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シークレット/日向の秘密2-1
1.夜の公園
あれ以来、“known”からは、メールもコメントもなかった。
日向の不安は、日とともに薄れ、もう覗き窓から外を見てからドアを開けることも、後ろを気にしながら歩くこともなくなった。
(わたしを見ていると言ってきただけよ。そういうふりをしただけ・・・・見てるわけないない)
1週間。特別なことはなにも起こらなかった。恥かしい思いをしたいという気持ちが、またこみ上げてきていた。
日向は、夜の9時を回って、駐車場から車を出した。
車で30分くらいはなれた場所にある公園。日向は、ここでときどきジョギングをする。
もちろん、健康のためでもダイエットのためでもない。
この公園は、南側は大きな通りに面しており、人も車もかなり行き来するが、反対側は、ほとんど人も車も通らない。そこに路上駐車して、この公園をぐるっとジョギングをしている人がけっこういる。
ただ、それも夕方の時間までで、さすがに夜の10時を過ぎると、走っている人は少ない。
スウェットの下にパーカーだけ、もちろん、下着はつけていない。
日向お気に入りのパーカーは、丈が長く、お尻まで十分隠れるのだが、夜に、素足を晒して走るのは危険だと自分でもそう思って、スウェットをはいて出てきた。
(人が・・・いなくてもつまらないけど・・・・)
日向は、公園内の外周遊歩道を、軽く走り始めた。
走るのが好きではないし、体力もあるほうではないが、ときどき、こうやって外で露出を楽しんでいるうちに、けっこう走れるようになっていた。
1周すれば、500mくらいにはなる、公園の外周遊歩道を、とりあえず、一周、あたりを見ながら、日向は走った。
(やだ、走ってる人がいる)
少ないとはいえ、この時間は、40代後半から50代の男性とたまに出くわす。走っている人もあれば、一生懸命歩いている人もいる。仕事で遅いのか、家に居づらいのか、明るいうちは恥かしいのか、それはわからないが、こんな時間に出会うのは、きまって、おじさんだ。
すれ違った。
こういう人達に共通しているのは、顔を合わさないということだ。なぜか、この時間帯のおじさんたちは、視線を合わそうとはしない。もちろん、あいさつをかわすこともない。彼らは、黙々と走っている、あるいは、歩いている。日向には、それがありがたかった。
親しくなるなんてもっての他だった。そんなことをしたら、二度と来られない。
日向は、半分くらい回ったところで、少し、ペースを落として、ほとんどウォーキングペースになった。
耳を澄ませて、後ろから来る足音を聞く。さらにペースを落とす。
(誰も来ていない。どうやら、さっきのおじさんだけだ・・・)
もう少し行けば、ベンチがある。
(誰か・・・・いるかな?)
酔っ払って座っている人。あるいは、たまに若いアベック、もっともっと若いアベックがいたりするのだが、今日は誰もいなかった。
一周してきた日向は、ちょっと大胆になっていた。
(・・・・誰もいない・・・反対に回れば、さっきのおじさんにも会わない・・・・うん)
日向は、植え込みの影で、スウェットを脱いで、そこに置いた。お尻に直接風が当たる。こころもち、パーカーの裾を下に引っ張り、フードをかぶって、来た道を反対方向に向って走り出した。
「ふーっふーっ・・・」
思ったとおり、誰にも会わない。ただ、日向は、すぐに息苦しくなった。走るたびに、お尻の肉が揺れてパーカーの裾は、すぐに持ち上がった。
(お尻が出てる・・・・)
そう思った瞬間に、日向はいっきに息苦しくなったのだ。
すでに1周走って、乳首もパーカーでこすれて、微妙な痛みを伴っていた。
とうとう、日向は、走るのをやめて歩き出した。
ザッザッと後ろから足音が近づいてくる。
(さっきのおじさんだわ)
日向は、とっさにパーカーの裾を引っ張った。
夜でも、公園内は、結構明るく、日向の白い足は目立った。
どんどん、足音が大きくなってきた。
「はぁ・・はぁ・・・はぁ・・・」
息づかいまで聞こえたが・・・・・遠ざかっていく
(えっ・・・)
日向は、振り返った。
誰もいなかった。
どうやら、日向に追いつく直前で男は道を変えたようだった。確かに公園の外に出るわき道が、そこにはあった。
(やだ・・わたし、ひとりで勝手に緊張して・・・・)
少し、呼吸が楽になったので、日向はまた走り始めた。お尻の揺れが気持ちよかった。
もう、息切れすることはなかったが、太ももの辺りに垂れてくる雫が夜の空気に冷やされて、冷たかった。
ようやく、さっきスウェットを脱いだところまで帰ってきた日向は、植え込みの中に入って、スニーカーを脱いで、スウェットに足を通しながら、あたりに気を配った。
(誰も・・・・いない・・・)
条件反射というべきか、初めてここを走った日、日向は、この場所でおしっこをした。それ以来、ここを通るとおしっこがしたくなる。スウェットを穿こうと腰をかがめ、お尻が大きく露出したせいか、尿意は急速に高まった。
日向は、もう一度、辺りを見回した・・・誰もいない。
(だいじょうぶ、しちゃお)
日向は、穿いたばかりのスウェットをおろし、茂みの陰でしゃがんだ。
(うーふっ・・・)
日向が感じたのは、尿意から解放された安堵感だけではない。もっと、別のものがお腹の下の方でうずいた。
(・・・・・いい・・・・・)
日向は、久しぶりの昂ぶりに我を忘れた。
(これ・・・・いい・・・・)
背後の茂みで音がしたことに気づかなかった。