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樹奈の憂鬱1-1
第1章
1.煮え切らない
「まだ、起きてるの?」
樹奈は、12時を回ってもまだテレビを見ている夫の邦彦に目をやった。
「ああ」
そっけない返事だ。
「わたし先に寝るわね」
樹奈は、邦彦にそう告げると、寝室に向った。
結婚して1年と2ヶ月。
ここ数ヶ月、邦彦は、樹奈を求めなくなった。
新婚の頃は、平日の朝ですら、会社に行く前に樹奈を求めてきたのに、それがいつのまにかだんだんと離れていって、もう2ヶ月近くセックスはなかった。
普通に会話はある。
別に怒っているようには見えないのだが、とにかくセックスはない。
それも無理にしないという感じだ。
今夜だって、別にテレビを見ているという感じではない。
邦彦は、何度も何度もチャンネルを変えている。
番組がつまらない証拠だ。
(あーあ、まったく・・・何が気に入らないの・・・はっきり言えばいいのに・・・)
以前から、邦彦にはそういうところがあった。
何を考えているのかわからない。
自分ひとりで抱えて、樹奈には何も話さない。
最初は、また始まったくらいに思っていたのだが、2ヶ月は長すぎる。
樹奈の我慢にも限界があった。
樹奈がベッドに入って20分位して、邦彦がやってきた。
「ねぇ、何か気に入らないことがあるの?」
樹奈は、邦彦に背を向けたまま、話しかけた。
「起きてたのか?」
「ええ」
「別に・・・・何もないよ」
「そんなわけないでしょ。わたしはずっとほったらかしよ」
「そうだな・・・悪かったよ」
謝って欲しいわけではない。
理由を知りたいのだ。
「何なの?わたしが気に入らないの?」
「いや・・・そうじゃない」
いつもこうだ。
どうしてはっきり言わないのかと思う。
「そうじゃないんなら、何?はっきり教えてよ」
「別になんでもないんだ・・・・ごめん、俺、向こうで寝るよ」
邦彦は、枕を持って、居間に戻って行く。
(何なの・・・・。何なのよいったい・・・・・)
次の日の朝、寝付かれなかった樹奈は、寝過ごした。
起きたときには、もう邦彦は会社に行っていた。
ひとりで起き、ひとりで朝食を作り、ひとりで会社に行く。
樹奈が寝過ごしても邦彦は樹奈を起こしたことがない。
愛されていると思っていた。
優しい人なんだと思っていた。
でも、違ってた。
(わたしなんか、いなくてもいいんだ・・・・きっと・・・・)
辛いというより、ばかばかしかった。
(あーあ、めんどくさいなぁ・・・ほんとに・・・・)
樹奈はシャワーを浴びて、そのまま裸で床に寝転がった。
携帯にメールが入った。
迷惑メールだ。
毎日毎日、山のように送られてくるくだらないメール。
ほったらかしてあったゴミメールを全て削除した。
246件
(瑞樹さんかぁ・・・・)
ゴミメールを削除したら、瑞樹からのメールが目に入った。
竹内瑞樹。
元の会社の上司だった竹内部長の奥さんだ。
邦彦と結婚する前、樹奈は、竹内と不倫していた。
ただ、それは竹内の妻、瑞樹も知っていたので不倫とは言えないのかもしれない。
樹奈は、ふと瑞樹に会いたくなった。
いや、会いたくなったのは、瑞樹ではなかったのかもしれない。
樹奈の憂鬱1-2
人妻☆じゅなの秘密日記
2.噂
邦彦が、ふと人の気配を感じて顔を上げると増井美香が、邦彦のデスクから1mくらい離れて立っていた。
「どうした?」
「すいません、今、いいですか?」
「ああ、いいけど・・・・ずっとそこにいたのか?」
