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由香里の日常1-4
4.野外撮影
「やがい…ですか?」
由香里は、永井の言ったことを、そのまま聞き返した?
「そう、今度の撮影会は、野外だから…」
由香里は、まだ、怪訝そうな表情のままだ。
「野外…つまり、外で撮影するってこと…」
「ああ、野外ですか?」
「そう言ってる」
「すいません」
「大丈夫?外でも…」
永井は、由香里の顔を覗き込むようにしている。
「大丈夫です。問題ありません」
3度目の撮影会が終わってのことだった。
当日、朝早く集合し、バスに乗り込んだ。
カメラマンの中には、女性もいるが、やはり、男性のほうが圧倒的に多い。
その日も、バスの中は由香里以外は、全て男性だ。
こういう状況が、由香里は気に入っていた。
由香里の家は、その地域では1,2を争う大企業を経営している。
小さい頃から、由香里の周りには、由香里を中心にした集団が出来ていた。
そのせいかもしれない。
道路脇に、石段があり、そこを降りてすぐの沢辺で撮影は始まった。
まぶしいほど、明るかった。水着の上にパーカーという格好で、由香里は、ぐるっと周りを見渡した。木々の緑と流れる水の音。
ときどき、上の道路を車の走る音がするが、下から見上げても車は見えない。
沢の反対側は、竹林で、人が歩く小路もなさそうだった。
(こんな場所、誰が探すんだろう?)
由香里は、そんなことを考えながら、パーカーをとった。
由香里の視界の中にいるのは、見知ったカメラマンだけだった。
ひとしきり水着での撮影が終わると、
「じゃぁ、脱ごうか」
いつもの声がかかった。
由香里は、背中の紐をほどいたところで、前を向き、ブラを片腕で押さえたまま、首の紐をほどいた。野外では、シャッター音もそれほど耳に響かない。
「そこの岩の上に寝そべって…」
由香里は、はずしたブラを下に敷いて、うつ伏せになった。
「顔を上げて…」
前から…
「仰向けになって…片足、膝曲げてみて…」
後ろから…
「腕で、片方だけおっぱい隠して…」
上から…
「全部取って…」
いよいよ、全裸だ。
(こんな真昼間に、外で、全裸で…いいんだろうか?…わたしが考えることじゃないか)
脱いでいる瞬間にも、シャッターは切られる。
(ああ…また来た…)
緊張でもない。羞恥でもない。ただ…胸がどきどきする。
それが何か、由香里にはもうわかっている。
外だとなおさらだった。
誰かに見られているかもしれない。カメラマンじゃない、普通の一般の人に…。
そう思うと、さらに鼓動が激しくなる。
ただ、今、その思いに浸るわけにはいかない。
後ろで物音がした。
反射的に由香里が振り返ると、道もない竹林の中から男性が二人出てきた。
すると、カメラマンが、由香里に近寄ってきて、由香里の周りに立ち、一人が、バスタオルを由香里に渡してくれた。
(隠してくれたんだぁ…)
素早く、隠してくれたものの、由香里は、しっかりとその男性たちと目があっている。
何をしているのかは、彼らにもわかったはずだ。
由香里の想像は現実のものになった。
由香里は、家に帰って、裸になってベッドに寝転びながら、今日のことを思い返していた。
外がいい。由香里はそう思った。
誰かに見られるかもしれない…それがよかった。
カメラマンが、気を利かして自分を守ってくれる…それもいい。
(やめられないわ)
由香里はそう思った。
(でも、もし、親にばれたら…)
不安もよぎる。
「まぁ、そのときはそのときよ」
ぽつりと呟いて、シャワーを浴びに行った。