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続・亜希の反抗1-4
4.記憶
「そこに立って、そのロープをつかんで…」
花村がさっそく指示を出す。
部屋の中央に30cmくらいの台が置かれ、そこに天井から一本、手を伸ばせば届くくらいの高さまで太いロープが降りていた。
千春は、台にあがって手を伸ばしてロープをつかんだ。
「もう少し、背伸びするくらいで…」
千春はさらに手を伸ばし、ロープに上の部分をつかむ。
ふくよかだった千春の体が、ぴんと張った。
ふくらみはやや損なわれたが、垂れ気味だった乳房が上を向き、お腹がへこんで陰影がしっかり刻まれた。
皆が思い思いの位置に場所を決めていく中で、ひとり亜希だけが立ち尽くしていた。
亜希の視線は、千春のお腹に向いたまま動かない。
見たことのある光景。
亜希の目は、10年前の自分に向けられていた。
あの時…。
唇を強く吸われ、乳房をぎゅっとわしづかみにされた。
(声を上げないように、必死に我慢したわ)
指で乳首を挟まれて、引っ張られて声をあげた。
(痛かったっていうより、怖かったの)
何度も乳首を引っ張られ、その後、脇の下に指を立てられた。
(あれはびっくりしたの、そんなの初めてだったから)
突き刺すように立てた指をそのまま脇腹まで下ろされた。
(それは、我慢したでしょ)
今度は、指をおへそに突き立てられた。
(あれは、本当に痛かったけど、必死で耐えたのよ)
とうとうこらえきれなくなって、声を出した。
(ごめんなさい。痛かったの)
わたしが声を上げると、あなたはすぐに指を引いた。
(痛いって言わせたかったの?)
でも、溜めていた息を吐いた瞬間、すぐに指を差し込まれた。
(ひどいわ。不意打ちなんて…)
「はぁーっ」
亜希は、あの時と同じように強く息を吐いてしまった自分に驚いて、思わず周りに目をやった。
(よかった、誰も見てない)
亜希は、もう一度千春を見た。
千春と目があった。
亜希は、あの日の自分に微笑んだ。
場所取りが遅れた亜希は、千春の斜め後ろに回った。
見ることのできない自分の背中、お尻。
それを見てみたいと思った。
「先生、これ、ちょっときついです」
普通、絵のモデルは20分で休憩を入れるのだが、この姿勢を20分はきつい。
千春は10分がんばったが、もう無理だ。
「じゃぁ、ちょっと休んで」
「ふーっ」
千春はその場にしゃがみこんだ。
台の上で足を左右に開き、お尻をぺったりとつけて座る、女の子がよくする座り方。
ふくよかな千春のお尻が、扁平につぶれていた。
縦に引かれていたさっきまでのシルエットとは対照的だ。
亜希は、座った千春を描きはじめた。