「はっ・・・はい。・・・いえ・・・少しです」
「なんで・・・、声をかければいいのに・・・」
「すいません。でも、なんか・・・主任、怖くて・・・」
(怖い?・・・・)
美香は、新卒で入社4ヶ月めの新人だが、邦彦は、怖いといわれたのは初めてだった。
押しの弱い性格で、部下を叱ったこともない。
「怖い?・・・・俺が?」
「ああぁ、すいません。違うんです」
美香が、慌てて言い直す。
「すごい真剣な顔で・・・なんか、声をかけにくくて・・・すいません」
「そうだったの?・・・・気にしなくていいのに。別に怒ったりしないから・・・」
「は、はい」
「で、何?」
「はい。データ集計終わって、分析結果を出したんですけど、見ていただけないですか?」
美香は、手にフロッピーディスクを持っている。
「それで、持ってきたの?」
今時、フロッピーディスクでデータを持ってくる子も珍しい。
美香がフロッピーディスクを差し出した。
「わかった、見ておくよ」
邦彦のパソコンにはフロッピーディスクドライブがない。
「増井」
邦彦は、ふと思いついて、自分の席に戻ろうとした増井を呼び止めた。
「はい」
「ちょっと、ここに座って」
邦彦は空いている隣の席に美香を座らせた。
その席には、過去の遺物のような古いパソコンがどんと乗っかっている。
邦彦は、それを起動させ、美香の持ってきたフロッピーディスクを差し込んだ。
「増井のアドレスを入力して・・・」
美香は、言われたとおりにする。
「あのさ、データは、社内のメールで俺のアドレスに送ってくれればいいから・・・」
そう言って、美香にデータを送信させた。
「すいません。でも、なんか、失礼なような気がして・・・」
(失礼?・・・・・)
確かに、データの確認を上司にお願いするのに、メールで送りつけるのは失礼かもしれなかった。
「構わないよ。俺なら・・・・」
「すいません・・・失礼します」
美香は頭を下げて、自分のデスクに戻った。
(怖い・・・・のか?俺が・・・・・)
美香に言われて、初めて邦彦は、そういう思いでオフィスに眼をやった。
邦彦の部署では、主に広告宣伝に関する効果測定をやっている。
邦彦は、11名の部下を持つ主任だが、直の上司は企画部の部長で、間の管理者がいない。
彼は、企画会議に出席し、プレゼンの出来る最年少社員だった。
邦彦がこなす仕事の量は、はんぱではない。
分、秒刻みで、資料を整理し、分析結果を出し、企画書を書き上げていく。
(そう言えば・・・・・)
この部屋は、女性が多いせいか、けっこうにぎやかなのだが、邦彦は、仕事中に、今までそうしたノイズが気になったことがない。
自分では、集中しているので、雑音が気にならないのだと思っていた。
実際、あることに集中していて、近くで呼びかけられても聞こえなかったことが今までに何度かあったからだが、どうやらそれは、思い違いだったかもしれない。
静かなのだ。
(俺の邪魔をしないように・・・・誰もしゃべってなかったのか・・・・)
美香の言うように怖がられているのかもしれないと感じた。
部下たちは、皆、邦彦の様子を見ながら、神経をぴりぴりさせていたのかもしれない。
「朝日通信に行ってくる」
邦彦は、そう告げて席を立った。
邦彦が廊下に出てドアを閉めると・・・・思ったとおり、数人の声が聞こえた。
“よかったぁ、いなくなって・・・”
“ほんと、息が詰まるわ”
おそらくは、そういう会話に違いない。
いやな気分だ。
邦彦は、同じ建物にある子会社の朝日通信に向井幸三を訪ねた。
