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ラバーズ/知美の恋人
ラバーズ/知美の恋人
わたしの名前は、桑田知美。
15歳、高校受験を控えた中学3年生だ。
わたしは、13歳年上の男と付き合っている。
彼は、わたしが通っている塾の先生。
名前は武田辰夫
辰夫は、国語の講師だったが、それまでの先生とは全く質が違った。
国語なのに、黒板に左から横書きする。
どうして横に書くのか聞いたことがある。
「ノートは、横書きだろ」
それが返事だった。
他の国語の先生は、ノートを縦に使うと言うと
「縦書きは、手が汚れるし、前の行が手で隠れて読めないだろ」
右から縦書きしていくと、どうしても今書いた字の上に手を乗せてしまう。
それに作文のときなど、前の文を読み返すのにわざわざ手をどけないといけない。
なるほど、その通りだ。
辰夫は、とにかくよくしゃべって、よく書いた。
説明しながら書く。
生徒は、聞きながら、写さなければいけない。
説明に聞き入っている生徒や、やたらていねいにノートをとる生徒は間に合わない。
授業の中盤になって、辰夫が次の説明に入り、黒板を消し始めると、「先生、待って」っていう声がよくあがった。
そういうとき、辰夫は、遅れた生徒がノートを取る間、また別の話を始める。
ときに政治の話だったり、アニメの話だったり、スポーツの話だったり…。
ノートをとり終わった生徒への時間つなぎなのだが、ノートを取ってる生徒も聞き入るので、結局、また、「先生、待って」の声がかかった。
その辰夫が突然塾をやめると言い出した。
このまま、気持ちを伝えないで別れるなんてできない。
知美は強引に辰夫のアパートをたずねた。
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