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亜希の反抗2-4
4.モデル
「先生、下に行ったついでにタクシー会社に電話したんだけど、ちょっと、何時になるかわからないって。台風、外はひどいみたい。この辺でも道路が冠水してるらしいよ」
「えっ、そうなの?来れないの、タクシー」
「うん今はね。また、電話してみるよ」
「ごめんね。本当に迷惑掛けちゃって…」
「いいよ。…それより、先生、実は頼みがあるんだけど…」
「何?」
「芸術部で写真やらないかって、このあいだ言ったよね」
「うん」
「やってもいいですけど…先生、モデルになってくれないですか?」
「モデル?」
亜希の脳裏には、先ほどの縛られた女性のイメージが残っていた
「さっきの写真を思い浮かべてませんか?」
ずばり指摘されて、亜希は答えに困った。
「あれは、俺が撮ったんじゃないですよ。あんなんじゃなくて、普通の写真です。
証明写真とかしか撮ったことないんで、不安なんですよ。ちょっと、練習したいんです。練習台になってもらえませんか?」
誤解したことをはっきり指摘されて、動揺していた上に、それでなくても、まるで子供ようなへまばかりを連続した後であったため、汚名返上とばかりに亜希は無理をした。
「そうか。練習台ね…いいわよ。迷惑掛けちゃったし、もともと芸術部には私が誘ったんだしね」
「そうですか。ありがとうございます。じゃぁ、隣がスタジオなんで…」
「えっ…今?」
「そうですよ。それとも、わざわざ、またうちに寄ってくれますか?それに、どうせ、すぐには帰れないんだから」
「そうね。でも、私、服がまだ乾いてないわ」
「スタジオに行けば、何かあると思います。それより、ましですよ」
俊哉は、亜希のだぶだぶのラグビージャージを指差して、にっこり微笑んだ。
スタジオは3つあり、その一番手前、俊哉の部屋に一番近いところに俊哉は亜希を入れた。
スタジオに入ると、俊哉は、亜希を待たせ、奥の小部屋に入った。
「先生、これ着る?」
俊哉が小部屋からもって出てきたのは、シルクのガウンだ。
「いいの?」
「うん…いやなら、他のにしようかって言っても、あとはバスローブしかないんだけど…」
「バスローブでもいいのよ。だって、これ、シルクでしょ」
「撮影するんですけど、これから…。バスローブの写真になっちゃいますよ」
「ああ、そうだったわね…そうね、よくないわね、やっぱり」
亜希は、そう答えてはみたが、
(これでも…よくないと思うけど…でも…)
「ねぇ、工藤君。全身撮るの?顔だけとか…上のほうだけとかって…」
「練習なんで…出来れば全身も撮らせてくれませんか?」
「そうよね…ねぇ、撮った写真、私にくれない、そのぉ…できればネガもいっしょに」
亜希は、俊哉を傷つけないように言葉を選んで、慎重に話した。
「もちろんそうしますよ。でも、何枚かくれると嬉しいですけど…記念なんで…」
「そう…いいわ。でも、私なんかの写真が記念じゃ…」
「何言ってるんですか?先生、きれいですよ。先生のファンいっぱいいるみたいですよ」
こんなことを10歳も年上の大人に向かって、平然と言う俊哉に、
「そう…ありがとう…おせじでも嬉しいわ」
亜希は、戸惑うばかりで、それは生徒に対する言葉ではなかった。
「そこで着替えてください。一応、鏡もありますから…」
俊哉は、さっきガウンを取り出した小部屋を指差した。
「わかったわ。ありがとう」
(どうなんだろう?これっていいのかしら?…って、こんな時間に生徒の家に生徒と二人っきりでいること自体、だめにきまってるわ。でも、台風よ。しょうがないわよ…)
亜希は、教師としての立場を考えてみたが、もはや今更断れる状況でもないことは、最初から気づいてはいた。
ただ、自分を納得させる理由を考えていたに過ぎなかった。
「いいわよ」
亜希は、シルクのガウンだけを羽織った格好で出てきた。
前はボタンで留まっているが、わずかに3箇所。
下のボタンはおへそのちょっと下くらいで、歩くたびに前ははだけ、横からなら、太ももの内側までのぞくことができるだろう。
露出度だけを言えば、ラグビージャージよりはましではあったが、なまめかしさは比べ物にならなかった。
小部屋から出てきた亜希に俊哉は、表情一つ変えず、カメラを構えた。
左右から強い光を当てられた中央に椅子が置かれていた。
「座るの?」
「ううん、横に立ってもらえますか…そう…こっちって…レンズね、レンズ見てもらえますか?」
亜希は、自分でもぎこちない表情だろうと感じながら俊哉の構えるカメラのレンズを見た。
俊哉は、カメラを降ろすと、亜希の横に来て、耳元で囁いた。
「ごめん、先生…後姿から撮っていい?」
「…」
「先生、緊張しすぎ。でも、僕は緊張をほぐす方法が分からないから…ごめん」
「ううん。ごめんなさい。私が…慣れてないから…」
「後姿を撮るよ。それから、正面じゃない横からとか…ね」
俊哉は、亜希の後姿、斜め後ろ、と角度を変えながら、シャッターを切り続けた。
(そんなに撮って…もったいないわ)
亜希は、何枚も何枚も撮り続ける俊哉に
「ねぇ、そんなに撮ったら…もったいないよ」
振り返りながらそう言った瞬間、
「きゃっ」
突然、部屋の明かりが消えた。
「何?工藤君。停電?」
「たぶん…台風のせいでしょう。ちょっと待ってください。今何か持ってきますから。あっ、動かないでくださいね。そのへんケーブルとかあるんで…そう、椅子に座ってて」
亜希は、すぐ横にあった椅子にすわった。
直前まで、強い光を浴びていた亜希は、真っ暗で何も見えない。
近くで、俊哉の足音だけが聞こえる。
「工藤君。だいじょうぶ?気をつけてね」
小さな明かりがついた。
俊哉が懐中電灯をつけたのだが、それはあまりに小さな明かりで、亜希には、光源だけが見えるだけで、他は何も見えない。
その光源だけが近づいてきた。
「先生、そっちに行くけど、よく見えないんで、手探りでごめんなさい」
俊哉の手が、亜希の肩にさわった。
「あっ、いた。ここじゃどうしようもないから僕の部屋に戻りましょう」
そう言われて、亜希は、俊哉の手をたぐって立ち上がった。
(…えっ…)
一瞬、何が行われたのか、暗闇の中で亜希は理解できなかった。
俊哉は、立ち上がろうとした亜希のガウンの襟の部分をつかむと、それを左右にぐっとひっぱり、亜希が立つのと同時に、下に引き降ろした。
ガウンは、前をボタンで止められているので、ちょうどお腹のあたりで止まった。
亜希は上半身むき出しの状態で、しかも手はガウンが邪魔で持ち上げることが出来ない。
「工藤君」
驚いて、工藤の名を呼んだ亜希の唇に工藤の唇が重なり、亜希は、工藤に抱きしめられた。
そうなってもまだ、亜希は状況が把握できずにいた。
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