彼女は、新しく朝日通信に入ってきたインターネット関連の広告ディレクターだが、専務か誰かのコネで入ってきたという噂で、仕事のほうは可もなく不可もなくというところだ。
2ヶ月前、邦彦は、向井と仕事をした。
そのとき、邦彦は、ふとした会話で、向井がここに来る前に、邦彦の妻、樹奈のいた会社にいたことを知った。
「ああ、うちの奥さんと同じ会社ですね」
「そうなんですか?奥さん、なんて人?」
「樹奈・・・、桜井樹奈」
「桜井・・・・・・」
向井は、あきらかに戸惑った表情を浮かべた。
「知ってる?」
「えっ・・・ああ、まぁ・・・挨拶程度だけど・・・・」
その時は、これだけの会話だった。
“水沢主任の奥さんが、元の会社の上司と不倫している”
そういう噂が流れ始めたのは、それからすぐのことだった。
樹奈の憂鬱1-3
人妻☆じゅなの秘密日記
3.不倫相手
「ああ、水沢さん。ちょっと・・・」
用を終え、出て行こうとする水沢を向井が呼び止め、今出てきたばかりの打ち合わせ室にもう一度、邦彦を押し戻した。
「何でしょう?」
邦彦は、噂の出所が向井だと思っている。
不快な感情が顔に出た。
「そんな、怖い顔しないでくださいよ」
「忙しいんです。どんな用件ですか?」
座ろうともしない邦彦に一度座った向井も慌てて立ち上がった。
「奥さんのことなんですけど・・・・」
「妻が何か?」
「たぶん、疑われてると思うので、はっきり言いますけど、奥さんの噂を流してるのはわたしじゃありませんから・・・・」
ありませんと本人に言われて、そうですかとそれを真に受ける者は、そうはいない。
「本当にわたしじゃないですから。第一、うちは子会社ですけど、水沢さんはクライアントだし、そんな噂流したら、自分の首を締めるようなもんですし・・・」
もっともらしいいい訳だが、うっかり口を滑らせて、噂が広まったものだから、慌ててとりなしに来たと言えなくもない。
「それが用件ですか?忙しいと言ったはずですけど・・・」
妻の噂を耳にしてから、邦彦は、妻をじっと観察するようになった。
いつも通りになにげないふりをしながら、樹奈が、一日何をしていたのか、どこへ行ったのか探った。
樹奈が眠ったのを確認して、樹奈の持ち物も、携帯もチェックした。
そして見つけた。
浮気の証拠ではない。
それは、CDに収められた、樹奈の写真。
ほとんどが裸だった。
それはCDケースの中に、他の音楽CDといっしょに入っていた。
邦彦は、その画像を全て自分のパソコンに落とした。
いつ、誰がそれを撮ったのかはわからない。
それを訊くことも出来ない。
邦彦は、妻の真実を知りたい気持ちでいっぱいだったが、目の前の向井にそれを訊くのはためらわれた。
もし、この男が噂を流しているとしたら、そんな男に妻のことなど訊けない。
訊けば、それも噂になってしまう。
邦彦は、噂も向井も無視していたのだ。
「はぁ・・・。すいません。お忙しいのに呼び止めて・・・・」
向井は、邦彦の傲慢な言い方に少しむっとした表情だったが、一応非礼を詫びた。
「それだけなら、わたしはこれで・・・・」
出て行こうとする邦彦に向井が言った。
「ああ、水沢さんのところに派遣の社員がいるでしょ。西川穂波って言う子。彼女、前の会社にも2年くらい派遣で来てましたよ。噂は、きっと、彼女ですから・・・・」
西川穂波、3ヶ月前から派遣で来ている女性だ。
向井の言うとおり噂の出所は、彼女なのかもしれない。
邦彦は、気が滅入った。
樹奈と同じ会社にいたものなら誰でも知っているとでも言わんばかりの向井の言い方。
(誰でも知ってるっていうことか?)
