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知美の恋人2-3
3.お願い、いって…
佳美は、ボディソープを手につけて辰夫の右足を両手でこすった。
張り詰めた筋肉。
その感触を確かめながら、佳美の手は、太ももの付け根から足首まで降りていく。
右足が終わると、そのままの位置で前に寄って、奥の左足に両手を伸ばした。
自分の太ももで辰夫の右足を挟む。
乳房が右足に触れた。
足を洗い終え、佳美は、再び辰夫のペニスを握った。
こんどはぎゅっと強く…。
佳美が力を緩めると、ドクンと血液がそこに流れ込み、ぐっと体積が増す。
足にしたのと同じように両手で挟み、ごしごしと前後にこする。
一回りも年上の不倫バツイチの元人妻。
愛されるなんて思っていない。
セックス相手でいい。
そのほうが傷つかなくて済む。
佳美は立ち上がり、辰夫の背中から抱きついて胸を洗う。
分厚く盛り上がっているわけではないが、固く引き締まった胸板。
辰夫の胸を洗いながら、佳美の乳房が、辰夫の背中を這う。
後ろから辰夫のお尻を抱え込むようにして、またペニスを握る。
自分の下腹部を辰夫のお尻にぴったりとつけて、下腹部で辰夫のお尻を洗う。
まるで商売女だと思った。
覚悟を決めて始めたことだが、思った以上に辛い。
佳美の手が止った。
「佳美さん」
「何?」
佳美の声が上ずった。
「手を洗いたいんだけど…」
「ああ、ごめんなさい」
佳美はボディソープを手に垂らし、辰夫の前に回って辰夫の手を取った。
大きな手のひら。
辰夫の太い指の間に自分の細い指を入れて念入りに洗った。
洗い終わった泡だらけの辰夫の手が佳美の乳房に伸びた。
辰夫は、佳美の脇の下の方から、下に流れている肉を乳房のほうに押し上げる。
痛いほどの強い力。
数回それを繰り返すと、佳美の身体をくるりと回して、後ろを向かせた。
後ろからぎゅっと抱きしめられる。
佳美の乳房がすっぽりと辰夫の手のひらに覆われた。
辰夫の重みを少しだけ感じる。
心地よい重みだ。
佳美は手を後ろに回し、辰夫のペニスを握った。
男がそれを喜ぶことを知っている自分が哀しい。
辰夫の身体が下にさがり、佳美は辰夫のペニスから手を離した。
辰夫は、佳美がしたのと同じように佳美の足を洗った。
ただ向きが逆だ。
上から下に洗った佳美とは逆に下から上へと洗っていく。
太ももの肉がお尻に上がっていく。
辰夫の手がそこで止った。
ゆっくりと辰夫の手が佳美の股の付け根を前後し始める。
辰夫の親指がお尻の割れ目に沿って遡り、人差し指の横の部分が襞を分けて佳美の花蕾まで伸びてくる。
「あぁっ」
佳美は立ってられず、バスタブのへりに手をついた。
お尻が突き出される。
辰夫は相変わらず、ゆっくりと同じことを繰り返す。
辰夫の手が離れた。
辰夫は、先にシャワーで自分の身体の泡を流し、それから佳美の身体の泡を落とす。
(出るの?ここでするの?)
