スポンサーサイト
新しい記事を書く事で広告が消せます。
亜希の反抗2-5
5.母のない子
「工藤君…」
唇が解放され、亜希は、かすれた声で工藤の名を呼んだ。
「先生…ごめん」
俊哉は、亜希の背中に回り、右手を胴に回し、左右に垂らされ、ガウンで拘束された亜希の両腕をさらに押さえた。
さらに肩越しに左手を前に回し、露出させた亜希の乳房の上に手を載せた。
「何?…やめて」
今度は、かなり大きな声を出したが、俊哉の亜希をぎゅっと抱きしめた腕は緩められることはなかった。
「工藤君…お願い…やめて、放して」
「…先生、怒ってる?…俺、退学ですか?」
「えっ…何言ってるの?」
「先生にこんなことして…だめだよねぇ、きっと」
「…」
亜希は、俊哉が何を言い出すのか、俊哉の言葉を待った。
「先生、今、写真とってたら、ごめん、急に、抑えられなくなって…退学になる?」
今、そうよと言って、どうせ退学なら…と、やけになられても困る。
それに、第一、ここに自分がこんな格好でいることなど、表ざたにできるはずがない。
たとえ、このまま工藤にレイプされたとしても、それを公表できるかどうか?
公表すれば、たぶん自分も教師ではいられない。
亜希は、忙しく考えを巡らした。
「だいじょうぶ。ねっ…誰にも言わないから」
俊哉は、亜希の乳房の上に置いた手を動かしてはいない。
ただ、置いているだけだったが、亜希の答え次第ではどうなるかわからない。
そんな不安の中、亜希は、ゆっくり、身体を俊哉から離そうとした。
俊哉の腕から、少しずつ力が抜けていった。
暗闇にようやく目が慣れ始めた亜希は、さっきから押し黙ったままの工藤の顔の位置を確認しながら、
「誰にも言わない。わたしもこんな格好だし…わたしも悪いんだから…」
そう言って、俊哉の腕から身体を抜こうとした瞬間、再び俊哉の腕に力が込められ、亜希は、俊哉に後ろから抱きかかえられた。
「工藤君」
亜希は、今度は咎める口調で厳しく俊哉の名を呼んだ。
「先生、これだけ…これ以上は何もしないから…もう少しこのままでいて」
「工藤君……」
今度は、明らかに亜希の声がトーンダウンし、その後の沈黙は…事実上の肯定だった。
俊哉の腕に力が入った。
数分の間、そのままじっとしていた。
亜希は、徐々に息苦しくなる胸の圧迫を感じ始めていた。
相変わらず、乳房の上に置かれた俊哉の手は動かない。
動いたのは、手のひらに押しつぶされていたはずの亜希の乳首のほうだ。
「ねぇ…工藤君…もういいでしょ」
乾いた咽から、かすれた声で亜希は工藤に話しかけた。
「ああ、ごめん。やっぱりだめですか?ずーっと、このままでいたかったんだけど…ごめんなさい」
俊哉は、亜希を抱きしめていた腕を解いた。亜希は、すぐにはガウンを元に戻せず、俊哉がそれを手伝った。
「ごめん、先生。…もう写真は撮れないから、僕の部屋に行こう。暗いから…ごめん」
そう言うと、俊哉は亜希の腰に手を回しぎゅっと自分のほうにひきつけ、足元に注意しながら、扉を開け、外に出て、また、元の俊哉の部屋に戻った。
俊哉は、亜希をソファに座らせると、どこかに姿を消した。
「ローソクしかなかった」
そう言って、俊哉が火のついたろうそくを持ってやってきた。
テーブルの上、キッチン、机の上と俊哉は持ってきた6本のそうそくを、部屋のそこここに置いた。
ぼんやりとしたろうそくの灯りだが、6本あれば、なんとか部屋全体を照らすことが出来た。
「ううん。だいじょうぶ。明るいわ」
「何か飲む?」
俊哉は、冷蔵庫に向かい、缶コーヒーと缶のレモンティーを持ってきた。
「コヒー…オア…ティー?」
亜希は思わず笑って答えた
「ティープリーズ」
二人は顔を見合わせて微笑んだ。
亜希の心には、先ほどの恐怖心はもうなかった。
« 亜希の反抗2-4 l Home l 亜希の反抗2-6 »