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沙希の悪戯1-2
2.夏目沙希
「で、どうだった?」
沙希は、物憂そうに愛美に訊いた。
「…がさ、あいつ、初めてだったのよ、たぶん」
「うそ?まじ?」
「本人はそうは言わないけど、ありゃ、どうみても初めてよ」
「5秒でいっちゃったとか?」
「そこまでじゃないけど…、キスとかは、まぁ普通だったんだけど、舐めてあげたわけよ」
「愛美から?」
「まぁ、なんていうか、そんな流れだったから…、そしたら、急に、なんかそわそわし始めて…」
「まさか、そこでいっちゃったとか?」
「そんな感じ、二、三回、じゅぼじゅぼってしてやったら、なんか慌てだして、あそこに指入れるわ、それをぐりぐり動かすわ。こっちは、まだだから、痛くて…」
「で、どうしたの?」
「痛いって言ったら、急に弱気になっちゃって、ちっちゃくなってくのよ」
「坊やじゃん」
「そっ、それ。あいつ、もっとあせっちゃって…。昨日、寝てないからとかって言い訳始めて…。わたしおかしくて…」
「まさか、笑った?」
「まさか。そこはぐっとこらえて、もう一回、優しく口にいれてあげたの」
「お姉さんじゃん」
「でしょ。そしたら、まぁ、すぐにまた大きくなったんだけど、そこであえなくフィニッシュ」
「口の中?」
「そう、ひどくない?何も言わずに急にどびゅっだよ」
「完全にお姉さんになっちゃったね」
「そうなのよ。しょうがないから、飲んでやって、もう一回舐めて」
「戻った?」
「早い、早い。しぼむ前にまたぐんと伸びて…」
「やったの?」
「ん、でも、怖いから、最初からゴムつけさせて…、それでも五、六分かな」
「早っ」
「もう、童貞なら童貞らしく、もっとしおらしくしてろってのよ」
「よね。男子って、たいがい見栄はるわよね」
「すぐばれるのにね」
「で、これからどうするの、彼?」
「ん?続けるわ」
「いいの?きっと言いふらしてるわよ。“俺、昨日、愛美とやったんだけどよ…”なんて…」
「言いふらしてるね、きっと」
「えらそうに、あることないこといっぱいくっつけて…今頃、“愛美なんかよぉ…”とかって語ってるよ、きっと…」
「たぶんね。でもさ、それって墓穴よね。だって、わたしが本当のこと言ったら、立場ないじゃん」
「それって、超、恥ずかしくない?」
「恥、恥。…ってことは、もしかしたら、あいつ、わたしの言いなりじゃん?」
「うふ、愛美屋、お主も悪党よなぁ」
「いえいえ、おでぇーかん様あっての愛美屋でございます」
「ははは」
ふたりして顔を見合わせて笑った。
「悪い、愛美、わたしちょっと買い物してくから、先に帰って…」
「わかった。沙希、明日、英語、追試だからね」
愛美に念を押された。
「わかってる。もう、あのばばぁ、なにかってとテストテストって…」
「48歳、独身。あー、やだやだ」
二人とも定期考査の成績が悪く、明日、追試が課せられていた。
「じゃぁね」
交差点を右に曲がった沙希の歩く速度が急に遅くなった。
別に買い物などない。
(あーあ…)
沙希は、ため息をついた。
今の会話は、沙希には少し辛かった。
夏目沙希。
中レベルの公立高校に通う女子高生。
愛美とは、中学からのつきあいだ。
早熟だった沙希は、仲間の中では誰よりもいろんな体験が早かった。
誰よりも早くキスもした。
フェラもした。
でも、まだバージンだ。
中2のとき、直前まではいった。
つきあっていた同級生の男の子が急に転校することになって、引っ越す前の日に彼と会った。
沙希も彼もそのつもりだったのだが、二人とも初めて…。
結局、うまくいかなかった。
(あのとき、“できなかった”って言えばよかった…)
何度も繰り返す後悔。
周りは、沙希に“体験済”の印を押したが、沙希はそれを否定しなかった。
“した”とは言わなかったが、“してない”とも言わなかった。
その後、何人かとつきあった。
バイト先で知り合った大学生。
友達には、求められる話題を提供したが、全部嘘だ。
そんな関係にはならなかった。
(あんな嘘、つかなければよかった)
これまた、何度も繰り返す後悔。
沙希には、密かに思っている男子がいる。
同じクラスの松下拓也。
ただ、今さら、同じ学校の男子とはつきあえない。
自分がバージンだと言うことがばれる。
ついさっき、沙希は、愛美の彼を笑ったが、笑える立場ではなかった。
「ケーキでも買って帰ろう」
沙希は、バイト先のケーキ屋に向かった。