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飼育
2.飼育
コーヒーの香りがした。
千夏は目を開けた。
見える。
目隠しはもうない。
手も動く。
ベッドに寝かされていた。
裸のままだが毛布がかかっている。
男がいた。
コーヒーを飲んで、テレビを見ている。
男が千夏に気がついた。
「気がついたか?」
優しい声だ。
しわがれた声ではない。
「コーヒー飲むか?」
返事をしていいのかどうか迷った。
千夏は首を振った。
男が近づいてきて千夏の毛布をはがす。
千夏は男に背中を向けて丸まった。
男は千夏をうつ伏せにして太ももとお尻の境目あたりで馬乗りになった。
(また、されるんだ)
千夏は、枕に顔を埋めて、声を殺してまた泣いた。
男の手が千夏の肩にかかった。
(何?)
男は、千夏の首筋に指を立てて強く押し始めた。
(マッサージ?)
首筋から肩、背中、腰、そして太もも。
男は、千夏の身体をもみほぐしていった。
何かを塗っているようで、しだいに千夏の体が熱を帯びてきた。
「立ちな」
ひととおりマッサージが終わると男は、千夏を立たせた。
「シャワーだ」
千夏は、バスルームに連れて行かれた。
広いバスルーム。
エアマットが置いてある。
そこに寝かされた。
男は、さっきと同じように千夏の背中を今度はボディソープを垂らして念入りに洗った。
熱いシャワーにひりひりと痛みが走った。
(鞭で打たれたから…)
ただ痛いのは最初だけで、すぐに痛みはなくなった。
お湯をぬるくしたのか、シャワーの熱さも感じない。
気持ちよかった。
つるつるすべるマットの上で千夏は仰向けにされた。
男の手は、脇の下から周りの脂肪を乳房に寄せるように絞ってくる。
乳首には触れようともしない。
下腹部に乗っかった男のペニスは、小さくはないが、男の手は、千夏のお腹から太ももへ。
それはやはりマッサージに近い。
エステのようだ。
千夏の警戒心が緩んだ。
男は、手早く自分も洗うと、シャワーで流し、千夏を起こしてバスルームを出た。
「これを着ろ」
男にバスローブを渡された。
男は、今度は何も訊かず千夏にコーヒーを持ってきた。
お皿にガーリックパンにバナナとベーコンがのっていた。
千夏はそれを食べた。
男は、テレビのスイッチを入れた。
ビデオなのか、つい最近劇場で公開された映画が流れた。
千夏は見るともなくそれを見ていた。
他にすることもない。
男が自分を見ているのに気がついた。
(絵を描いてるの?)
頻繁に千夏を見ながら、男はスケッチブックになにやら描いている。
(まさか、わたしを描いてるの?)
映画が終わるころ、男は千夏にそのスケッチブックを渡した。
(わたしだ…きれい)
千夏は、その絵に釘付けになった。
「映画が見たければ、そこのキャビネットにある。好きなのを見ていい」
男はそう言って出て行った。
翌日、女性が食事と歯ブラシを持ってきた。
「食事が終わったら、その目隠しをするのよ。もし目隠しをしていなかったら、ひどいめにあわされるから…」
そう言って出て行った。
食欲はない。
千夏は渡された目隠しを手に取った。
目隠しをするということは、昨日と同じ一日が始まるということだ。
千夏はしっかりと部屋を見回した。
ドアが開く音が聞こえて、慌てて目隠しをつける。
無言で近づいてくる男。
ひとりだ。
ひとりが終わるとしばらくしてまたひとり、またひとり…そしてまたひとり。
ひとりめにお腹を殴られた。
ふたりめに浣腸されて、お尻に入れられた。
さんにんめに縛って吊られた。
よにんめに喉に挿入された。
ごにんめが来た。
目隠しをはずしてくれた。
あの男だった。
マッサージと食事とコーヒー、そして2枚目の絵。
絵が6枚になったとき、部屋から出されて、別の部屋に入れられた。
その日、男は千夏のベッドでいっしょに寝た。
男に背中を向けた千夏を背中から抱いたまま男は眠った。
次の朝、男は千夏に食事を作った。
「こっちでいっしょに食べよう」
千夏は、男といっしょにテーブルで食事をした。
初めて朝食を口にした。
ただ、男が部屋を出て行くと、入れ替わるようにいつもの女がやってきた。
また昨日までと同じ一日が始まる。
ただ、男が部屋を出て行ったら、目隠しははずしていい
チャイムが鳴ったら、また目隠しをする
そういうルールに変わった。
夜になると、また男がやって来た。
いつの間にか、男の顔を見ると、なぜかほっとするようになっていた。
いつものマッサージの後、バスルームで千夏は逆に彼の背中を流してやった。
キッチンに立った彼の横で、千夏も手伝った。
いっしょに食事をして並んでビデオを見た。
ベッドに横になって、千夏は、男のほうを向いた。
男の股間に手を伸ばして男のそれをぎゅっと握り締める。
千夏はみずから男のそれを口に含んだ。