スポンサーサイト
新しい記事を書く事で広告が消せます。
続・亜希の反抗3-1
1. 屈服
「今日から拳人の送り迎えは、武沢がする」
朝、誠は一方的に亜希にそう伝えた。
武沢は、運転手として篠原の家に来ている男だ。
ただし、誠が雇っているわけではない。
後援会のお抱えということになってはいるが、実際は、誠の後援の会長を務める西村建設からの出向だ。
「武沢の代わりに朝と夕方は、お前が運転しろ。いいな」
亜希はただ黙って聞いていた。
「8時に事務所に寄ってから、西村会長のところに行く。西村建設の本社だ。場所はわかるな?」
「はい」
命じてからもずっと亜希のほうを見ている誠に対して、亜希はようやく返事をした。
「ちょっと待て」
着替えと仕度のために亜希が、食卓の席を立つのを誠が制した。
誠が自分の部屋から何かを持ってきた。
「それを穿け」
ストッキングのようだが…
亜希は、それを手にとって見た。
(ああ、やっぱり…)
それは、股間部分が大きく開いていた。
「直にそれを穿け、パンティーはなしだ。いいな」
「そんな…」
「姉のところには子どもがいないんだ」
誠が何を言いたいのか亜希にはすぐにわかった。
「だめよ」
「お前がどうこう言う問題じゃないだろ」
「そんな…お願い、やめて」
誠の姉夫婦には確かに子どもがいないが、それは、お互いに同性愛者だからだ。
そんな家庭に息子を預けられたのではたまらい。
「パンティーはなしだ。いいな」
誠はただ、要求を繰り返した。
亜希が、渡されたストッキングを握って自分の部屋に向かうと、
「仕事なんだから、スーツにしてくれよ」
誠が亜希の背中にさらに声をかけた。
(スーツ…)
何着かスーツも持ってはいるが、拳人が生まれてからは、公の場に顔を出すこともなくなったため、たいていは若いときに作ったものだ。
体型は変わってないので着られることは着られるが、どのスーツも短いタイトスカートだ。
一番長いスカートのものを選んだが、パンティーを穿いていない亜希の不安はぬぐえない。
一歩一歩、歩くたびにずりあがる裾が気になった。
「遅いぞ」
居間から誠の声がする。
仕方がない。
亜希は、その格好で部屋を出た。
秘書の大垣と誠を後ろに乗せて、亜希が運転した。
大垣の携帯がひっきりなしに鳴る。
「先生」
電話を切った大垣が誠に話しかけた。
「何だ?」
「成沢先生の予定が早まって、10時にこちらに着くそうです」
「10時か。西村会長のところに顔を出してる時間はないな」
「会長のところには、わたしと奥様で行きますから、先生は、成沢先生を迎えてください」
「そうだな」
「亜希、事務所じゃなく駅に行ってくれ」
駅で誠を降ろすと、今度は大垣の運転で西村建設に向った。
「議員から聞きました」
突然、大垣が話しかけてきた。
「お子さん、議員の子どもじゃなかったんですね。奥さんもけっこう大胆なことをしますね」
亜希には答えようがない。
「西村会長は、大事なスポンサーですから…」
大垣は一方的に話す。
「スポンサーなんてもんじゃなくて、西村会長に丸々抱えてもらってるようなもんですからねぇ」
(わたしを差し出す気?)
「離婚なさるんでしょ」
(そんなことまで…)
「西村会長は、顔が広いから、仕事なんかも紹介してくれるかもしれないですよ」
大垣は丁寧な口調だが目にはいやらしさがにじみ出ていた。
「もしかしたら、雇ってくれるかもしれないですね。英語、話せるんでしょ。元英語教師ですものね」
大垣のしゃべり方は、いちいち亜希の気に障った。
「ああ、そうだ。奥さんは年下じゃないとだめなんでしたっけ?」
(えっ?)
大垣の思いがけない言葉に亜希はたじろいだ。
「今でもやっぱり少年がいいんですか?」
「何をおっしゃってるの?」
とうとう聞き逃せずに亜希は問い返した。
「いえ、別に意味はないです。高校の先生ってところからの下司な連想で、年下の少年がかわいくていいのかなって思っただけですよ」
何もかも知っているぞといわんばかりの話し方だ。
「会長は、空手の有段者でね。若い頃はけっこうやんちゃだったそうですよ」
大垣は、わざと語尾に“よ”をつけた。
亜希の表情にますます不安の影がさした。
(図星か…)
亜希の子どもが篠塚の子どもではないことを知って大垣は、勝手に結婚当時の亜希の情報を集めた。
自信はなかったが、亜希の反応を見る限り、どうやら間違ってはいないようだ。
大垣は畳みかける。
「だいじょうぶですよ。議員には何も言ってません」
「何のこと?」
亜希は気丈に聞き返す。
「さぁ?」
大垣はとぼけた。
名前を言ったところで亜希がそれを認めるはずもない。
知ってるぞという脅しで十分。
大垣は、左手を亜希の太ももの上に乗せた。
「議員に、子どもの本当の父親を探せって言われましてね、いろいろ当たったんですよ」
大垣の手が、スカートの中に入る。
「今のところ、わからなかったということにしてありますけどね。議員は執念深いんでね…。離婚して、その彼と再婚なさるつもりですか?」
大垣の指が、ぴたっと閉じた亜希の太ももをこじあける。
「すぐには再婚しないほうがいいですよ。議員は絶対に妨害しますから…」
大垣の指が亜希の股間に侵入した。
「足を開いてもらえますか?」
亜希は、足を開いて大垣の指を受け入れた。