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仁美の彷徨2-3
「もう、落ち着いた?」
「ごめんなさい。だいじょうぶです。」
祐二は、結局、由香里の選んだものを全て買って、来ていたボディスーツのまま仁美に上着を着させ、店を出た。
その間、仁美はうつむいたままほとんど何もしゃべらなかった。
近くの喫茶店に入り、祐二は、仁美が回復するのを待って、ようやく声をかけたのだ。
「俺が悪かった。何も言わないで、いきなりだったからね。」
「…恐かったです。最初。置き去りにされたって思って…レイプされるって本気で思いました。ずっと、いてくれてたんですよね。」
「ああ、いたよ。」
「祐二さん。祐二さんがしたいこと、何でもします。でも、ぜったい、近くにいて下さいね。置き去りにはしないでくださいね」
「しないよ。俺は絶対にそばにいるから。離れないから…」
「はい」
落ち着きを取り戻した仁美は、周りの視線が自分に注がれていることにようやく気がついた。
仁美は、今日は、淡いピンクのグラウスに後ろにスリットのはいった白のタイトスカートという格好だったのだが、透けて見えるので、下着は、ベージュのブラとTバックショーツで来ていた。
しかし、今、下着は黒の股間と乳房が大きく開いたボディスーツに変っている。
ブラウス越しに乳房がくり抜かれたボディスーツが丸見えだ。
目を凝らせば、乳首の位置どころか、乳首そのものさえ確認できるほどだった。
「あのぅ…祐二さん、…ここ出ませんか?わたし、この格好…恥ずかしい」
「そうだね。ちょっと、待って…」
祐二は、そう言うと、携帯を取り出し、電話する為に席を立った。
祐二がいなくなると、周りの視線は、さらに露骨に仁美に注がれる。
(祐二さん、はやく帰ってきて…ああ、みんなに見られてる。)
仁美は、素っ裸で見ず知らずの人の中に置き去りにされているような錯覚を覚えた。
(置き去りにしないって言ったのに。…早く帰ってきて…祐二さん)
ようやく、祐二が、帰ってきた。
「ごめん。じゃぁ、出よう」
そう言って、祐二は仁美の手をとった。
仁美が立ち上がると、店中、全ての視線が仁美に集まった。
(ああ。…見られてる。…見られてるわ…お尻…出てるわ、きっと)
スカートの後ろのスリットは深く、仁美が歩くと、むき出しのお尻が少しのぞいた。
外に出ても、状況は変わりはしないが、既に日が落ちてだいぶたっているので、それほど目立たない。仁美は少し安心できた。
それでも仁美は、祐二の腕を取り、上体を祐二の方に向けながら歩いた。
仁美が連れて行かれたのは、ホテルではなくマンションだった。
外観はごく普通のマンションだったが、部屋に入って仁美は驚いた。
「ここって…」
「もともとは2DKだったところをワンルームに改装したんだ」
確かに広いワンルームではあったが、仁美が驚いたのは広さではない。
そこは、どう見てもラブホテルだった。
バスルームは広く、壁はなく透明なガラスである。
そのバスルームの隣りにトイレがあったが、トイレの扉にも透明なガラスが入っている。
「ホテルがよかったか?」
唖然としている仁美に祐二が話しかけた。
「いえ、ここも十分、ラブホみたい…です」
素直に感想を言ったが、いくらラブホでも、トイレの扉に透明なガラスは入っていない。
「祐二さんが借りてるんですか?ここ…」
「いや。借りてるんじゃなくて、オーナーなんだ」
「オーナー?」
「いくつかマンションを持っててね。…バブルのときに買わされたんだけどね。管理は、うちの会社でやっている。この部屋は、前の人が出て行ったんでリフォームしたばかりだ」
そう言えば、どことなく新しい建材の匂いがする。
「家具もついているんですね」
家具だけではない。テレビもエアコンも洗濯機も乾燥機も冷蔵庫も、ほぼ全て揃っている。
「ああ。こうしないと借り手がつかないんでね」
このあたりは、繁華街に近い。
きっと、特殊な人たちが相手なんだろうと思い、仁美はそれ以上は聞かなかった。
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