強く激しく犯されたかった。
佳美は、辰夫の前でしゃがみ、辰夫のものを口に含んだ。
ゆっくりと深く
奥まで入らない。
太すぎた。
途中で息を整えて辰夫のお尻を引き寄せるように喉の奥深く飲み込む。
苦しい。
苦しさが必要だった。
それが自分勝手な償い。
「はぁーっ」
佳美は大きく息を吸って吐いた。
もう一度
もう一度
苦しくて涙が頬を流れ落ちる。
よだれが、あごからしたたり落ちる。
ひどい顔にちがいない。
辰夫に立たされてバスルームから押し出された。
さらに押されて佳美は扉の先の壁に手をついた。
すぐ左に玄関。
お尻を後ろに引かれた。
佳美は、壁に手をついてお尻を後ろに突き出した
辰夫のものが佳美の中に入った。
「あああぁぁぁ」
玄関先の廊下。
ここでいい。
不倫を続けて、家庭を壊した女。
愛を語られるより、犯されるほうが気が楽だ。
「あああぁぁぁ」
初めて体験する圧迫感。
佳美はわずかしか耐えられない。
佳美の膝から力が抜けた。
「あああぁぁぁ」
佳美は床に崩れ落ちた。
「ごめんなさい」
立とうとする佳美を辰夫はまた抱き上げてベッドに運んだ。
ぐいと足を広げられ、すぐにまた、辰夫のものが入ってきた。
奥いっぱいのところで止る。
「ああぁぁ」
そこからさらに奥に入ってくる。
佳美の腰が浮いていく。
「ああぁぁ」
痛いのかもしれなかったがはっきりとはわからない。
ゆっくり押しあがってくる圧迫感
それがすっとなくなる喪失感
「ああぁぁ、いく…いく…」
もうとっくに達している。
達した上にさらにどこかにいってしまいそうだ。
引くことなく、連続して押し寄せてくるる。
「あああああぁぁ」
佳美は何度目かの絶叫の後、身体がけいれんして硬直した。
「ごめんなさい」
身体をくの字にまげて丸まっていた佳美がようやく辰夫のほうに向き直った。
「コーヒー飲むか?」
起き上がろうとする辰夫の上に佳美が乗った。
「ちょっと待って…」
佳美は、辰夫を仰向けに寝かせ、だらんと横になった辰夫のペニスを握った。
白くまだらに残っているのは自分の体液。
もう、すっかり乾燥している。
佳美は、辰夫のペニスの根元を強く握って立たせ、それを口に含んだ。
手でしごきながら、強く吸い上げる。
不意に辰夫に足を握られた。
「お尻をこっちに…」
佳美は、言われたまま、辰夫の頭のほうにお尻を向けて、辰夫の身体の上に馬乗りになった。
辰夫は佳美のお尻の肉をぎゅっとつかんで左右に押し広げる。
見られている。
恥ずかしいところをただ、見られている。
辰夫にぐいと強く引き上げられた。
股間が辰夫の顔の上だ。
「あっ、ぁぁ」
辰夫の舌が佳美の花蕾をとらえた。
(だめ、辰夫さん…)
佳美の口が辰夫のものから離れる。
佳美は、もうわずかな刺激にも耐えられない。
だが、また自分だけいくわけにはいかない。
佳美は、辰夫のものを強くしごきながら先端に自分の顔をこすりつけた。
(お願い、いって)
今度は、辰夫の舌が佳美から離れた。
佳美は、もう一度辰夫のものを咥える。
どくっ
辰夫のものが強く脈打ったが、まだ、出てこない。
辰夫の足の筋肉がきゅっと引き締まった。
佳美は、辰夫のものを両手で握り、強く吸いながら口でしごく。
何度も何度も
どくっ、どくっ
佳美の口の中に辰夫の精液が放出された。
知美の恋人2-4
4.また、描いてくれない?
ごくっ
佳美は、口の中に溜めた辰夫の精液を飲み込んだ。
佳美の口の中で、辰夫のものは徐々に張りを失って少し柔らかくなったが、小さくはならない。
若さとはこういうことだ。
先端からにじみ出るものを佳美は、じっくり舐め取った。
「シャワー浴びてくる」
佳美は、普段からそれほど濃い化粧はしていないが、今はきっとひどい顔に違いない。
佳美はバスルームに向った。
しばらくしてまたバスルームのドアが開いた。
「これ、タオル」
辰夫はそう言って、タオルを置いてドアを閉めた。
新しいタオルと…
たぶん、ラグビーのジャージ。
(これを着ろってこと?)
