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美菜子の追憶1-4
4.いくらなんだ?
学校で、ひどいめにあった次の日、わたしは、例のおじさんに呼び出されて、ホテルに行った。
ホテルを出て駅に向かう途中、交差点の先から省吾が歩いてきた。
「同級生」
わたしは、小さな声でおじさんに聞こえるように呟き、おじさんから離れた。
省吾は、その先のコンビニから出てきた。
偶然なはずがない。
待っていたに違いない。
「おじさん、今日は、ここで…」
わたしは、そう言って、交差点をわたらずに省吾を避けて左に曲がった。
省吾が追いかけてきた。
走って逃げることも出来たが、わたしはそうはしなかった。
悪いことに違いないが、他人にとやかく言われたくはない。
省吾が横に並んだ。
「また、あの男か」
わたしは答えない。
「お前、あのおやじの愛人か?」
わたしは、省吾を無視して歩き続ける。
腕をつかまれた。
「何、すんの・・・やめてよ」
省吾は、ぐいぐいわたしの腕を引っ張った。
「いやだ。・・・どこ行くの?」
近くの公園に引きずり込まれた。
「やだ・・・。放して」
わたしは、立ち止まろうとするが、省吾の力は強い。
腕を強く引っ張られ、しょうがなくついて歩いた。
夏海の話は、また途切れた。
わたしは、もう冷たくなっていたコーヒーを少し口に入れた。
「その時にね・・・・お前、いくらなんだ?って訊かれたの」
夏海は…泣いていた。
「わたし、それまでにも、つらいことはいっぱいあったよ。でも、それが一番つらかった。今でも…今までで一番辛い」
似たようなことはわたしにもある。
こんなときに、かけられることばはない。