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晴美の就活2-2
2.抜け目
「裸にエプロンってのはだめ?」
健作がいくつかカメラを並べながら訊いた。
「だめよ。そんなの…」
「でも、普通にエプロンじゃつまんないでしょ」
まぁ、普通にエプロンってのは、普通過ぎるとは思うが、といっていくらなんでも裸というわけにはいかない。
「水着ならいい?」
「どんな?」
健作が水着を取り出した。
ビキニだが、ごく普通の水着だ。
(別に、これなら…いいか)
「これなら、いいわよ」
「そう、じゃぁ、僕、ちょっとトイレ…」
そう言うと、すぐに健作は出て行った。
(なんか、…けっこういい子だわ)
さすがに水着に着替えるとなると、裸にならないといけない。
健作は気を利かせて外に出て行ったのだと晴美は思った。
“気が利く”という言葉と“抜け目無い”というのは別の言葉だ。
だが、それは賢さを何に使うかというだけの問題でしかない。
テーブルの上に無造作に置かれた3台のカメラのうち1台はビデオカメラだ。
しかもRECのランプがついているのだが、晴美はそれに気づかなかった。
健作が戻ってくるまでに着替えなければならない。
晴美は、急いで水着に着替え、エプロンを身につけた。
おかしな格好に違いない。
着替え終わった頃に健作がゆっくりとドアを開けたが、すぐには入ってこない。
「もう、着替えた?」
「うん」
健作は、ようやく中に入ってきて、さりげなくカメラの場所を変えながら、バッグの中から何かを取り出した。
「先生」
「何?」
「今度は、こっちのサングラスにしてくれる?」
健作は、薄いブラウンのサングラスを取り出した。
「いいの?サングラスして…」
「どういうこと?」
「エプロンにサングラスって変じゃない?」
「変だけど…」
健作は笑い出した。
「水着着てエプロンってのも相当変だから、いいんじゃない」
「そうね」
晴美もおかしくなって笑った。
晴美は、健作が取り出したサングラスをかけてみた。
さっきとちがって、顔が隠れてしまうわけではないが、それでもサングラスがあるのとないのとでは大違いだ。
どきどきしていた胸が少し落ち着いた。
今度は、健作はかなり寄ってきた。
胸元、太ももが中心で、上から下から晴美の体を舐めるように撮った。
「壁に手をついて、お尻を突き出して」
「いやだ。恥ずかしい」
「どんなポーズでもいいっていう約束だろ」
「わかったわ。でも、ちょっと待って」
恥ずかしいポーズだ。
晴美は、一度大きく深呼吸してから、壁に手をついてお尻を突き出した。
「先生、お尻の形がいい。なんかグラビアアイドルにでもなれそうって感じ」
「やめて。恥ずかしい」
そうは言ったが、褒められて悪い気はしない。
健作は、何度もシャッターを切る。
褒められたせいで、晴美はもうやめてと言えなくなっていた。
「ねぇ、最後に水着だけの写真撮っていい?」
ようやく、お尻から離れた健作が別のカメラに持ち替えながら晴美に言った。
「いいわよ」
むしろ、エプロンなどしていないほうが自然に違いない。
晴美はそう思った。
健作が手にしたのは赤外線カメラだが、カメラに詳しくない晴美にはそんなことわからない。
健作は、背中を向けて、晴美がエプロンを取るところから、シャッターを切り続けた。
「やだ。そんなに撮らないでよ」
そう言っているあいだにも、シャッターが切られる。
「どうしたらいいの?」
水着になってはみたが、どんなポーズをとればいいのかわからない。
「腕をおっぱいの下で組んで、谷間を作って…」
健作は、恥ずかしがるところもなく、晴美にポーズを要求してきた。
ふと、晴美は、健作の股間に目をやった。
(あれ?)
健作の股間は、普通だ。
膨らんではいない。
(わたしの水着姿って…そんなもんなのか)
晴美は、壁に立てかけてあった小銃を手にして、兵士のときと同じように体操座りをして足を開いて銃を肩にかけた。
さっきよりも足を開いた。
(どう?)
健作がカメラを持ち替え、立て続けにシャッターを切る。
晴美は、小銃を置いて、結局使わなかった拳銃を手に持った。
体操座りのまま、両肘を立てた両膝の上にのせて、拳銃を構えた。
狙いは、健作の股間。
晴美が見ている間に、健作のその部分が膨らみ始めた。
(やった)
晴美は嬉しくなった。
「ありがとう。先生。もういいや」
健作がカメラをしまい始めると、晴美は、健作がいるにもかかわらず、部屋の隅で健作に背中を向けて着替え始めた。
「トイレ行ってくる」
健作が慌てて部屋を出て行った。
(そうか…それでトイレなのか。なんだ、わたし、けっこういいんだ)
晴美は、健作がトイレに行った理由を勝手に想像して、そうだと決め付けた。
(わたしが着替えるから気を利かせただけじゃないのかもね)
晴美は、少しだけいい気分になった。
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