佳美は、それを着てみた。
辰夫が着ているものなのだろう、佳美にはだぶだぶだ。
肩は落ちて、手が出てこない。
裾は、ちょうどお尻が隠れるくらい。
(まぁ、いいか)
ブラはつけず、ショーツだけ穿いてバスルームを出た。
コーヒーの香りが漂っている。
辰夫は、それが部屋着なのだろう、濃紺のスウェットを着ていた。
「もらっていい?」
「どうぞ」
佳美はテーブルの上のコーヒーカップを手に取った。
裾が短いのでテーブルを挟んで辰夫の前には座りにくい。
佳美は、立ったままコーヒーをすすった。
辰夫がじっと見ている。
下から見上げられるのは恥ずかしい。
「見ないで、恥ずかしいから」
「佳美さん」
「なに?」
「怒らないで聞いて…」
「なに?」
「かわいいよ」
答えようがない。
嬉しい言葉だったが、一回りも年下の男にかわいいと言われて喜ぶわけにもいかない。
40歳に近いのだ。
「からかわないで…」
そう言って、視線をはずした。
「こっち見て」
いつのまにか辰夫がカメラを向けていた。
「やめて、辰夫さん」
「ちょっと上、後ろの窓を見て」
そう言われて、辰夫の後ろの窓に視線をやったとき、シャッター音が響いた。
「いやだ。辰夫さん。撮らないで」
「横向いて、キッチンのほう見て」
恥ずかしくてカメラは見られないが、辰夫は、カメラを見ろとは言わない。
佳美は言われるまま横を向いてキッチンのほうを見た。
また、シャッターが切られる。
「そのまま」
そう言って、今度は辰夫が移動する。
辰夫は、佳美の後ろに回ってシャッターを切った。
今度はまた元の位置に戻る。
「こっち向いて」
拒否できない真剣さが辰夫から漂って来た。
佳美は、言われたように辰夫のほうを向いた。
「両手をあげて上を見て」
佳美は天井に向って両手を伸ばし、上を向く。
シャッター音が響いた。
「佳美さん」
「なに?」
「自分のお尻見たことある?」
佳美は首を振った。
「佳美さんのお尻、きれいだよ」
「うそ」
「うそじゃないって」
辰夫は床にカメラを置き、立ち上がって佳美の横に並んだ。
辰夫は佳美の左右の手首をそれぞれ握って、上に持ちあげ、壁に押し付けた。
佳美は、かかとが浮くほど引っ張り上げられ、壁に貼り付けになった。
辰夫の唇が寄ってくる。
(こんなキス…)
男とセックスはするが、キスの記憶がない。
キスにときめいたのは、もうずっとずっと昔のこと。
若い辰夫の前で、自分も同じくらいの年齢だと錯覚する。
錯覚だとわかっているが、佳美はその気分に浸った。
長いキスの後、辰夫は、佳美のジャージをたくし上げた。
ブラはしていない。
辰夫の手のひらが、佳美の乳房をおおう。
とっくに辰夫は佳美の手を放しているのに、佳美は相変わらず手を上に伸ばしたまま、自ら壁に貼り付けになった。
辰夫の手が下がって、佳美のショーツにかかった。
佳美は、ジャージが下にさがらないように裾を持つ。
辰夫にショーツを下ろされた。
佳美は自ら足を上げて、ショーツを足から抜いた。
「壁に向いて…」
佳美は、壁のほうを向いて辰夫に背を向けた。
お尻は丸出しだ。
写真を撮られることもわかっている。
それでもよかった。
佳美の背中でシャッター音がする。
「壁に手をついて、一歩後によって…」
壁に手をついて下がれば、身体は前傾して、お尻が突き出される。
カシャッ
「もう一歩」
さらにお尻が突き出される。
カシャッ
「立って、シャツをたくし上げてお尻を出して」
露骨な指示だが、それにも応じた。
「脱いで…」
シャツを脱げば全裸だ。
「腕を上にあげて、右手で左手の肘をつかんで…」
佳美は、伸ばした右手を折って左手の肘をつかんだ。
どれがポーズというわけでもない。
シャッター音は途切れずに聞こえてくる。
「こっちを向いて」
佳美が振り返った瞬間にシャッター音がした。
「ありがと」
辰夫がカメラを置いた。
佳美は、床に落ちたジャージを拾ったが着るのをやめた。
「ねぇ辰夫さん」
「なに?」
「お願いがあるの」
「なに?」
