ、バイトの娘に店や店長のことを店内で訊いてもなかなか本音は聞きだせない。
優作が、店番の娘に話しかけようとしたとき、客が来た。
高校生だ。
「こんにちは」
「あら、沙希ちゃん。今日、“出”だっけ?」
「ううん、今日はお客」
「そう」
どうやら、沙希ちゃんと呼ばれた彼女もここのバイトらしい。
(こっちに訊くか…)
優作は、沙希の方に歩み寄った。
沙希の悪戯1-4
4.カップル割引
「ミルフィーユとチョコケーキと…ええい、カマンベールチーズケーキも」
「何なの?やけ食い?」
「そういうわけじゃないんだけどね」
「ごめん、君もここのバイト?」
突然、男に話しかけられた。
「ああ、ごめん。俺、中島って言います。今度、ここのオーナーがね、何かイベントをやりたいって言うんで呼ばれたんだけど…。店長とは今、話して…、後はバイトのみなさんとも順々に話したいんだけど、彼女は今勤務中だし、君もバイトなら、君と先に話そうかと思って…」
一応、表向きにはそういう話しになっている。
「はぁ、まぁ、週2回だけですけど…」
沙希は、沙希の注文したケーキを箱に入れている同僚のバイトの美穂の顔をうかがった。
美穂が、黙って首を縦に振る。
どうやら、嘘ではないらしい。
「840円になります」
沙希がケーキの代金を払おうとしたら、その男が割り込んだ。
「あっ、それいい。俺が払う」
沙希の脇から優作の手が伸び、レジカウンターに1000円札が置かれた。
「えっ?」
「10分くらい、話せない?」
代金を払われてしまっては断りにくい。
「はぁ」
あいまいな返事だが、ノーではない。
「じゃ、そこでなにかおごるよ」
優作は沙希の肩を押すようにして店を出た。
隣は、大手チェーンのコーヒーショップ。
「突然、声をかけて驚かしちゃったね、ごめんね」
優作は、自分にコーヒー、沙希にミルクティーを渡して、通りに向いたカウンターに並んで座った。
「実は、ちょっと店じゃ聞きにくいことだったんで…、無理に外に誘ったんだ。ごめんね」
優作は前置きした。
「店長に初めて会ったんだけど、あの人、普段何してんの?」
「店長ですか?」
沙希の顔が曇った。
「いや、言っちゃ悪いけど、ちっちゃなお店のイベントだろ。店長もバイトの娘もいるのに、なんで俺に?って思ったわけ。で、今日、初めて店長に会って…、これも言っちゃ悪いけど、なんか頼りない人で…。でも、初対面だし、変に第一印象だけで判断しちゃまずいから、訊こうと思って。店じゃ店長いるし、訊けないだろ」
「店長…、見たまんまじゃないですか」
「あのまんま?」
「たぶん」
「実は、ばりばり仕事をするとかって?」
沙希は首を振った。
「ケーキ焼く練習はしてるの?」
「たまーにしてるみたいです。わたしは見たことないけど、美穂ちゃんはなんどか見たみたいです」
「はっきり言って、頼りになる?」
沙希は首を振った。
「だめか…」
優作は、わざと落胆したふりをした。
「バイトって何人いるの?」
「美穂ちゃんとわたしと古賀さんと大西さん…4人。でも、通しで入ってるのは美穂ちゃんだけ。お店のことは美穂ちゃんが一番詳しいから、美穂ちゃんに聞いてください」
「そう、店長が頼りにならないとしたら、頼れるのはバイトのみんなだけだからね」
「美穂ちゃんはしっかりしてますよ」
「ありがと」
「あのさ、例えばなんだけど、カップルで来て、男が女の子にケーキを買ってあげるときは5%引きで、しかも抽選で3千円が当たるとかってどう?」
単なる思いつきだ。
「はぁ」
沙希の食いつきは悪い。
「彼氏いる?」
沙希は首を振った。
「例えば、まず。明日、だれそれの誕生日でケーキプレゼントしたいのとかって言って、男を誘うわけだ。もちろんケーキ代は先に男に渡しておくんだけど…。男に払わせれば、ケーキが5%オフで買えるし、しかも抽選で当たれば3千円だ。で、ありがとう、今度いついつがわたしの誕生日だからそのときもよろしくとかって…。自分の誕生日をアピールしておけば、脈があれば、誕生日のケーキは彼からのプレゼントになるかもしれない」
思いつきをちょっと広げてみた。
「もう少し、安くなりませんか?10%とか…」
意外にも沙希が乗ってきた。
(誰か、いるってことか…)
「どうかな?調べてみるよ」
「そうだ。カップル割引っていうカードを作るから、沙希ちゃん…沙希ちゃん、苗字は?」
「夏目ですけど、沙希でいいです」
「じゃぁ、沙希ちゃん、そのカードを友達に配ってくれないか?」
「配る…ん、ですか?」
「ああ、でね、そのときに、さっき俺が言ったように誰でもいいから男を連れて行けば、安く買えるよって言いふらせ」
「はぁ…」
沙希には優作の言うことがピンと来ない。
「そうやって言いふらしておけば、自分が男を誘うときに誘いやすいだろ」
「ああ」
沙希がにこっと微笑んだ。
「じゃぁ、これやってみようか。オーナーに話してみるよ」
「あのぉ」
沙希が話しかけた。
「何?」
「店長、オーナーと…」
「えっ?」
