スポンサーサイト
新しい記事を書く事で広告が消せます。
由香里の日常2-1
第2章
1.目隠し
永井は、由香里が嫌がらずになんでもチャレンジしようとしている間になるべく多くのことをやらせてしまおうと、頻繁に由香里を使った。
カメラマン達の評判も悪く無い。
定例の撮影会にも由香里はしばしば呼ばれた。
「午後、縛りいい?」
お昼の休憩に入って、食事に出るときに永井にそう言われた。
「は…はい」
由香里は、事前に、そういうこともあるかもしれないと言われていたので、いまさら、いやとも言えないし、言うつもりもなかった。
(縛りかぁ…)
どんなものか、興味もあった。
茜はそれほど痛くないと言っていたが、痛い痛くないは、たぶんに主観的なものだから、茜にはそうでもなくても、自分には痛いかもしれない。
なにしろ縛られたことなど一度もない。
縛りを意識したのか、午後の衣装は、ちょっと長めの薄い紫のキャミと、同じ色のサイドが紐のショーツだ。
着たままの撮影の後、すぐに永井の声が入った。
「じゃぁ、縛り行きます」
(早っ…)
“そういうこともあるかもしれない”という事前のセリフとは違って、あきらかに、これがメインですと言わんばかりの進行だ。
永井が、正面に来て、由香里の首に縄をかけた。
手馴れた感じだ。
体の正面に垂らされた縄に、後ろから縄が通され、左右にきゅっきゅっと引かれる。
(うっ…うっ…)
注意してないと、左右に縄が引かれるたびに、由香里は声を出しそうになった。
痛くはない…が…痛いのかもしれない。
思ったほど、股間に圧迫感はなかった。
ただ、上下に絞られた乳房は、少しきつかった。
最後に腕を背中で拘束された。
今日も、工藤はいた。
茜の話では、毎回来るわけではないということだったが、由香里の撮影には、必ずいた。
そして、やっぱり、あまりシャッターを切らない。
今日も午前中の撮影では、いつも以上にシャッターを切らなかった。
他の人の半分も切っていない。
そういう人なんだと思いながらも、やはり由香里には、おもしろくなかった。
(わたしがいやなら、他の人の撮影会に行けばいいのに…)
立った姿勢から撮影に入ると、それまで、どちらかというと、他のカメラマンに場所をあけていたような工藤が、中央に出張ってきた。
工藤が動くと他のカメラマンが、工藤に場所を譲った。
(何なの…この人?)
別に、極端に近いわけでもないのに、由香里は、なぜか圧迫感を感じた。
工藤には他の素人カメラマンとは違う、圧倒的な存在感がある。
知らず知らず、由香里の目は、工藤のカメラに釘付けになったが、それに対して、目線、こっちに…と声をかけるカメラマンはいなかった。
(見られてる…)
レンズ越しに、背筋にまで達するような視線を感じる。また、あのドキドキが始まった。
立っているのが…、ただ立っているだけなのに、それが苦しくなってくる。
由香里の背筋がだんだん曲がってくるのを見て、永井がイスを運んできた。
「ここに座って…」
(ああ…足を開くんだ…)
茜がそうだったように、足を開いて、自分も肘掛に足を乗せるんだと思った。
(ああああ…どうしよう…)
いつもなら、恥かしいけれど、できないポーズではない。座って膝を立て足を開くことは何度もしてきた。今日だって…午前中には、それに近いポーズをとった。
だが、…由香里は、子宮の奥のほうに熱さを感じていた。
今はまだ、だいじょうぶだが…。
永井は、由香里の足をとると、大きく開き、肘掛にかけて、そこを縄で縛った。
裸で足を開いているわけではないが、裸で足を開いた午前中より、はるかに胸を圧迫するものがある。
(どうしよう…苦しい…息が…)
由香里の呼吸が浅く早くなっていく。
工藤が、カメラを下げて永井を見た。
「じゃぁ、裸でいきます」
永井は、そう言って、一度、縄をほどいた。
「だいじょうぶか?」
由香里の耳元で、永井が小さな声で、訊いた。
「はい」
立ち上がって、由香里の息は、普通にもどりつつあった。