「また、描いてくれない?」
「描く…、俺の名前か?」
佳美はうなずいた。
「わかった」
辰夫は、机の引き出しからマジックを取り出して、佳美をベッドに寝かせた。
辰夫の手が佳美の左の乳房を鷲づかむ。
「俺、予備校辞めて、別の会社に就職するんだ」
「えっ、いつ?」
乳房にマジックの先が触れて冷たい。
「1月いっぱい」
「知美は知ってるの?」
右の乳房に移る。
「言ってない。っていうか、生徒が動揺するといけないので伝えない方針なんだ」
「そんな…」
辰夫の手が佳美の下腹部をなでる。
「高校部の講師は、1月いっぱいで次の学年に替わるし、中3も2月は、試験対策だけだし…」
「でも…、知美は辰夫さんが頼りだし…。うっ…」
下腹部をマジックが走る。
佳美は思わず、お腹をひっこめる。
「高校受験が終わるまでは、知美、ここに着てもらって教えてもいいし、俺があなたの家に行って教えてもいい。どっちがいい?」
「そんなこといいの?」
マジックは、下腹部から右足の太ももの内側に移動した。
「いいよ。お金も要らない」
「そんな悪いわ」
さらに左足の太ももに名前を描く。
「自分の持ち物からお金はもらえないだろ」
名前を描くということは、それが自分の持ち物だということだ。
「でも、これは、わたしがお願いしたのよ」
「で、どっちがいい?」
辰夫は、佳美の言うことを聞く気はない。
「じゃぁ、うちで家庭教師を…」
「わかった」
「じゃぁ、3日後に…」
帰りがけに玄関で辰夫はそう言った。
ちょうどその日、佳美は休み。
知美は、塾の講習会。
「わたし、その日は休みなの」
「俺は、3時から仕事だ」
「朝、来てもいい?」
「ああ」
まるで若いカップルのような会話に佳美の胸はときめいた。
タツオとマジックで名前の描かれた胸が…
知美の恋人2-5
5.何も出来ない女
もう会わない
佳美は、勇気を出して男にそう告げた。
“そうか”
それが返事だった。
ただそれだけ。
6年も付き合ってきて…。
しがみついていたのは自分のほう。
それを思い知らされた。
“ばか”
ばかに違いない。
夫に愛想をつかされ、娘に嫌われて…
別れろと言った男。
頼れるのか?
また、頼ってしがみつくのか?
ひとまわりも年下の男に…
「早いのね」
佳美が家に帰ると一人で食事をしていた知美が、驚いたように声をかけた。
休みの前日は、たいてい男と過ごした。
早く家に帰ったことがない。
知美の言葉が、胸に刺さった。
知美は、佳美との時間を避けるように食事を早々に切り上げ、自分の部屋にこもった。
食欲はない。
佳美も自分の寝室にこもった。
夕食はずっと別々。
いつの頃からか、知美は朝食もとらなくなった。
親子の会話などない。
最近は、顔を合わすこともない。
部屋着に着替えようと服を脱いだ。
自分の身体に描かれたタツオの文字。
佳美は、それを鏡に映した。
内ももにくっきり残る文字。
ブラをはずした。
乳房にも小さな字でタツオと描いてある。
ショーツも脱ぐ。
お腹の下のほう、薄い陰毛の上のあたりにタツオと描いてある。
辰夫はこれを真剣な顔で描いた。
その表情が浮かんだ。
タツオ…
佳美は、バッグの中から、キーホルダーを取り出した。
辰夫のマンションの鍵。
辰夫の部屋を出るとき、辰夫がくれた。
男の部屋の鍵を預かるなんて、生まれて初めてだった。
翌朝、6時。
佳美は早く目が覚めた。
休みの朝、早く起きることはない。
前の日が遅いからだ。
何をしていいのかわからない。
何もしてこなかった証拠だ。
佳美は、知美のために朝食を作り、ラップして食卓に置いた。
きっと食べてはくれない。
“いらない”
と言われるのが嫌だった。
知美と顔を合わせたくない。
(早いけど…)
鍵は持っている。
起こさないようにそっと入ればいい。
佳美は、家を出て辰夫のマンションに向った。
40歳近くにもなって、居場所のない女。
佳美は、音を立てないように静かにドアを開け、部屋に入った。
寒々とした部屋。
暖房を入れていいのか?