邦彦がオフィスに戻ると、ちょうど終業時刻だった。
デスクの上を片付けている穂波と目が合った。
彼女は、軽く会釈をした。
それだけだ。
「主任、お先に失礼します」
口々に挨拶をして、ほとんどが帰っていったが、増井がコーヒーを持ってやってきた。
「どうぞ」
「ああ、ありがとう。ああ、資料、まだ見てないや。これから目を通すから・・・」
「見てもらえます?・・・じゃぁ、待ってます」
「そう。悪いね・・・じゃぁ、すぐ見るから・・・」
増井も自分のコーヒーを持って、邦彦の横に座った。
「今日、俺が怖いって言ってよね」
ディスプレイを見ながら、邦彦が話しかける。
「・・・すいません」
「謝らなくてもいいよ。俺は、気がつかなかった。みんなも気を遣ってるんだね。俺に・・・」
「はい。企画会議が近づいて、主任が、パソコンに向かってるときは、もう、みんな・・・シーン・・・です」
「みたいだね。増井に言われて、初めて気がついたよ」
「でも、シーンとしていたほうが、わたしはありがたいです。ザワザワしてると気が散るので・・・」
「でも、息が詰まる人もいるんだろうな、きっと・・・・」
「さぁ・・・よくわかりませんけど・・・・」
美香も気を遣っている。
「これ・・・なかなか見やすいし、よくできてるよ。OKだね」
「そうですか?・・・・よかったぁ」
「うん。だいじょうぶ。OKだ。ご苦労さん。もう帰っていいよ」
「ありがとうございます。主任は?」
「ああ、俺は、まだまだ帰れそうにない」
「何か、お手伝いしましょうか?・・・・わたしができれば・・・ですけど・・・」
美香の携帯が小さな着信音を立てた。
「ありがと。・・・・でも、いいよ。デートの邪魔しちゃ申し訳ない」
「デート?・・・違いますよ。そんなんじゃないです。主任こそ、奥さんが待ってますよ」
「・・・・・待ってないよ・・・」
邦彦のあまりのトーンダウンした言い方に、美香はまずいことを言ったと後悔したが、それが表情に出た。
「妻の噂・・・聞いてるんだろ?」
「えっ・・・は?・・・・何でしょう?」
聞いてはいるが、はいとは返事は出来ない。
「知らないのか?」
「えっ・・・は、はぁ・・・・いえ、聞いてます」
美香はあまりにうろたえすぎて、知らないとは言えなくなってしまった。
「元の会社の上司と不倫をしてて、今も続いている」
邦彦が、自分から話した。
「はい・・・・」
まるで、悪いことをして叱られているように、体を小さくして、美香はうつむいた。
(ばか、わたしったら・・・・。もう、本当にドジ・・・・)
美香は、帰るタイミングを逸してしまった。
邦彦も自分が怒っているように思われるのではないかと気を遣って、美香に“帰れ”と言いにくくなった。
「西川さんから聞いたの?」
美香は、黙ってうなずいた。
「そう?・・・他には?・・・・妻の不倫した相手って誰なの?知ってる?」
「よくは知らないですけど・・・。竹内部長とかって言ってました」
「そうなの・・・」
邦彦は、わざとらしいほどの平然な顔を作ったが、平然でないことは、美香にもわかった。
樹奈の憂鬱1-4
人妻☆じゅなの秘密日記
4.久しぶり
「どうしたの、急に?」
瑞樹は、樹奈にコーヒーを出した。
突然、樹奈から“会えますか?”とメールが来た。
代引きの宅配が来ることになっていたので、瑞樹は樹奈を家に呼んだ。
「なんか・・・疲れちゃって・・・」
樹奈は、見るからに疲れた表情をしていた。
「ご主人とうまくいってないの?」
「わかります?」
「そんな感じ・・・・。けんかでもしたの?」
「けんかなんてしたことないです。わたしなんか、何をしてもしなくても関係ないんですよ」
「あらあら、相当ね。・・・ご主人、浮気でもしてるの?」
「まさか・・・・」
そんなことないと言おうとして、言葉に詰まった。
そんなことを考えたこともなかった。
考えたことはなかったが、考えられないことでもなかった。
(そうだ・・・そうかもしれない・・・・)
「なんか、優しそうな人だったわよね。結婚式で見ただけだけど・・・。まぁ、浮気なんかしそうにはない人だったわね、確かに・・・。うちのとは大違い」
「あら、似たもの同士って感じですけど・・・」
