スポンサーサイト
新しい記事を書く事で広告が消せます。
美菜子の恋2-1
第2章
1.撮影
デジカメの普及で写真屋は、斜陽産業になりつつある。
いや、もうとっくにそうなっている。
店は、バイトの店番一人で事が足りている。
俺の仕事は、カメラマンだ。
俺の父、重雄は、依頼されて写真を撮っていた。
人からは緊縛師と呼ばれていたようだ。
俺も縛ることはできる。
教わったわけではない。
小さい頃から見ていただけだ。
俺の母親も元は重雄のモデルだったらしい。
結婚してからも離婚してからもずっと撮っていた。
親父は二年前、現役を退いたが、顧客の要望で、今は俺がそれをやっている。
ただ、最近は、ビデオ撮影の依頼が多くなった。
写真もそうだが、ビデオとなると素人とプロの差はさらに広がる。
そのうえ、編集となれば、素人にはなかなかこなせるものでもない。
おかげ様で、そこそこ途切れることなく仕事はあった。
美菜子はすぐにやってきた。
「店長、お客さんです」
店番のバイトから内線が入って、俺は店に下りて行った。
店は1階だが、スタジオは7階だ。
もともと2階から上はテナント貸ししていたのだが、空いてしまい、埋まらないのでスタジオに改装した。
今は、5階も6階も空いている。
「それに着替えて」
俺は用意したバスローブを渡した。
「いい香り」
コーヒーをいれたばかりだ。
「コーヒー、飲むか?」
「ええ、ありがとう」
美菜子は、コーヒーをひと口すすった。
「おいしい」
俺は、美菜子の顔をじっと見ていた。
「なぁに?」
「いや…なんでもない」
俺は、カップをテーブルに置いてカメラを取り出した。
「重そう」
大きなカメラは、いかにも重そうだった。
「始めようか」
美菜子は、俺に指示された場所に立った。
「背中を撮る」
美菜子は、バスローブを取り、裸の背中を俺に晒した。
美菜子は、腕を頭の後ろに回して組んだ。
何のポーズの指示もしないのに美菜子は、自分勝手に腕を伸ばし、体を曲げ、ベンチでカメラに背中を向けて丸まった。
勝手に動く美菜子を追って、俺は、シャッターを切り続けた。
(写真がないって言ったが…)
「モデルの経験があるのか?」
俺は美菜子の前に回ってカメラを向けた。
「あるわ」
ベンチの上で、かたつむりのように丸まっていた美菜子が顔を上げた。
「でも、写真はないの」
通常、撮った写真はカメラマンの所有だ。
美菜子は、前にいる俺のカメラを見つめたまま、お尻を高く上げ始めた。
お尻だけが上に突き出された格好だ。
きゃしゃな身体に似合わないほどお尻が左右に張っている。
「どこ撮ってるの?」
俺のカメラは、美菜子の後ろの鏡に向いていた。
「尻だ」
「大きなお尻でしょ」
「ああ。男が寄ってくるだろ」
「そうね。ひとり寄ってきたわ」
「ねぇ…」
美菜子が、話しかけた。
「なんだ?」
「縛らないの?」
「縛られたいのか?」
「ううん。そうじゃないけど…」
「今日、店は?」
「いつもと同じ」
「仕事が終わって、もう一度来るか?」
撮影用の形だけの緊縛などばかばかしくてやってられない。
「遅いわよ。いいの?」
「かまわんさ」
「そう。でも、夜中に開いてるのここ?」
俺は、カメラを置いて、携帯の番号を書いて美菜子に渡した。
「待っててくれるの?」
「ああ」
俺は、もう一度、美菜子にお尻を突き出した姿勢をとらせた。
写真を撮るためじゃない。
俺は美菜子の後ろに立ち、そこに自分の肉棒をあてた。
「…ゆっくり…きついわ」
撮影だけで濡らす女もいるが、美菜子は違った。
「痛いか?」
「ひどいわね…」
「ああ…ひどい男だ」
「…ばか」
俺は、いきなり激しく動いた。
夜中の2時過ぎに美菜子はやってきた。
エレベーター脇の非常口を開けると美菜子が立っていた。
「来たわ」
7階には、俺の作業部屋があり、俺はそこで暮らしている。