食事を作ろうか?
でも音を立てて起こしちゃ悪いし…
コーヒーを沸かそうか?
でも好みがわからないし…
ここでも何をしていいのかわからない。
ベッドの横で辰夫の顔を覗きこんだ。
一人では何も出来ない女。
辰夫は裸で眠っていた。
佳美も裸になった。
広くないベッドで辰夫とほんのわずかな距離を置いて佳美は横になった。
自分の体が温まるまで、辰夫には触れない。
辰夫が少し場所を開けてくれた。
(起きたの?)
いや、まだ眠ったままだ。
もうすぐ8時
起きてもいい時間。
佳美は、辰夫に寄り添った。
佳美は、寝ている辰夫のペニスを握ろうとしてやめた。
手が冷たい。
布団にもぐりこんで、辰夫のペニスを口に含んだ。
自分に出来ることはこれくらい。
ふにゃっとしてはいるが、体積は大きい。
それが、佳美の口の中でみるみる硬くなっていく。
不意に暖房が入った。
(起きたの?)
佳美は、強く吸った。
おはようのあいさつの代わり。
辰夫の手が佳美の頭に乗って指が髪をすく。
たぶん、それが辰夫のおはようのあいさつ。
部屋が暖まるのを待っていたかのように、辰夫が佳美を引き上げた。
「ごめん、起こしちゃって…」
「ううん」
辰夫は、佳美の身体全体を自分の上に乗せると、佳美の中に入ってきた。
「あっ…」
佳美の準備がまだだ。
ゆっくりゆっくり…
「あっ…」
佳美の乳房が、辰夫の胸にかすかに触れて揺れる。
「まだ、動かないで…」
佳美は、辰夫に抱きついた。
自分の身体いっぱいに挿入された辰夫のものを感じていたかった。
知美の恋人2-6
6.いっしょになる?
動かないでと頼んだのに、つん、つんと辰夫が下から突き上げる。
でたらめなリズム。
来ると思ったら来ない。
来たと思ったら、連続したり…。
ただ、だんだん次の間隔が縮まってきた。
「あっ…、あああっ」
辰夫にぴったりと乗っかっていた佳美が両手を突っ張って、少し上体を上げた。
辰夫は佳美の腰に両手を当てて、下から突き上げる。
「あっ…、あああっ」
辰夫に抱き寄せられて、佳美は、すぐにまた辰夫にしがみついた。
「佳美」
いつのまにか、佳美と呼び捨てになっているのが嬉しかった。
「ん?」
「寒い」
「あっ、ごめんね」
「起きる?」
「ああ」
佳美は辰夫から離れて、ベッドから出た。
「シャワー浴びれば?」
「これ、消していい?」
佳美は、乳房に残ったタツオの文字を指差した。
「おいで」
辰夫は佳美をキッチンの換気扇の近くに連れて行き、シンナーでマジックを消した。
「寒っ、俺も入る」
最初は僕と言っていたのに、いつのまにか俺に変わった。
佳美は、いっしょに狭いバスルームに駆け込んだ。
「続き…ね」
佳美は、シャワーを浴びながらバスタブの中で、辰夫の前でしゃがんで辰夫のペニスを口に含んだ。
辰夫の手が佳美の頭を抱える。
辰夫はぐっと喉の奥に侵入してきた。
「ぐっ…」
大きな辰夫のペニスを根元まで飲み込む。
「はーっ」
よだれが糸をひいて落ちる。
また来る。
辰夫は、佳美をバスタブに押し付けてペニスを押し込む。
「はーっ、ぐふぉっ、げふぉっ」
佳美が激しく咳き込んだ。
「男と手を切った?」
咳き込みながら佳美はうなずいた。
「本当?」
「もう、会わないって言ったわ」
「で?」
「そうかって」