「ひどいわね。わたしは浮気なんかしないわよ。主人が勝手に連れてくるだけ」
「ですね。わたしもびっくりでした」
「そうね。最初に会ったとき、驚いてたわね」
「そりゃ、そうですよ。急に家に行くからって・・・。普通、奥さんが外出してるんだって思いますよ」
「まぁ、そうね」
「誰もいないと思ってたのに、・・・いらっしゃいって・・・」
「ですよ。玄関で・・・。・・・もう胸がどきどき。まさか、奥さんに会わされるなんて思ってもみなかったから、もう、どうしようかと・・・・」
「そうそう、主人にいきなりキスされて・・・・」
「奥さんの目の前で、紹介もされてないのに、いきなり・・・・」
「横目でわたしを見てたわね」
「そしたら・・・瑞樹さんまで・・・・」
「違うわ。あれは、竹内が目で合図したのよ」
「いっしょですよ。・・・女の人におっぱい触られたの初めてだったわ」
瑞樹は、その時、竹内に抱き締められた樹奈の背中から手を回し、樹奈の乳房をぎゅっとつかんだのだ。
瑞樹が立ち上がって、ダイニングテーブルの椅子に座っている樹奈の背中に立った。
瑞樹の手が樹奈の乳房に覆いかぶさった。
樹奈は、乳房の上の瑞樹の手を自分の手で上から押し付け、顔を後ろに向けた。
瑞樹の唇が、樹奈の唇に重なった。
樹奈は、唇を開き、瑞樹の舌を受け入れる。
瑞樹の唇から、オリーブの香りがする。
樹奈の胸の鼓動が一気にたかまった。
瑞樹は、樹奈の座っている椅子を横に向け、樹奈の前に回って、しゃがんだ。
「脱いで」
瑞樹に言われて、樹奈は、お尻を浮かし、フレアスカートの裾を広げ、ショーツを太ももまで下ろした。
後は、瑞樹が脱がす。
足首まで降りたショーツから、樹奈が右足を抜く。
その右足を瑞樹がつかんで、膝を肘掛にかけた。
左足も・・・・。
樹奈は目を閉じた。
久しぶりのことで、股間を晒すのが恥ずかしい。
瑞樹の舌が、襞の内側を這って、突起を叩く。
それだけで下半身が、しびれたようになり、子宮全体が熱くなる。
瑞樹の舌が音を立てた。
(ああ、濡れてる・・・・)
過度な刺激に、樹奈は時折腰を引くが、瑞樹の舌は、執拗に追いかけてくる。
「ああ・・・ああ・・・・いい・・・・いい・・・ああぁ」
目尻が熱い。
樹奈は興奮すると涙腺が緩み涙が出る。
「ベッドに行く?」
瑞樹が、立ち上がり、服を脱ぐ。
樹奈も、裸になった。
居間を抜け、寝室まで裸で抱き合ったまま歩く。
ベッドに仰向けになったのは樹奈。
その樹奈の顔を瑞樹がまたぐ。
樹奈も舌を這わす。
舌全体を股間に貼り付けるように伸ばし、瑞樹のクリを舌の先端で弄る。
顔がくっつき、鼻が、瑞樹の中に入る。
瑞樹も同じだ。
「ああ・・・瑞樹さん・・・・」
「何?」
「入れて・・・・」
「いいわよ」
瑞樹は、ピンクのバイブを取り出すと、先端を樹奈のクリにあてる。
「ああ・・・ああああ・・・入れて・・・お願い・・・入れて・・・・」
樹奈は、中に欲しかった。
中に入ってきた。
ゆっくりゆっくり・・・
内襞に振動が伝わる。
「あああ・ああ・・・・・あ」
樹奈は大声を出した。
大声を出したかった。
樹奈の憂鬱1-5
人妻☆じゅなの秘密日記
5.不在
「遅くまでつき合わせちゃったね」
結局、美香は、邦彦の仕事を手伝って、邦彦といっしょに会社を出たのは8時前だった。
「いえ。かまいません。帰ってもすることないし・・・」
「増井は、一人暮らし?」
「はい」
「そうなの・・・じゃぁ、仕事手伝ってもらったお礼になんかご馳走するよ」
「お礼なんて・・・」
邦彦は、まだ、妻の噂のことを聞きたかった。
「お酒は飲めるの?」
「お酒・・・ですか?強くはないんですけど・・・好きです」
「じゃぁ、お酒も飲めるとこでいいか?」
「はい、どこでも・・・・主任に任せます」
邦彦は、美香を料亭風の居酒屋に連れて行った。
邦彦がよく行く店だ。
座席が高い仕切りで区切られていて、周りから見られにくい造りになっている。
邦彦は、妻を疑い始めて、食事を外で済ますことが増えたが、この店なら一人出来ても周りの視線を気にせずに時間をつぶすことが出来た。
「日本酒でいい?」
「はい。日本酒好きです」
