スポンサーサイト
新しい記事を書く事で広告が消せます。
菜穂子の憧憬2-2
2.豹変
「知美の家に行くの久しぶり」
今日でテストも終わった。
知美に誘われ、今日は菜穂子が知美の家に行くところだ。
「だね。いろいろあったから…」
知美の家には1年生のころ、まだ知美のお母さんが再婚する前に何回か行ったことがあるが、それ以来、1年半ぶりだ。
知美は菜穂子を自分の部屋に通すと、冷蔵庫から缶チューハイを2つ持ってきた。
菜穂子はのどが渇いていたので、開けるとすぐにぐっと飲んだ。
缶いっぱいに描かれている巨峰の絵から、てっきりジュースだと思い込んで飲んだのだが、なにか後味が変だ。
「何、これ?」
「何って、…チューハイ巨峰味」
「チューハイ?」
「そう、チューハイ。知らないで飲んだの?少し焼酎が入ってる」
「焼酎って、お酒の?」
「お酒って言っても、ほとんどジュースだよ、これは…」
菜穂子は、生まれてからまだ一度もアルコールを口にしたことがない。
(お酒か。…まぁ、いいか)
勝手にひとり納得して、残さず飲み干したが、すぐに心臓の鼓動が激しくなるのがわかった。
(えっ、即効だわ、なんか息も苦しい)
色白の菜穂子の頬がみるみる真っ赤になっていく。
「菜穂子、大丈夫?真っ赤だよ、顔」
「うん、大丈夫。たぶん…。知美は平気なの?」
「私は平気だけど」
「一気に飲んじゃったのって、いけない?」
「まぁ、なにごとも経験っていうことだね。それより、菜穂子にね、見せたいものと聞かせたいものがあるんだ」
知美は思わせぶりに菜穂子にそう言いながら、パソコンを立ち上げた。
知美は、ときどき変なものを手に入れてくる。
何ヶ月か前に、菜穂子の携帯に黒人男性の巨大なペニスの写真を送りつけてきたこともあった。
「何?」
「ちょっと、待っててね、もうすぐだから」
少ししてパソコンからジーッというノイズが聞こえ出した。
時折、ぼそぼそと会話らしきものが聞き取れる。
初めて飲んだアルコールのせいで、少し考えるのが面倒になっていた菜穂子は、適当に聞いていたが、聞いたことのある声だ。
(これ、もしかして?)
菜穂子はただでさえ激しくなっていた心臓の鼓動がさらにアップした。
それは、菜穂子と和也の声、あの最中の声だ。
菜穂子は、知美を見た。
「菜穂子って、弟とえっちしてんの?」
「どうして…これ?」
「盗聴っていうことになるのかな?」
「盗聴?」
まさか、身近にいる親友の口からそんな単語が出てくるとは思わなかった。
(盗聴した?知美が?どうやって?)
知美は、彼女のバックからICレコーダーを取り出した。
テスト期間中、菜穂子の家に置きっぱなしだったバックだ。
彼女は、通学の途中ICレコーダーで音楽を聴いていた。
「最新のICレコーダー。これねぇ、録音もできるの。最長64時間。ちょっと音質を良くしても20時間は録音できちゃう。すごいでしょ。」
知美が何を言っているのか菜穂子にはよくわからない。
黙りこんでしまった菜穂子に知美はひとりで話を続ける。
「こっちも見てみて」
知美がそういうと、菜穂子の携帯がなった。
「はやく、見て」
「知美、これ、どうして?」
菜穂子は言葉を失った。
そこに表示されたのは、和也のペニスをカメラ目線でなめている裸の菜穂子の画像だった。
「菜穂子がお弁当買いに行ったとき、パソコン見ちゃったの。デジカメとパソコンがつながってたから、何か撮ったんだなって思って、別に何気なく見たんだけど、びっくり。衝撃映像。探したら他にもいっぱいあるじゃない、みんな見たわよ」
「で、でも、どうして…」
「私いつも、デジカメ持ってるの。そのメモリースティックに保存したの」
「でも、誰とえっちしてる写真なのかわかんなくて。他は和也君の写真ばかり。でも、和也君の裸の写真、見つけたの。後姿。かっこいいお尻だったわ。それで、もしかしたら相手は和也君?て思って、ちょうど、レコーダーもってたから、録音状態で置いて帰ったってわけ。でも、まさかって思ってたわ。次の日に、前に使ってた別のレコーダーと入れ替えたの。うちに戻って聞いたら、“和也”って菜穂子の声がして、正直、驚いたわよ。だって、弟でしょ」
スピーカーから、菜穂子のあえぎ声が流れた。
「止めて、知美、おねがい、止めて」
菜穂子は、ただただはずかしくて、知美に頼んだ。
菜穂子の懇願は、あっさり無視された。
「菜穂子、すごいね。弟とやっちゃうなんて。しかもすごい声」
「お願い、やめて、もう、やめてよ」
菜穂子は大声を出した。
その瞬間、
ピシッ
知美の手のひらが、菜穂子の頬を打った。
一瞬、何が起こったのか菜穂子は理解できなかった。
(たたかれたの、わたし、知美に?)
知美の顔は、菜穂子が知っている彼女のものではなかった。
「だまって聞くのよ」
知美の豹変ぶりに菜穂子はとまどい、急に知美が怖くなった。
静かな部屋に菜穂子の和也のペニスをなめるぴちゃぴちゃという音と、よがり声だけが響く。
「菜穂子、これ、学校でみんなに公開しようか?」
「えっ、何言ってんの?」
「この写真ばらまこうかなって言ってるのよ。菜穂子は、弟のペニスをしゃぶって、ザーメンを飲む女ですって」
「…うそ…でしょ、そんなこと」
「どうしようかな?もう誰かに言いたくて言いたくて、今日なんか大変だったわ」
「やめて。知美、お願い、友達でしょ、ねぇ、やめて」
「友達だね。そうね、黙っててあげてもいいけど…、まぁ、菜穂子次第ね」
「どういうこと?」
「菜穂子。菜穂子はこれからわたしの言うことをきくの、いい?」
「知美の言うこと?」
「そう、逆らっちゃだめ。わたしの言うとおりするの、わかった?」
知美の意図がわからず、菜穂子は怖かったが、写真をばらまかれるのはそれ以上に恐怖だった。
「誰にも言わない?」
「黙っててあげる。そのかわり絶対服従よ」
「わかったわ。だから絶対に言わないで」
「誰に命令してんの?命令するのはわたし。菜穂子は従うだけなのよ」
「わかったわ、そうするから」
「“わかりました。言うとおりにします”って言うのよ」
「そんなぁ」
「わかんないの?」
知美がたたみかけるように菜穂子に迫る。
「わかりました。言うとおりにします」
菜穂子は知美の言葉を繰り返した。
「よくできました。じゃぁ、菜穂子、シャワー浴びてきて」
「えっ?」
「従うんだろ、早くシャワー浴びてきな」
知美の口調が急に荒っぽくなった。
「はっ、はい」
菜穂子は慌てて立ち上がった。
▼“菜穂子の憧憬”を最初から読む