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沙耶の倒錯2-1
1.高校生じゃあるまいし…
月曜日。
信也に会えなかった土日の二日間、別にそのときはなんともなかったのだが、月曜になって今日は、会えると思えると、とたんに胸が高鳴った。
いつもと同じ時間。
沙耶は、ホームに上がって信也を探す。
(いた)
沙耶を待っているかのように、待っている列には加わらず、少し離れて立っている。
目があった。
ただそれだけだ。
沙耶が並んでいる列に立つと信也がすぐ後ろに並んだ。
アナウンスとともに電車が、入ってきた。
扉が開いて、数人の客が降りる。
沙耶はまっすぐ反対側の扉に向う。
後ろにぴったりと信也がついてきた。
沙耶は、押しつけられる前に体の向きを変えた。
扉が閉まる寸前にさらにぐいっと押される。
よろめく沙耶の腰に信也の手が回った。
(抱かれてる…わたし…)
電車が動き出した。
不思議なもので、電車が動き出すとぎゅうぎゅうだった空間にゆとりができる。
腰にまわっていた信也の手が少しさ下がった。
沙耶は、胸の前にあった手を下に降ろし、もう一方の信也の手を握ると、その手を自分の股間に導く。
今日のスカートはスリットが前後にある。
沙耶は信也の人差し指と中指に自分の二本の指を重ねて、自分の秘所に押し付けた。
信也が一瞬、驚いたようにぴくんと指を戻す。
開いているのだ。
あの部分が開いているオープンショーツ。
信也の指は、直接温かい沙耶の内壁に導かれた。
「驚いた?ごめんね」
沙耶は、かすかな声で信也の耳元で囁く。
「ううん」
信也の指が勝手に動き出す。
もう沙耶が押し付ける必要はなくなった。
信也のものは、沙耶のお腹の少し下だ。
沙耶は、それを確かめるように信也のものをズボンの上からなぞる。
信也の指が小刻みに沙耶の中で振動し始めた。
(ああ…信也っ…だめっ溢れちゃう)
朝、オープンショーツを穿いたときから、こうなることを想像して昂ぶっていたのだ。
ほんの少しの刺激でどくっとあふれ出したのが自分でもわかる。
わずかに十数分の時間。
電車は、規則正しく定められた時間通りに駅に着く。
信也と関係する前は、ただお尻で信也を感じているだけでよかったのに、今日は指が挿入されても物足りない。
その指が、沙耶から離れていく。
信也の指がなくなると、熱かった場所が、急速に冷たくなっていく。
(ああ…っ)
開くほうの扉に背を向けている沙耶は、急いで向きを変えた。
このままだと降りる人の迷惑だ。
沙耶は、扉が開くと同時に一度外に降りてからまた乗った。
信也が、降りた場所に立って沙耶のほうを見ている。
(やだ、わたし、どきどきして…高校生じゃあるまいし…)
電車が動き出した。
信也の後ろに女の子がいた。
沙耶の倒錯2-2
「おはよ」
敦子が信也の腕を取った。
「おはよ」
信也は慌てて敦子の腕を振りほどく。
敦子は平気でこういうことをする。
「いつも、この電車なの?」
多くの生徒は、この次の電車だ。
「まぁ…」
信也はあいまいな返事をした。
「あっ、そうそう」
敦子が思い出したように声をあげる。
「あのさ、わたし、もう少し広くてお風呂もちゃんとしたところに移りたくて…。なんとかならない?」
敦子は、2年。
信也よりも一つ上だ。
「広いって…どのくらい?」
「部屋は別にワンルームでいいんだけど、お風呂の広いとこってないかなぁ」
「風呂だけ広いってのは…」
「おじさんってのは、お風呂でしたがるのよ」
敦子は平気でこういうことを話す。
敦子の兄は、キャバクラで働いている。
ニューハーフだ。
信也も何度か会ったことがある。
敦子も中学生に間違えられるほどの童顔だが、それ以上に幼く見える。
彼に着く客は、そういう趣味なんだろうが、いかんせん彼は男だ。
それで、ときどき客を妹の敦子に回すらしい。
敦子も童顔だから、ラブホで…というわけにもいかずアパートを使っている。
沙耶に、友達の部屋だと説明した、その友達というのが敦子だ。
「ラブホまで広くなくてもいいけど…」
信也の叔父が不動産屋だ。
敦子の兄にあのアパートを仲介したのも信也の叔父だ。
「あるけど、高いよ」
「どのくらい?」
「14、5万とかって言ってたよ」
「そんなに…。土日だけなんだけど…」
「だったら、平日使う子も探してきてよ。それに今使ってるところも空いちゃうだろ」
「ああ、そっちは、わたしの後は、加奈が使いたいって言ってた」
「加奈が?」
「うん。加奈の彼が借りてくれるんだって…」
加奈は、信也と同じクラスだ。
「わたしも声かけるからさぁ、信也も平日使う子探してくれない?」
「平日ねぇ…」
心当たりがないわけでもない。
「もしかしたら、平日、埋まるかも…」
「えっ、ほんと?」
「いや、期待しないでくれよ。もしかしたらの話だ」
次の日も沙耶は、自分を待っている信也の前に立った。
昨日、動き出した電車の窓から一瞬、信也に寄り添った女の子が信也の腕を取るのを見た。
彼女は誰なのか。
それを聞こうかどうかずっと迷っていた。
(彼女とは別れたと言っていたはず…)
