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りんの挑戦1-1
チャレンジ りんの挑戦
第1章
1.アルバイト
「手を出して」
祐二に言われ、両腕を前に突き出しながら、りんは、少し震えた。
祐二は、りんの両手首をいっしょに縛る。
「初めてなのか?」
「いえ・・・でも、初めてみたいなものです」
うそではない。昔、つきあっていた男に何度か縛られたことはあるが、所詮、素人のお遊びに過ぎない。
りんが、デリヘルを始めたのは、半年前。
大学を出て、すぐに大手企業に就職したが、馴染めなかった。1年で辞め、派遣会社に籍を置いたが、別にこれといったキャリアのないりんには、あまりいい仕事は回ってこない。
アルバイトでデリヘルを始めた。
正確に言えば、学生時代にアルバイトをしていたデリヘルに復帰したというほうが正しい。
店の名前は、ベビードール。
りんは、店長の佐々木啓太から、直接、今日の仕事を依頼された。
相手は曽根祐二。
大事なお客さんらしい。
啓太に“なんでも彼の言うとおりにしてくれないか”と頼まれた。
何でも言うとおりに・・・・、というのは、たぶん、こういうことなんだろうと予想はしていた。
ほとんど何の家具もない部屋。
ただ、いたずらに広い空間の中央にいすがひとつ置かれている。
りんは、そこに座らされ、両腕を縛られようとしている。
天井から細いワイヤーが降りている。祐二はその先端のフックにロープを引っ掛けた。
「吊るよ」
リモコンのスィッチでブーンとモーター音が部屋に響いた。
りんの手を縛ったロープが上に引かれる。祐二は、りんの手が伸びきったところで止めた。
祐二の吊るという言葉に、宙に吊られることを覚悟したりんには、多少、拍子抜けだった。
りんは、自分が初めてなので、祐二が、手加減をしてくれたのだと勝手に理解したが、そうではない。
確かに、自分で立っていれば、体重が、手首にかかるわけではない。
しかし、手を上に伸ばした姿勢でずっとまっすぐ立っていられるものではない。そのことをりんはまだ知らなかった。
祐二は、部屋の中央で吊られたりんの周りを、ゆっくりと回った。
手首はそれほど痛くはないが・・・・腕を上げているのがつらい。
次第に、りんのからだが揺れ始める。
「ふーっ」
りんが大きく息を吐いた。
いつまでこのままなのか?終わりの時間を知らされないで我慢するのは、簡単ではない。
心は肉体よりも先に悲鳴を上げる。
「うっ」
不意に膝が、がくんと折れて、ロープにぶら下がってしまう。
(いけない・・・いけない・・・)
また、元のように立つが、長くはもたない。
「ああっ・・・」
また、ぶらさがる。
祐二は、見ているだけで、りんに触ろうとはしない。
時間がじわじわとりんを締め付ける。
「ああ・・・」
時折、りんが小さく声を出す。
「あああ・・・」
りんは、大声で叫びたい衝動にかられた。
「ああああ・・・あああ・・・・」
とうとう、りんは声をあげた。
揺れるりんの腰を背後から祐二が支えてくれた。
腰骨に感じる手の感触。
腰をぎゅっと固定されると、ずいぶん楽になる。
「ご・・・ごめん・・・な・・さい」
声を出したことをりんは、謝った。
祐二は答えず、指を、りんの股間に伸ばす。
祐二の思ったとおりの指の感触だった。
そのまま指を、すっと中に侵入させた。
りん自身は、その事に気づいてはいない。
ただ、吊られていただけ・・・それだけでりんは濡れている。
祐二の指が、ぴちゃぴちゃといやらしい音を立てる。
鈍い感触だった。
祐二の指が入って、いじられているのに、それがいつも感じるものとは全く違う。
痺れている。
手も足も、お腹も太ももも・・・・体全体が痺れている。
祐二の手が、離れると、りんは不安に襲われる。
「目隠しはいい?」
祐二が、唐突にりんに訊いた。
「だいじょうぶです」
祐二は、アイマスクでりんの目を覆った。
だいじょうぶではなかった。
まっすぐ立っていられない。手首に体重がかかって、痛い。
祐二が、ワイヤーを下げた。
「ああ・・・・」
りんは、大きくよろけ、祐二に支えられた。
祐二は、ワイヤーからロープを外し、そのロープも解いた。
「ふーっ」
ほっとしたりんが、溜息をつく。
祐二は、りんの両肩に手を置き、りんをゆっくり押し始める。
押されるがままりんは歩いた。
祐二が止まった。
りんも止まる。
祐二の左手が、脇から前に回り、りんの乳房をつかむ。
右手は、腰から前に回り、りんの股間に伸びる。
祐二の舌が首筋を下がる。
シャーッ
カーテンを引く音。
開けたのか閉めたのか?
祐二は、りんの手を前に伸ばさせた。
りんの手の平に冷たいガラスの感触。
カーテンは開けられたようだ。
ビジネス街にある10階建てマンションの8階。
確か、周りは同じくらいの高さのオフィスビルに囲まれていた。
目隠しをされて見えないりんには、どうということもない。
祐二がりんのアイマスクを外した。
ガラス越しに向かいのオフィスビルが見える。
少し下の階で、男性がパソコンに向っているのが見える。
祐二が部屋の明かりをつけると。窓は鏡に変った。
裸の自分が映っている。
その後ろに祐二が見える。
(なんだろう・・・どきどきする)
りんは、奇妙な感覚に襲われた。
一歩、後ろから祐二に押されて、りんはさらに窓に近づく。
近づくにつれ自分の影の部分が窓に戻る。
夜景が眼下に広がり、同時に、今まで窓に映っていた自分の姿が、ぼやけていく。
さらにもう一歩。とうとう窓にくっついた。それでも祐二は、りんの背中を押した。顔が窓に張り付く。
乳首が窓に触れる。冷たい。
ようやく、祐二は、りんの背中から手を放した。
りんは、ほんの少し、窓から離れて窓の外に目をやった。
背中の祐二の顔が、ぼんやり窓に映っている。
(わたしを見てる)
りんは、祐二の視線を背中に感じて、なぜかほっとした。
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