由香里が、キャミを脱いで、ショーツのサイドの紐に手をかけたときに工藤が言った。
「下は、つけたままで…」
由香里は、永井を見た。
永井は、他のカメラマンの顔を見渡したが、誰も異は唱えない。
「じゃぁ、下はそのままで…」
永井は、慣れた手つきで、もう一度、由香里を縛った。
今度は、さっきよりきつかった。
「うっ…」
予想外の痛みに由香里がうめくが、永井は緩めない。
由香里も、一度、うめいただけで、後は何も言わない。
由香里が、手を後ろに回すと、永井は、その手を前に戻し、前で手首を縛ると、由香里を壁際に立たせ、壁の上の方に取り付けられた突起に由香里の手首の縄を引っ掛けた。
(だいじょうぶだわ…苦しくはない…あそこも…だいじょうぶ)
由香里は、少し気が落ち着いた。
その時、工藤が、永井に何か手渡した。
「ユッカちゃん…目隠しするから…」
永井は、工藤から渡された濃い紫の帯状の布を手にして、それを由香里の目に当てた。
紫の帯状の布…小さな風呂敷だった。
由香里の頭の後ろできゅっという音がした。
…見えない。
シャッター音が…しない。
(どうして…なんで撮らないの?…)
シャッター音だけではない。物音もしない。
(みんな…どうしちゃったの?…)
いるはずだった。
いるはずなのに…
(ああ…だめ…また…)
また、どきどきが始まった。
息が…苦しい。
まっすぐな姿勢がとれなくなる。
由香里の体が左右に揺れ始めたとき、いっせいにシャッターが切られた。
由香里が、今まで耳にした事がないくらいの音だ。
不安が、一瞬にして快感に変わった。
(すごい…すごい…)
一瞬、喜びに我を忘れた由香里は、つい、心の戒めを解いてしまった。
(あっ…だめ…)
身体は、由香里の意志とは無関係に反応し始める…止まらない。
由香里は、足をピタッと閉じた。
だが、それもよくなかった。足を開いているときは、それほど意識しなかった股間の縄が、足を閉じたことで、はっきりと意識された。
(縄が…当たってる…)
子宮がきゅーっと収縮する。
思わず、腰をくねらすと…縄が食い込んだ。
(どうしよう…)
由香里は、それが染み出してこないことを祈った。
由香里に目隠しがされても、工藤は、正面に立ったまま、動かなかった。
こういう撮影の主導権は工藤が取る。
それは、暗黙の了解で、他のカメラマンは、工藤の動きを見ていた。
工藤は待った。
そして、思ったとおり、それは来た。
工藤が、シャッターを切った瞬間、他のカメラマンも一斉にシャッターを切る。
目隠しで、表情は隠れているが、由香里の表情が変わった瞬間だった。
立っていた由香里が自分の力で立っていられなくなってぶらさがった瞬間でもあった。
由香里は、揺れた。
どうしていいのかわからずに、前後に…左右に…
そして、とうとう完全にぶらさがってしまった。
「解いて…」
工藤の声に全員が動いた。
由香里は、左右から支えられ、縄を解かれて、床に横たわった。
縄は解かれたが、手首の縄と目隠しは、誰も解かない。
目隠しをされたまま、由香里は横になった。
身体は、横向きで、自然と背中が丸まった。
意識はあったが、まだ、息が苦しい。
仰向けよりも横向きのほうがありがたかった。
床に丸まって、小さく浅い息を繰り返す由香里に、工藤がカメラを向ける。
他のカメラマンもそれにならった。
由香里の息が正常に戻るのを見計らって、工藤が、永井に目で合図を送る。
同じことを考えていたのだろう。永井は、すぐに動いた。
由香里を仰向けにして、両腕を頭の上の方に引き、今度は、足の方にまわり、膝を立て、太ももと足首を縛り、足を開かせた。
(ああ…だめ…だめ…)
それは、なまじショーツがあるばかりに余計に目立った。
シャッター音が、股間に響いた。
腕は、上にあげたが、何かに縛られているわけではない。
足も開かされたが、閉じようと思えば閉じられる。
ただ、由香里はそうはしなかった。
モデルだから…ポーズを勝手に変えられない…そうだったかもしれない。
確かに、由香里は、その後しばらく、自分自身にそう言い聞かせてはいた。