「それだけ?」
「それだけ」
「俺の方がいい男だろ?」
「何なの、突然?」
「嫌いか?」
「ううん」
「じゃぁ、好きだと言え」
「好きよ」
「何が?」
「辰夫さんが」
「俺のこれだろ」
辰夫は自分のものを佳美の顔の前につきつける。
「嫌な人」
「正直に言え、俺のちんぽが好きなんだろ?」
「ひどい人」
辰夫は子どものように笑っている。
「俺のちんぽが好きだと言え」
それを言わせたいらしい。
「好きよ」
「何が?」
「辰夫さんのちんぽ」
「ちゃんと言え」
「辰夫さんのちんぽが好き」
辰夫は、佳美の顔を壁に押し付け、ペニスをこすりつけ始めた。
「お前の顔でいく。いいか?」
「いいわ。好きなところでいって」
辰夫は激しく佳美の顔にこすりつける。
顔で感じるはずもないのだが、これも悪くはない。
辰夫が自分でペニスを握って、先端を佳美の口にあてた。
佳美が口をあけてそれを咥えるのと同時に、辰夫の精液がほとばしった。
苦くすっぱい液体。
ぴりっとした刺激が口の中に広がった。
一度には飲み込めない。
唾液と一緒に何度かにわけて飲み込む。
その間にも、先端からじわじわと滲み出す。
佳美はそれをすべて飲み込んだ。
口に出されるのは嫌いじゃない。
飲み込むのも嫌いじゃない。
いつも受身の佳美が、唯一、男をいかせられるのは口だけ。
いつのまにかバスタブにお湯がいっぱいになっていた。
狭いバスタブにふたりでつかった。
「できたわよ」
ようやく暖房が効いた部屋で、素肌にラグビージャージを着ただけの佳美が、コーヒーを沸かしている辰夫に声をかけた。
テーブルの上にベーコンエッグとトースト。
辰夫が、コーヒーをふたつ持ってきた。
「絵に描いたような朝食だね」
「そうね」
「いただきます」
佳美が食べない。
「どうした?」
「ううん」
佳美は慌てて、コーヒーカップを口に運んだ。
“いただきます”という言葉を聞くのは久しぶりだった。
それが、嬉しくて胸が詰まった。
辰夫の携帯が鳴った。
「メールだ」
辰夫が携帯を見る。
「知美から…」
知美まで呼び捨てになっている。
「明日、うちに来ていいかって?」
「うちって、ここ?」
佳美が聞き返す。
「うん」
「勉強するって、本人は言っている」
辰夫は、携帯を佳美に見せた。
「どうする、お母さん?」
「辰夫さんはいいの?」
「俺は、かまわないよ」
「そう…」
「お母さんの承諾を得るように言うけど…いい?」
佳美はうなずいた。
「知美、あなたのことが好きなんだと思う」
「そうかもな」
辰夫も否定はしない。
「わたし、ひどい母親」
「どうかな。知美はまだ中学生で15歳。結婚する相手は俺じゃないだろ」
確かにそうかもしれないが、父親を引き離し、その上、こんどはあこがれの男を奪おうとしているのだ。
佳美は自分の愚かさにあきれた。
「知美は、あんたを嫌っている」
辰夫は、考え込む佳美に向かって言い放つ。
「会話もないんだろ?」
佳美はうなずいた。
「自分の力で、今の関係をなんとかできるのか?」
(できないわ)
「いい母親になりたいのか?」
(なりたいけど…、きっと無理)
「とりあえず、知美の嫌いな男の愛人は卒業した」
(それはそう…だけど…)
「今度は、知美の好きな男といっしょになる」
(いっしょになる?)