「へぇ、そうなんだ」
邦彦は冷酒を頼んだ。
「西川さんって、どんな感じ?」
いきなり妻の話もできないので、邦彦は、噂を撒き散らしているらしい西川のことを訊いた。
「どんなって・・・」
「どうして、妻のことなんか・・・・俺に恨みでもあるのかな?なんか悪いことしたかな、彼女に・・・?」
「ああ、それなら・・・主任じゃないみたいですよ。なんか、前の会社で、主任の奥さんと仲が悪かったみたいです。相当、頭にきてたみたいで、すごい毒、はいてました・・・・ああ、すいません」
「謝ることはないよ。増井が言ったわけじゃないんだから・・・・。何があったんだろうね・・・」
「さぁ・・・・」
美香は、とぼけるのが苦手で、思っていることがすぐに顔に出る。
「知ってるんだろ?」
美香はうなずいた。
「ああ、でも、聞いたら、主任怒りますよ」
「怒らないよ。増井が言いふらしてるわけじゃないんだから・・・・」
「ほんとに怒りません?」
お酒が強くないといったのは嘘ではなさそうだ。
だんだん早口になってきた。
「ああ、怒らないよ」
「あのですね。西川さん、主任の奥さんとその相手の部長さんがホテルで会っちゃったそうです。出ようとして、エレベーターを待ってたら、やってきたエレベーターに乗ってたんですって・・・。今のことじゃないですよ。主任が結婚される前の話です」
結婚前と言っても、邦彦は、樹奈と1年付き合ってから結婚した。
(俺と付き合ってるときに他に男がいたのか・・・・)
「主任の奥さんは西川さんに気づいたそうです。そしたら、西川さん、急に仕事を変えられて、めちゃめちゃきつくなったらしいんです。それでもがんばってやってたのに、契約の更新が彼女だけなかったらしいんです。同じ派遣会社から6人来てて、彼女だけ打ち切り。ぜんぶ主任の奥さんのせいだと・・・彼女が言ってました」
「そうなの・・・でも、それは彼女が言うことが正しいかもしれんね」
邦彦には、樹奈を弁護する気がなくなっている。
「そうですかぁ?奥さんの相手だった部長が手を回したと思うんですけど・・・・」
「そりゃそうだろうが、西川さんにしてみれば、どっちが手を回そうが関係ない。共犯なんだろうから・・・」
「ああ・・・・そうですね。そうだ・・・思い出しました。たしか竹内って・・・言ってました」
「竹内って・・・その相手の名前?」
「はい、また、竹内に会っちゃって・・・って言ってましたから」
「また、ラブホで?」
「いえ、今度は・・・・・」
美香は、話しかけて、言ってはいけないことに気づいたのか、突然、黙って固まってしまった。
「妻といっしょだったのかな?」
邦彦は冷静を装って、話の後を促した。
「サンロイヤルホテルのロビーで見かけたそうです」
美香は、うつむいたまま顔を上げない。
(サンロイヤルホテル・・・・・・)
「そう言えば、前の会社の同僚の結婚式に呼ばれたとかって・・・・。たしか、サンロイヤルホテルだったな・・・」
邦彦は、しょげかえっている美香に気を遣った。
「結婚式?・・・ですよ、きっと。前の会社の同僚なら、その竹内っていう部長が来ててもおかしくないですもの」
美香は救われたように、話をあわせ、コップの冷酒をいっきに飲み干した。
その夜、2次会だ、3次会だと、けっきょく樹奈は帰ってこなかったのだが、それは口にしなかった。
樹奈は浮気をしている。
そのことは、邦彦の中で確信に変わっていた。
結婚式に出席した次の日も、その次の日も、樹奈は、体調が悪いと言って、ひとり先にベッドに入った。
それからすぐに樹奈は生理になり、その後は、今度は、邦彦の仕事が忙しくなった。
樹奈が浮気をしているという噂が耳に入って、それまでは、朝に夕に樹奈を求めていた邦彦だが、自分から求めるのをやめた。
浮気などしていない。樹奈のほうから求めてくる・・・・そう思っていた。
予想ははずれた。
セックスがなくなってイラついたのは自分だけで、樹奈は何も変わらないように見えた。
(男がいたっていうことだ・・)
邦彦も美香にあわせて、コップの冷酒を空けた。
「話し変わるけど、増井、ラクロスやってたんだって?」
邦彦は、これ以上妻の話題では気が滅入るので、話題を変えた。