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理沙の慟哭2-3
3.私も飲んだ
「どうしたの?理沙」
朝、千春が、仕事に出ようとしたところに、理沙がやって来た。
「千春さん、ごめん、急に」
理沙はそう言うと、申し訳なさそうに入ってきた。
「どうしたの?」
「お父さんがね…捕まったみたい」
理沙は、唐突に話し出した。
「捕まった?いつ?」
理沙の父、孝之が、未成年者の略取・誘拐で逮捕されたのだ。
「警察の人がいっぱい来て、部屋中のものを持ってった」
「理沙、ずっとそこにいたの?」
理沙はうなずいた。
「そう?怖かった?」
理沙は、首を振っただけでそれ以上何も言わない。
理沙は、口数が少ない。
不器用で、無愛想で、可愛げがない。
いつも精一杯、意地を張ってだいじょうぶだと言うが、誰が見ても、だいじょうぶでないことが多い。
一生懸命、人を自分から遠ざけようとしているのだ。
「で、お母さんは?」
「しばらく帰ってこないって」
「そう」
「入って」
千春は、理沙を部屋に入れた。
「理沙、学校どうするの?」
「休む」
父親が逮捕されたのだ。
無理に学校に行くこともない。
とりあえず千春は、理沙を部屋に入れて仕事に出た。
帰ってみると、理沙は寝ていた。
千春は、寝ている理沙の前のテーブルを片付けて理沙の横に布団を敷いた。
「理沙」
「うん?」
寝ぼけた顔で、理沙が頭をあげた。
「お布団で寝よう」
千春は、子供に話しかけるように言う。
「うん」
「服脱いで」
「うん」
千春は、返事をしただけで、すぐにまた、横になろうとする理沙の服を脱がしてやる。
服を脱がされながら、理沙は、少し意識がはっきりしてきた。
「ああ…千春、おかえり」
「ただいま」
「何時?」
「1時半かな」
「ふーん。今、帰ってきたの?遅かったね」
「うん。ちょっと、撮影の後、誘われて飲んでたから」
「そう。私も飲んだ」
「わかってるわよ」
テーブルの上に、缶チューハイの缶があった。
「ごめん」
「いいわよ。電気消すわよ」
「うん」
千春は、横になって丸まっている理沙を背中から抱きかかえるようにくっついて寝た。
理沙は、こうされるのが好きだ
千春も、それを知っている。