「俺はあんたも知美も好きだ。知美の受験が終わったら、いっしょに考えよう。それでいい?」
“いっしょになる”
佳美の心のどこかで芽生え始めていた淡い期待。
それを今、目の前で辰夫が口にした。
“受験が終わったら、いっしょに考えよう”
佳美は、辰夫の言葉にうなずいた。
知美の恋人2-7
7.ご飯作ろうか?
「来たよ」
朝、9時18分。
“待たせたね”的なあいさつをしながら知美が入ってきた。
辰夫は知美を軽く抱いて、短いキスをする。
「こら、勉強しに来たんだぞ」
「お母さんには、ちゃんと言ったか?」
「言ったよ」
「お母さん、何て?」
「邪魔しなようにって」
「そう」
知美は、大きなバッグを下ろして中から何かを取り出した。
「ねぇ、見て。このあいだの全県模試の結果」
知美が取り出したのは、県下の全中学が一斉に行う模擬テストの結果だ。
このテスト結果で、志望校の最終決定が行われる。
辰夫がそれを見ている間に、知美はバッグの中のものを冷蔵庫に入れた。
大学と違い、公立高校の合格倍率は高くない。
知美が受験する学校も定員300名に対して受験者は例年320名程度。
落ちるのは、わずかに20名程度。
選抜というのは受験結果ではなく、どこの学校に出願するかというところですでに行われている。
模擬テストが、事実上の入学試験だ。
5科目、500点満点の模試で482点、悪くない。
「賢いでしょ、わたし」
確かに、文句はない。
ただ、彼女が受験する学校は県下でトップクラス。
何点取るかではなく、いくつ間違うかで当落が決まる。
油断は出来ない。
「だから、遊ぼってわけじゃないよな?」
「わかってるってば…」
「で、何をやるんだ?」
「小論文」
毎年、800字程度の小論文が出題される。
配点は20点、満点が望ましいが、模擬テストでも2点減点されていた。
「何について書く?」
「環境問題」
「環境問題の何?」
「温暖化」
「じゃぁ、書け。時間は20分」
「待ってよ。いきなり、書けって、それだけ?」
「入試は、履歴書じゃないから個性をアピールする必要はない。模範解答を書けばいいんだよ」
「何よ。模範解答って…」
「今の環境はこうで対策は待ったなしの状況だ。でも、各国の利害が絡んで話し合いは進展しない。議論している間にも環境は悪化するばかり、だから自分に出来ることをコツコツと…以上、終わり」
「また、適当に…。もっとちゃんと教えてよ」
「例えば…」
「異常気象が続いている。夏の高温で野菜が高騰、熱中症で多くの方が亡くなった。地球温暖化の危機が叫ばれてきたが、これが温暖化の影響だとしたら危機はもう現実のものとなっている。で、段落を変える」
「待って、メモるから」
「次は、CO2の削減目標を決める会議が行われているが、経済危機の中、各国の利害がぶつかって思うように進展しない。しかし、そうやって議論をしている間にも確実に温暖化はすすんでいる。困るのは、同じ地球に住んでいる地球人全体だ。で段落を変える」
「地球人?」
「世界はひとつみたいなのが好きなんだよ。教育関係者はね…」
「でも、これ、反対は宇宙人だよね」
「そこには触れないのが大人のルール」
「ふーん。ばかじゃん」
「公務員ってやつは、言葉の遊びが仕事だ」
「何それ」
「例えば…」
「“抜本的改革”というのは、問題の先送りっていうことだ。“みんなでよく議論して”っていうのはやらないということだ。“ちゃんとしたルールを作って”っていうのは、責任の所在をあいまいにするということだ」
「ふーん、そうなんだ」
「じゃぁ次。これが最後の段落。わたしの家では、“…ぱなしはなし”を実践している。水の出しっぱなし、冷蔵庫の開けっ放し、テレビのつけっぱなしをやめた。自分に出来ることをコツコツとやっていく。削減は、目標が定められなくてもやらなければいけない。各国の目標があろうとなかろうとわたしたちひとりひとりにできる事は同じなのだから…。以上」
