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樹奈の憂鬱1-5
人妻☆じゅなの秘密日記
5.不在
「遅くまでつき合わせちゃったね」
結局、美香は、邦彦の仕事を手伝って、邦彦といっしょに会社を出たのは8時前だった。
「いえ。かまいません。帰ってもすることないし・・・」
「増井は、一人暮らし?」
「はい」
「そうなの・・・じゃぁ、仕事手伝ってもらったお礼になんかご馳走するよ」
「お礼なんて・・・」
邦彦は、まだ、妻の噂のことを聞きたかった。
「お酒は飲めるの?」
「お酒・・・ですか?強くはないんですけど・・・好きです」
「じゃぁ、お酒も飲めるとこでいいか?」
「はい、どこでも・・・・主任に任せます」
邦彦は、美香を料亭風の居酒屋に連れて行った。
邦彦がよく行く店だ。
座席が高い仕切りで区切られていて、周りから見られにくい造りになっている。
邦彦は、妻を疑い始めて、食事を外で済ますことが増えたが、この店なら一人出来ても周りの視線を気にせずに時間をつぶすことが出来た。
「日本酒でいい?」
「はい。日本酒好きです」
「へぇ、そうなんだ」
邦彦は冷酒を頼んだ。
「西川さんって、どんな感じ?」
いきなり妻の話もできないので、邦彦は、噂を撒き散らしているらしい西川のことを訊いた。
「どんなって・・・」
「どうして、妻のことなんか・・・・俺に恨みでもあるのかな?なんか悪いことしたかな、彼女に・・・?」
「ああ、それなら・・・主任じゃないみたいですよ。なんか、前の会社で、主任の奥さんと仲が悪かったみたいです。相当、頭にきてたみたいで、すごい毒、はいてました・・・・ああ、すいません」
「謝ることはないよ。増井が言ったわけじゃないんだから・・・・。何があったんだろうね・・・」
「さぁ・・・・」
美香は、とぼけるのが苦手で、思っていることがすぐに顔に出る。
「知ってるんだろ?」
美香はうなずいた。
「ああ、でも、聞いたら、主任怒りますよ」
「怒らないよ。増井が言いふらしてるわけじゃないんだから・・・・」
「ほんとに怒りません?」
お酒が強くないといったのは嘘ではなさそうだ。
だんだん早口になってきた。
「ああ、怒らないよ」
「あのですね。西川さん、主任の奥さんとその相手の部長さんがホテルで会っちゃったそうです。出ようとして、エレベーターを待ってたら、やってきたエレベーターに乗ってたんですって・・・。今のことじゃないですよ。主任が結婚される前の話です」
結婚前と言っても、邦彦は、樹奈と1年付き合ってから結婚した。
(俺と付き合ってるときに他に男がいたのか・・・・)
「主任の奥さんは西川さんに気づいたそうです。そしたら、西川さん、急に仕事を変えられて、めちゃめちゃきつくなったらしいんです。それでもがんばってやってたのに、契約の更新が彼女だけなかったらしいんです。同じ派遣会社から6人来てて、彼女だけ打ち切り。ぜんぶ主任の奥さんのせいだと・・・彼女が言ってました」
「そうなの・・・でも、それは彼女が言うことが正しいかもしれんね」
邦彦には、樹奈を弁護する気がなくなっている。
「そうですかぁ?奥さんの相手だった部長が手を回したと思うんですけど・・・・」
「そりゃそうだろうが、西川さんにしてみれば、どっちが手を回そうが関係ない。共犯なんだろうから・・・」
「ああ・・・・そうですね。そうだ・・・思い出しました。たしか竹内って・・・言ってました」
「竹内って・・・その相手の名前?」
「はい、また、竹内に会っちゃって・・・って言ってましたから」
「また、ラブホで?」
「いえ、今度は・・・・・」
美香は、話しかけて、言ってはいけないことに気づいたのか、突然、黙って固まってしまった。
「妻といっしょだったのかな?」
邦彦は冷静を装って、話の後を促した。
「サンロイヤルホテルのロビーで見かけたそうです」
美香は、うつむいたまま顔を上げない。
(サンロイヤルホテル・・・・・・)
「そう言えば、前の会社の同僚の結婚式に呼ばれたとかって・・・・。たしか、サンロイヤルホテルだったな・・・」
邦彦は、しょげかえっている美香に気を遣った。
「結婚式?・・・ですよ、きっと。前の会社の同僚なら、その竹内っていう部長が来ててもおかしくないですもの」
美香は救われたように、話をあわせ、コップの冷酒をいっきに飲み干した。
その夜、2次会だ、3次会だと、けっきょく樹奈は帰ってこなかったのだが、それは口にしなかった。
樹奈は浮気をしている。
そのことは、邦彦の中で確信に変わっていた。
結婚式に出席した次の日も、その次の日も、樹奈は、体調が悪いと言って、ひとり先にベッドに入った。
それからすぐに樹奈は生理になり、その後は、今度は、邦彦の仕事が忙しくなった。
樹奈が浮気をしているという噂が耳に入って、それまでは、朝に夕に樹奈を求めていた邦彦だが、自分から求めるのをやめた。
浮気などしていない。樹奈のほうから求めてくる・・・・そう思っていた。
予想ははずれた。
セックスがなくなってイラついたのは自分だけで、樹奈は何も変わらないように見えた。
(男がいたっていうことだ・・)
邦彦も美香にあわせて、コップの冷酒を空けた。
「話し変わるけど、増井、ラクロスやってたんだって?」
邦彦は、これ以上妻の話題では気が滅入るので、話題を変えた。
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