スポンサーサイト
新しい記事を書く事で広告が消せます。
抑えきれない女(2)
作:慶輔
2
「面白いですね、この映画」
顔を寄せ、唐突に女が囁く。
「え、ええ、そ、そうですね。へへ、えへへ、このアニメ、だ、大好きなんですよ」
男は、真っ直ぐにスクリーンを見つめたまま言葉を返した。
「…………」
さやかの眉間に数本の皺がつくられていく。
(どうして……どうして、こんな男に欲情しているんだろ、わたし)
かたく瞳を閉じ、顔を伏せながら、懸命に理性を呼び戻そうと試みる。だが、心が無になったのは一瞬だけで、すぐに淫らな情欲が心を支配した。
「ひえっ!?」
突然、男が奇声を発しながら肩を弾ませた。
半袖のブラウスから華麗に伸びていた腕がいつのまにか男の腕に触れ、その滑らかな手がしっかりと手を握り締めてきたのだ。男の顔は、まるで幽霊でも見たかのように大きく崩れて強張った。
さやかが薄っすらと眼を開け、握り締めた男の手を自分のほうに引きながら背を倒していく。その手を太ももの上に置き、もう片方の手も添えながら両手で優しく握り締める。男の動揺ぶりは、荒い息遣いと身体の震えで瞭然だった。
(ああ……私のこと、頭のおかしな女だと思っているでしょうね……きっと)
そう思いつつも、歪んだ性欲がさらに大胆な行為を誘発させていく。さやかの思考は完全に制御不可能となり、あとは、ムラムラとした燃え疼く感情のまま痴女と化していった。
「あ、あの!」
柔らかな女の肌に、男が戸惑いながら声を出した。
「静かに……」
さやかが、あやすように小声で言う。
男は言葉を失い、ギュウッと口を摘むいで鼻から大きく息を吐いた。
誰もいない最後列の端で、誰もが羨むような美女に突然手を握られながら愉快なアニメ映画を前にする男―--
男は性交の未体験者だった。
中学の体育祭以来、女性とは手すら繋いだことがなかった。
激しい鼻息がさやかの鼓膜に張り付いてくる。次第にそれは口からも漏れ出し、呼吸困難にでも陥ったか、そう思わずにはいられぬほど激しさを増していく。しかし、そんな男の興奮がさらにさやかの淫情を昂ぶらせていくのだ。
さやかは、男の指に自身の指を悩ましく絡めた。そして、大胆にも握り締めた手をスーッと胸元まで引っ張り上げ、ブラウスの薄生地を豊かに盛り上げている膨らみにグッと押し付けた。
「ふぁ!」
未知の感触に、男の声が震えた。
さやかが、胸に押し付けた手の甲をグリグリと強く乳房に擦り付ける。さやかの呼吸も荒くなっていた。微かに開いた唇から、色っぽい吐息が切なげに漏れてくる。さやかは、男の左手を胸に当てながら、身体を寄せてもう片方の腕も掴みとった。
「あっ……な、な、なにを?」
必然的に男の上体がよじれ、さやかのほうにのめる。淫靡な恐怖にかられてはいるが、抗う気持ちはまるでないようだ。さやかは、その右手を引っ張りながら自分の膝の上に乗せた。
スカートの裾を少しだけ捲くり、剥き出しの太ももに男の手のひらをピタッと張り付かせる。男の手は、気持ち悪いほどに脂汗を滲ませていた。それでもかまわずに、ズリ、ズリ、と張り付いた手を股間のほうへずらし上げていく。透けるように白い肌は、正直に鳥肌をたてていた。
(ああ、わたし……汚い……厭らしい……変態……淫乱……)
心の中で自分を罵りながらも、汚れていく肉体に秘芯が熱く疼いて止まない。さやかは、男の体勢に無理が生じると、自ら身体を横にして腰を前へ突き出した。
濃い毛を生やした手の甲が、ゆったりとしたスピードでスカートの中へ消えていく。優美な太ももに立ち込めている鳥肌は、全身にまで広がっていった。
スッと脚を開き、スカートの中にある手をさらに上へと這わせていく。指先が無造作に股間の膨らみに触れた。
「あんっ……」
軽く触れただけだというのに、秘所から繰り出されてきた快楽の電流はとてつもなく激烈なものだった。
さやかが白い咽をのけぞらせ、細い顎をめいっぱい突き上げる。
男の手首を掴んでいるさやかの手が、さらなる刺激を求めて蠢いた。
股間の真ん中に男の手を誘導し、それをゆっくりと上下に動かしてみせる。男の指がピクピクと痙攣した。それから間もなくして、その指は自らの意思で動き出してきた。
「んっ……んふっ」
女の性器をどう扱っていいのか分からず、男はただ感情任せにそこを揉んだ。はじめて体感する女性の感触に、理性など簡単に吹っ飛んでいた。
体を女のほうに向け、乳房に押し当てられている手も自らの意思でグリグリと擦りたて、女性器の膨らみを知った手はせわしく下手なマッサージを繰り返していく。男は、このとき初めて女の顔をマジマジと見た。
「う、美しい……」
おもわず呟き、ダラーッと顔面筋を弛緩させていく。膨らみを揉む手にも力が入り、そこから伝わってくる感覚に男は狂気した。
男が大きな頭をずいぶんと近くまで寄せ、フゥ、フゥ、と荒い息をさやかに振り撒く。がさつで幼稚な愛撫だが、さやかの肉体はひどく悶えた。
(あ、ああ……か、感じる……ひ、ひどく感じるわ……)
一揉みごとに快美な電流が脳にまで突き抜け、美脚が自然と開いていく。パンティはすでにビショビショだった。それは、確実に男の手も分かっているはずだった。
「あ、あなたの身体、ずいぶんいい匂いがしますね……」
男がユラユラと胸元へ顔を寄せてくる。
「だ、駄目よ」
さやかは左手でそっと男の顔を制止した。
「わ、わたし、女性との経験ってまったくないもんですから……ど、どうしたらいいんでしょう?」
「んっ……ちょっと待って……」
さやかの手が、ブラウスの上からブラホックをはずす。窮屈なブラカップから開放された乳房が、胸元を少し膨らませながら悩ましく揺れた。いつしか互いの身体は向き合った格好となっており、男はあいかわらずパンティ越しに秘所をモミモミしている。さやかは、男の空いているほうの手を掴むと、それを下からブラウスの中にいれて直に豊乳へと触れさせた。
「いいわよ。あなたの好きなように弄って」
汗ばんだ男の手のひらが、ピタッと乳房の丸みを掴み取る。柔らかで心地よい弾力は、強力な麻薬となって男の神経を蝕んだ。