「見たわけじゃないですけど…」
話しにくそうな沙希の言葉の後を引き取った。
「できてるってこと?」
沙希がうなずく。
「みんな、そう言ってます」
「そういうことか。それより、沙希ちゃん、好きな男がいるんだろ」
沙希がうつむいた。
「だいじょうぶ、めっちゃかわいいし…」
「えぇーっ」
冗談のつもりだったがオーバーに驚く顔が意外にかわいい。
「ごちそうさまでした」
「こっちこそ、時間とらせて、ありがとう」
優作は歩いていく沙希の後姿をしばらく見送った。
短いスカートから伸びる白い太ももがなまめかしかった。
沙希の悪戯1-5
5.巨根
「陽一、今日の彼、どんなこと言ってた?」
静流は、バスルームから出てきた店長の久保陽一に訊いた。
今日の彼とは、優作のことだ。
「どんな…って、ふつうに…、売上は?とか、客筋は?とか」
陽一の返事は相変わらず、頼りない。
「もう、あなたのお店は赤字なの。わかってる?あんた、もっとしっかりしてよ」
「はい。すいません」
陽一の住むワンルームマンションは、静流のマンションとは通りをひとつ隔てただけの場所だ。
静流は、そのワンルームマンションの3部屋のオーナーでもある。
ひとつに陽一を住まわせ、ひとつは貸し、もうひとつを自分で使っている。
自分のマンションにはいつ男がやってくるかわからない。
静流にとって、この狭い空間だけが素の自分に戻れる唯一の場所だった。
「こっちに来て」
静流は、陽一を自分の前に立たせた。
気が利かず、常にどこかおどおどしてて、口数も少ない。
誰が見ても“おたく”な男だが、静流の目の前で垂れ下がった肉の棒は持ち主とは似ても似つかない立派なものだ。
静流は、陽一のそれを口に含んだ。
まだ、ふにゃふにゃの状態のそれを、口に含み舌先でこする。
わずかな刺激でそれは一気に圧倒的な体積を取り戻していき、静流の口いっぱいに広がっていく。
静流が口に入れられるのは、先端のほんのわずかな部分だけ。
この圧迫感がたまらなかった。
静流は、前の店長とも関係していた。
彼は自分の店を持ちたいという野心家で、静流には、彼のほうから近づいてきた。
静流は、男に利用されるのが嫌いだ。
“お前の代わりなんかいくらでもいる”
そのために陽一を雇った。
ただ、あまりに陽一はお粗末過ぎた。
陽一は、毎日のように、店長に虐められた。
時には、静流もいっしょになって、陽一をののしった。
人を見下し、ののしるのは一種、快感でもある。
これまで女を武器にしてきた静流が、初めて感じた快感。
男を服従させる快感。
しかも、その男は、今までに見たこともないほどの巨大なものを持っていた。
「舐めて」
静流は、座ったまま、スカートをたくし上げて足を広げた。
帰ってきて、着替えてもいない。
ただ、パンストとショーツを脱いだだけだ。
服を着たままが好きだ。
“男”の前では逆だ。
男の前で脱ぎ、裸を見せる。
男のズボンを脱がせ、ひざまづいてその男のものを口にする。
そのまま口で終わることもある。
でも、今は主人は自分だ。
静流は、自分の前でひざまづき、股間に舌を這わせる陽一の顔を太ももで挟みつけた。
(あああぁぁぁ)
条件反射とでも言うべきか、おしっこがしたくなる。
バスルームだったら、このままおしっこを陽一の顔にかけるのだが…。
静流は、尿意を押さえ、陽一の頭を抱え込んで、静流は、陽一の顔に自分の股間をこすりつける。
これも静流の好きな行為だ。
「あああぁぁぁ。入れて」
静流は、180度向きを変えて、ソファを抱きかかえるようにしてお尻を陽一のほうに突き出した。
大きなお尻だ。
少し下に肉が流れるのは歳のせい。
陽一は、たるんだ肉を掻き分けて静流の中に極太のものを挿入する。
いっきに全部は入らない。
半分まで入れたところで様子を見る。
「うっ…」
静流が一瞬、息を止める。
「いいわ、もっと奥に…」
陽一がゆっくりと前に進む。
「ああぁぁ」
静流がのけぞる。
「ああああ」
後2cm
陽一が止る。
この2cmが微妙だ。
入らないときもある。
「だいじょうぶよ、入れて、入れて」
静流の許しが出た。
陽一は、最後の2cmをつんと突き入れた。
「あああぁぁ」
膣内いっぱいを押し広げられた圧迫感。
男の下腹部の肉をお尻で感じる充実感。
静流は、いっきに深みに達した。
「突いて、突いて…」
陽一の下腹部が静流のお尻に当たる。
「ああ…、あぁぁ、あぁぁぁ」
意外にも陽一は、早くない。
「あああぁぁぁぁ」
何度目かの波が押し寄せてきて、静流はがくっと膝を折って陽一のものがはずれた。
「いって、陽一」
勝手な言い草だが、陽一はそれに従う。
座り込んだ静流の目の前で、自分のものを手でしごく。
出す場所は静流が決める。
静流が口を開いた。
陽一は、そこに流し込む。
陽一のものをすべて搾り取るように静流が吸い尽くす。
静流は、陽一のものを口いっぱいに溜めると、立ち上がって、陽一をソファに座らせる。
陽一の口に静流の口がかぶさり、陽一のものは静流の唾液とともに陽一に返された。