「やってないけど…」
「書けるかどうかの試験だ。やってるかどうかは関係ない」
「なんかばかばかしいね」
「世の中は、弱肉強食だ。入学試験だって力がなければ落ちる。ところが、教師は平等だと言う。全員にちゃんと理解させると言ってレベルを下げた。全員がちゃんと理解したら、入試は成立しない」
「そりゃ、そうだね」
「ちゃんと出来た子を褒める。でも、全員がちゃんとできたら、できるのが当たり前。褒められても嬉しくない。逆に出来ないのが恥ずかしい」
「わかるよ、それ。おバカが、バカに向ってバカって言ってる。お前だってバカだっての…」
「レベルを上げて優越感を育てるか、レベルを下げて劣等感を養うか。どっちかを選ぶなら優越感だろう。うらやましい人間を作るほうが、見下される人間を量産するよりはましだ」
「だから先生、学校じゃなくて塾の先生なんだ?」
「やめるけどな」
「えっ、嘘、やめるの?いつ?」
「来月いっぱい」
「そんな…」
「お前は、ずっと教えるよ」
「どういうこと?」
「家庭教師。お母さんと話したんだ」
「お母さんと?いつ?」
知美の顔がきつくなった。
「昨日」
「昨日、お母さん、先生と会ってたの?わたしがメールしたときは?」
「そのときは、もう帰ってた。買い物するとかって…」
「ここに来たの?」
「いや、近くの喫茶店」
「どうして、お母さんと会ったの?」
「お前をここで教えるか、お前の家に行って教えるか、とりあえず、お母さんと話さないと…」
「で、どっちなの?」
「まだ決めてない。お前はどっちがいい?」
「ここ」
「わかった。お母さんにそう言うよ」
辰夫が同意しても知美の不機嫌な顔は直らない。
「どうした?」
「お母さん、先生に会ったことわたしに言わなかった」
「俺が話すから、言うなって言った」
「どうして?」
「お前ら、仲が悪そうだから…」
「悪いけど…」
知美はテーブルに広げた原稿用紙に向った。
辰夫は、何もすることがない。
コーヒーを入れ、知美の横で古本屋で買ってきたコミックを読んだ。
知美が書いたものを添削して、次の課題。
眠くなった。
「ご飯作ろうか?」
知美の声で目が覚めた。
「ああ」
知美はそのつもりで来ている。
冷蔵庫になにやらいっぱい入っていた。
「これ、借りていい?」
辰夫のラグビージャージ
昨日、佳美が着てキッチンの椅子の上に置きっぱなしだった。
「ああ」
だめとも言えない。
知美は、それに着替えてキッチンに立った。
親子だ。
顔は違うが、後姿はよく似ている。
「知美」
「ん?」
「お母さん、男と別れたって…」
「何それ?」
「男と別れろって言ったんだ、俺が」
「言ったの?先生が?いつ?」
「この間、お前が家出してうちに泊まったとき」
「聞いてない」
「言ってない」
「何なのよ、ちゃかさないでちゃんと話して」
「話すなら、すべてをありのままに話せ。ありのままに話せないなら話すな。子どもの親でいたければ、子どもに話せないようなことをするなって」
「先生が叱ったの?」
「いや、そんなつもりはなかったんだけど、なんか、優柔不断っていうか、ぐじぐじした感じだったんで…つい」
「でしょ。あの人、はっきりしないんだ。いつも…」
「昨日、男と別れましたって…」
「それは、あの人がそう言っただけでしょ?嘘よ、きっと」
「だからって、相手の男に聞くわけにもいかないだろ」
「そりゃ、そうね。どうでもいいけど…」
「できたわよ。食べよ」
知美がテーブルにお皿を並べ始めた。
今日はシチューだ。
いい香りがする。
食事を済ませると、辰夫は、知美が食器を片付けている間に眠ってしまった。
誰かにキスされている。
辰夫は、それを佳美だと思った。
舌を差し入れる。
女がそれを吸う。
辰夫は、女の手を自分の下半身のほうに導いた。
女がズボンの上から辰夫のペニスを撫でる。
女の唇が離れた。
眠かった。
辰夫はまた眠りに入った。