「ここって、スタジオ?」
部屋に入るなり、美菜子が訊いた。
「元はそうだが、今は俺が住んでいる」
「ふーん。ここがあなたの家?」
「そういうことだ。ちょっと待ってくれるか。朝撮った写真をプリントしていたところだ」
「ええ、どうぞ」
美菜子を待たせて、俺は暗室に入った。
俺が部屋に戻ると、美菜子は俺のベッドで寝ていた。
ソファの上に服がたたんで置かれている。
下着も乗っていた。
そっと毛布を持ち上げると、美菜子は横を向き、丸まって眠っている。
お祈りでもするように体の前で折りたたんだ腕の間から乳房がのぞいている。
(おかしなやつだ)
小さな寝息を立てて、眠っている。
俺は、美菜子にアイマスクをした。
美菜子が動く。
かまわずに、美菜子の腕に白いボクシングのグローブをつけた。
目が覚めたようだ。
「ごめん…寝ちゃったみたい…これ、何?」
美菜子は、グローブをつけた腕を上げた。
「ボクシングのグローブだ」
「ふーん。どうすんの?目隠ししてボクシングするの?」
「まさか…」
俺は、笑った。
「立って」
俺は美菜子の手を取り、ベッドの脇に立たせた。
俺は美菜子の両手を合わせ、グローブの手首の部分をテープでぐるぐる巻く。
「縛るんじゃなかったの?」
「縛りはやめた。今日は、吊る」
俺は、美菜子の両手を高く上げさせ、天井に吊った。
「どこ?お願い、近くにいて」
しばらくして美菜子が、小さな声で言った。
俺は、美菜子を抱きしめた。
美菜子の腰がしなり、足が浮く。
「はぁううう…」
美菜子が声をあげた。
きつすぎるんだろうが、それでも美菜子は何も言わない。
俺の腕にさらに力がこもった。
「ああぁぁぁあぁぁぁ…」
耐え切れなくなった美菜子が、顔を真っ赤にしながら声をあげるが、それでもやめてとは言わない。
俺は力を抜いた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
美菜子は絶え絶えの息をしている。
(不思議な女だ)
美菜子はめいっぱい耐える。
すぐに呼吸がでたらめになって、小さく浅い息を繰り返す。
それでも我慢している。
「美菜子」
少し、息が整ったのを見て、俺は話しかけた。
「何?」
「よく縛られるのか?」
(どうかしている?なぜ、そんなことを訊く?嫉妬か?)
俺は、今まで一度も嫉妬などしたことはない。
「いつもじゃないけど…」
美菜子は、平然と答えた。
男がいるということだ。
「そいつとは長いのか?」
「気になるの?」
「俺はかまわんが、お前はいいのか?」
「嫌な人」
「すまん」
「謝るの?」
「おかしいか?」
「ううん…ねぇ、殴るの?お腹…」
美菜子は話題を変えた。
「殴って欲しいか?」
「なわけないでしょ。でも、好きにしていい」
「そうか…」
俺は、美菜子のお腹に手を当てた。
びくっと美菜子がお腹を引く。
美菜子の背中に左手をあて、右手で強くお腹を押す。
「うっ」
美菜子が息を止めた。
「美菜子」
「ん?」
「どうしてここに来た?」
「来いって言われたから」
「そうか」
「そうよ」
俺は、腕を吊ったロープとは別にもう一本ロープを掛け、美菜子のウエストをぎゅっと絞って吊り上げた。
美菜子のかかとが浮いた。
俺は、立て続けにシャッターを切った。
急がないと、そう長くは持たない。
目隠しをはずした。
カメラの方を見る美菜子の目が泳ぎ始める。
「…ああああ・ああああ…あああ」
美菜子はもうカメラも見てはいない。
(ここまでか…)
美菜子の膝がふるえている。
つま先は床についているが、体重を支えてはいない。
吊られたロープにぶら下がって体が左右に揺れ始めた。
耐える女は、見極めが難しい。
俺は、ロープを解いた。
「…ごめん…」
美菜子はそう言うと、床に横たわってまた浅い息を繰り返した。
« 美菜子の恋1-5 l Home l 美菜子の恋2-2 »