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晴美の就活2-1
1.予想外
晴美は、初めてレンタルスタジオに入った。
広さは、カラオケボックス程度。
ただ、ちゃんと照明もあり、背後にはスクリーンもあった。
「で、何を着ればいいの?」
平静を装ったが、内心どきどきしながら晴美が訊いた。
「これ」
健作は、ビニル袋に入った衣装を取り出した。
「何、これ?」
晴美は、ナースとかセーラー服を想定していたが、取り出されたのは、迷彩色のズボンにダークグリーンのノースリーブのシャツ。
予想外だった。
「アメリカ陸軍の野戦服」
(ヤセンフク?)
「ブーツも?」
「もちろん」
軍用のブーツなんだろう、足首まで編み上げていくものだ。
ただ、ちょっとかっこいい。
「どこで着替えるの?」
「どこって…」
晴美は、しかたなく健作に背中を向けて、部屋の隅で着替え始めた。
まぁ、こういうこともあろうかと、2枚重ねの見せパンだ。
と言って、見せパンだろうと何だろうと、見る側にはただのパンティーには違いないのだが…。
実際、健作は着替えている最中の晴美には興味が無いのか、カメラの用意をしたり、照明を合わせたり、晴美のほうを見ているふうではなかった。
「大きいわよ、このブーツ」
晴美の足は22.5cmしかない。
2cmくらい余った。
「ねぇ、この紐どうするの?」
足が細すぎて、締め上げると紐がずいぶん余った。
健作は、紐を縛ると、さらにもう一回、ぐるっと回して残った紐をきれいに処理した。
いかにも手馴れた感じで、少し、大人びて見える。
「これでいいの?」
着替えた晴美が健作の前に立った。
「あっ、ごめん」
「何?」
「脇から赤いのが見えてる。悪いけど、ブラ、はずしてくれない」
(あっ、そうか…)
ちょっと見栄を張って、寄せてあげてのフルカップブラだったのだが、脇を締め付けるのでその部分の幅が広い。
大きく開いたシャツの脇から、それが見えていた。
「はずすの?」
「女兵士なんだよね。その色は、ちょっと似合わない」
色がまたワインレッドときている。
確かにそうだ。
戦場の兵士が寄せてあげてのワインレッドブラじゃサマにならない。
シャツの生地は厚く、ブラをはずすことは問題ない。
晴美は、すぐにブラをはずした。
「これでいい?」
「うん。いい感じ。じゃぁ、これ」
健作が差し出したのはサングラス。
「これつけるの?」
「顔、写っちゃうよ」
「ああ、そういうこと」
「それもあるし、目が兵士っぽく無いから…」
当然だ。
兵士の経験など無い。
「これ持って」
自動小銃。
「こんなものを貸してるの」
「俺のだよ」
(俺の?)
「服も?」
「ああ」
「ブーツも?」
健作はうなずいた。
服もブーツも健作のサイズではない。
(どういうこと?)
晴美は、あえてそれ以上は訊かなかった。
「そこに座って」
準備のできた晴美が、床にお尻をつけた。
「体操座りで、ちょっと足を開いて、銃は、銃床を下につけて」
「じゅうしょう?」
「肩に当てるほう、銃口を上にして、自分の肩にかけて…」
「違う。左の肩にかけるの」
「決まってるの?」
「右の肩にかけたら、すぐに撃てない。兵士の常識」
(なるほど…)
アルミのカップに缶コーヒーを開けて健作が差し出した。
「先生、タバコ吸う?」
「吸わないけど…」
「ふりだけしてくれる」
健作が、マルボロを出して、先を3センチほど折って短くしてから火をつけて晴美に渡した。
「タバコを指に挟んで、その手でカップを持ってコーヒー飲んで」
注文が細かい。
健作は、まじめな表情でシャッターを切っていく。
たかがサングラス一つだが、そのおかげで晴美は、まるで他人事のように自分を撮る健作を観察できた。
これほど何枚も写真を撮られたことはない。
(けっこういい気分)
晴美は、楽しくなっていた。
「立って。後ろの背嚢も背負って、銃を肩にかけて」
(背嚢?)
後ろに置かれてているのはリュックサックのようなものだが、太いベルトとセットになっている。
晴美は背嚢を担いでから腰のベルトを留めた。
晴美は銃についたベルトをバッグを肩にかけるようにかけた。
「違う。首を入れて斜めにかけて、銃口を下にして銃は背中に回すんだ」
「これも兵士の常識?」
「そう。肩にかけただけじゃ落ちるでしょ。かばんのように横にぶら下げたら、じゃまで走れない。銃口を上にして背中に回したら、構えるのに一度はずさないといけない。銃口が下なら右手で銃口をつかんで引き上げて左手に持ち替えて前に押し出したら、すぐに構えられる」
(戦争オタク?)
晴美は、たしか主人公が高校生の秘密組織の兵士だったアニメを思い出した。
晴美は言われたように銃を肩にかけて健作の方を向いた。
「これでいい?宗介?」
晴美はアニメの主人公の名前を呼んだ。
「先生、知ってんの?」
「けっこうファンだった」
話に夢中になった晴美は、背嚢の肩のベルトが乳房を左右から寄せ上げ、銃の肩紐が乳房の真ん中を通って、こんもりと乳房をうきだたせていることに気づかない。
「じゃぁ、先生。次は…エプロン…いい?」
(エプロン?)
健作は、メイドではなくエプロンと言った。
胸当てのついた子供のスカートという感じの服。
サングラスをはずした瞬間、晴美は急に胸がどきどきし始めた。
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