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由香里の日常2-2
2.祐二
「来週の水曜日、夜、だめかなぁ?」
由香里に永井から、電話が入った。
「夜って…何時ですか?」
「夕方の6時から8時まで…だけど…」
(…だけど?…)
連絡事項は、すぱっと歯切れのいい永井にしては、変な伝え方だ。
「時間は、大丈夫ですけど…どこですか、場所?」
永井が言った場所は、由香里のマンションから30分くらいのところだ。
問題はない。
「だいじょうぶ…です」
場所も時間も大丈夫だが…。どうも、永井の歯切れの悪さが気になった。
「工藤さん、知ってる?」
「あっ…はい」
「工藤さんのリクエストなんだ」
「リクエストって…工藤さんだけなんですか?」
「そういうこと」
由香里は、黙った。
まれに、個別にリクエストが入ることがある。
由香里にも、もう2度、そういうオファーがあって、2回ともに応じている。
(工藤さんかぁ…)
あの撮影以来、工藤は来なくなった。
その後も、何度か縛りはあったが…意識が遠のいていくほどのあのときの思いは感じなかった。
慣れたのだと由香里は思い込むことにしたが、そうでないことは、由香里自身が一番よく知っていた。
(どうしよう…)
「いやなら、無理しなくていいよ」
永井が、こんなことを口にするのも初めてだ。
「いえ…あのぉ…普通の撮影ですか?」
いやではないが、いいですよとすんなり二つ返事で応じることも出来ない。
由香里は一応、念のために訊いてみた
「縛るかってこと?」
「えっ…ええ、まぁ」
「縛らないって言ってたよ」
「そうなんですか?…」
(縛らないの?…)
永井にそう言われて、断る理由がなくなってしまった。
指定された場所は、ホテルフェニックスという名前だったが、ロビーは狭く、誰もいなかった。
由香里は、直接、305号室に行くようにという指示だったので、そのまま、部屋に向った。
インターホンを押すと、すぐにドアが開いた。
由香里を出迎えたのは、工藤ではなく、由香里と同じくらいの年齢の大柄な男だった。
「ええーっと、モデルさんかな?」
180cmを越える大柄の男は、身体に似合わない人懐っこい笑顔で由香里に聞いた。
「は…はい」
由香里がとまどいながら返事をすると
「モデルさん来ましたよ」
男は、部屋の中に向って大声で伝えた。
「どうぞ」
由香里は中に案内された。
中に入ると、すぐ右手がバスルーム。
ホテルと言っても、中は、普通のマンションといった感じだが、居間に相当する空間には、家具はなかった。
壁一面が大きな布で覆われている。
何基かの照明がそっちに向っていた。
あきらかにスタジオという感じだが、ホテルの一室で、こんなことができるのだろうか?
「急に悪かったね」
由香里が挨拶をする前に、工藤のほうから話しかけてきた。
「ああ、…いえ…」
由香里は、工藤の目を見ることができず、工藤の背後の先ほどの長身の男性を目で追った。
「彼は、助手で中川君だ」
由香里は、そういうつもりではなかったのだが、工藤が、その男性を紹介した。
「中川祐二です。よろしく…」
男は、軽く頭を下げた。
「優香です。みんな、ユッカって呼びますけど…」
由香里も名乗った。
どこか、アンバランスな男だった。
背が高いだけではない。
肩の筋肉、胸の張り、何かハードなスポーツをやってるといった身体に、短く太い首の割には顔が小さかった。
おそらく、首が太すぎるせいで小さく見えるのだろう。
その小さな顔に子供ような目が光っていた。
「これに着替えて」
工藤に渡されたのは、白いミニスリップ…それだけだった。
着替える場所はないので、その部屋の隅で、着替え始めた。
(ショーツはどうするんだろう…)
「あのぉ…ショーツは…?」
由香里は、念のために訊いてみた。
「脱いで」
予想通りの答えが返ってきた。
由香里は、全裸になり、その白、厳密に言えば、ほんの少しだけピンクが入っているスリップを身につけた。
カメラや照明のチェックをしている工藤に対して、助手と紹介された祐二は、ほとんど何もしないで着替えている由香里を見ていた。
(何なんだろう、この人?)
撮影は、たんたんと進んだ。工藤だからと、身構えていた由香里も、少し緊張が緩んだ。
「ベッドのマットを運んできて…」
工藤が祐二に命じた。
工藤が、カメラを下ろし隣の部屋に行ったので、由香里も緊張を解き一息ついた。
さすが大男、ベッドのマットを簡単に運んできた。
(助手って…こういう意味の助手なのか)
由香里は、大柄な祐二が何のためにいるのか、自分勝手に理解した。
工藤が再びやって来た。
「うつ伏せに寝てみて」
由香里はうつ伏せになった。
上からシャッター音が聞こえる。
「足を開いて…」
シャッター音は、後ろの上のほうから聞こえる。
「そのまま、身体を後ろに引いて…ゆっくり…」
うつ伏せで足を開いたまま、ベッドマットに膝を食い込ませ、身体を低くしたまま後ろに引いた。
膝が曲がる…スリップは持ち上がる。由香里のお尻が徐々にあらわになっていく。
かかとの上にお尻がついた。シャター音が低い。
(きっと…丸見えだわ…露骨よ、工藤さん)
拒否してもよいポーズである。
「お尻をあげて…足をもっと開いて…」
(それじゃ…)
由香里は迷った。当然、拒否していい。
しばらくためらった由香里の足が少し開いた。
お尻が、少し高く上がった。
モデルとしてなら、当然、拒否するべきポーズだった。なぜか由香里は、応じてしまった。
そして思った通り、どきどきがやってきた。久々に感じる胸の高鳴りだった。
「座って…膝を立てて…」
工藤は、執拗に由香里の股間を狙う。
床に直接置かれたマットは、中途半端な高さだ。中腰だった工藤が、とうとううつ伏せで肘を立ててカメラを構えた。
「足を開いて…」
(そんなぁ…)
カメラを構えた工藤の横に、祐二がいる。
カメラではなく、人に向って足を開くなんて…
「足を開いて…」
同じ指示が繰り返された。
少し、由香里はほんの少しだけ足を開いた。
「もっと…」
工藤の指示は容赦ない。
(違うの…その…祐二さんを…彼を…どけて…)
「できません…」
工藤のカメラだけならできたかもしれないが、カメラマンでもない普通の男性にじっと前で覗かれては…。
「手を後ろについて、天井を見て…」
工藤の指示が変わった。由香里は、今度は言われたとおり従った。
「そのまま、もう少し、足を開いて…」
(どうして…だめだってば……)
異常な固執だった。工藤は、アマチュアではない。局部のアップに何の価値があるのか…。
それでも工藤は、由香里が足を開くのを待っている。
由香里は、困惑した。
ふーっ
大きな息をして、由香里の足が少し開いた。
(だめだって…言ったのに…できないって言ったのに…)
できない由香里の中で…ようやく応じたい由香里が動き出し始めた。
美菜子久しぶり。
またね(眠)