昨日と同じように、電車の中で信也のほうを向く。
昨日と同じように信也の腕が腰に回された。
「昨日の子、彼女?」
沙耶は昨日と同じように信也の指を股間に導きながら、信也の耳元で小声で囁いた。
今日のショーツはオープンではない。
「彼女?…まさか。違いますよ。ただの友達です」
「そう」
沙耶は、信也のものをぎゅっと握る。
嫉妬していると思われたくなかった。
(ほんとに、もう小娘みたいじゃない。恥ずかしい…)
「姉さん、今日、帰りに会えますか?」
信也のほうから話しかけてきた。
「今日?」
夫の帰りは、いつも8時を過ぎる。
2時間くらいならいつでも大丈夫だ。
「だいじょうぶよ」
「○○駅なんですけど…」
そこは、信也の学校のある駅の2つ手前。
沙耶の駅から3つめのところだ。
「そこで待ってます。6時でいいですか?」
「そこなら、5時40分にはつけるけど…」
「このあいだのところ狭いでしょ。もっと広いマンションがあるんです」
「マンション?」
「ちょっと高くなるんですけど、半分は僕、出しますから…。見るだけ見てくれないですか?」
「そうなの?」
沙耶のさっきまで心の中に渦巻いていた嫉妬心が、さっと消えてなくなった。
彼との新居を探すような気分だった。
沙耶の倒錯2-3
「ここって、上はマンションだったのね」
信也は沙耶を駅近くのドラッグストアの上のマンションに案内した。
沙耶は、ときどきこの店で買い物をするが、1~2階のドラッグストアしか目に入ってなかった。
通りから狭い通路を入ると奥がエレベーターホール。
郵便受けがたくさん並んでいた。
信也は、沙耶を連れて6階で降りた。
「勝手に入れるの?」
「不動産屋さんと知り合いなんです。勝手に見ろって鍵をわたしてくれました」
不動産屋にあれこれ言われるよりも信也と二人のほうがありがたい。
沙耶は、さらっと信也の腕を取った。
「607、ここですね」
鍵は二重ロック。
まぁ、玄関がだれでも素通りだから、このくらいは当然だろう。
「どうぞ」
「まぁ」
信也の言い方が、あまりに不動産屋っぽかったので沙耶は思わずふきだした。
中は…
玄関脇がトイレ、並んでバスルーム。
バスルームのドアが透明なガラスだ。
なにげに覗いた沙耶は驚いた。
「なにこれ、ひっろーい」
沙耶は、まずバスルームに入った。
沙耶なら楽々横になれるジェットバス。
(なんでカーテン)
洗い場にカーテンが引かれている。
あけると、居間が見える。
居間といってもワンルームなのでベッドルームというほうが的確かもしれないが、つまり部屋に向って窓があるわけだ。
「なんで窓があるの?」
「テレビを見るため…かな?」
確かに、窓から部屋のテレビは見えるが…。
「もしかして、お風呂を向こうから覗くため?」
「そうかも…」
信也が笑っている。
「お風呂入ります?」
「入れるの?」
「ええ。水道も電気もガスもきてるそうです」
「でも、タオルもないし…」
「ありますよ」
「ある?どこに?」
信也は、バスルームを出て洗面所の下の収納からタオルを取り出した。
「ほら」
信也は、クリーニングされたとしか思えないバスタオルを沙耶に差し出した。
空き部屋に水道、電気、タオルまである。
「ねぇ、ここって本当に空いてるの?」
「借り手が見つかるまで、今は1週間単位で貸してるらしいです」
「そういうこと。…でも、タオルとか勝手に使っていいの?」
「2000円要ります」
「そうなの」
タオルのクリーニング代が2000円は高いが、ラブホだと思えば、高くはない。
「入りたいわね」
沙耶は広いジェットバスにひかれた。
「じゃぁ、お湯を入れますから向こうも見てください」
バスルームのドアの横が洗面所。
そこを抜けると居間兼ベッドルーム。
家具はみんな揃っている。
薄型のテレビにエアコン。
ベッドがでかい。
(なにこれ、キングサイズ?)
通りに面した側に窓があるが、ベランダはない。
駅近くの商業地だ。
ベランダに洗濯物は似合わない。
(洗濯はどうするんだろう?コインランドリーか)
1階のドラッグストアの横がたしかコインランドリーだ。
「どうですか?」
窓から外を覗いている沙耶に信也が後ろから声をかけた。
「ラブホみたい」
「ラブホってこんななんですか?」
嘘っぽい言い方だが、信也の年ではラブホは経験がないかもしれない。
「そうね。こんな感じ」
沙耶もそれほど詳しくはないが、こじんまりしたリーズナブルなホテルはこんな感じだった。
沙耶は信也の腕を引いてベッドに座った。
さすがにベッドはマットだけで、それにカバーがかけてあるだけだが、それで十分といえば十分だ。
信也が沙耶の肩に手を回す。
「キスして」
信也の唇が沙耶の唇に重なった。
信也はそのままゆっくり沙耶を後ろに押し倒す。
沙耶は唇を開いて信也の舌を受け入れた。
信也の手が荒々しく沙耶の乳房をまさぐる。
沙耶は激しさと荒々しさが好きだ。
優しく揉まれるより、痛いくらいにつかまれるほうがいい。
信也は沙耶のサマーセーターをまくりあげ、強引にブラを押し下げ、沙耶の乳房をつかんだ。
肩紐が食い込んで少し痛い。
「脱ぐわ」
沙耶は、そう言って起き上がり、信也の前で服を脱いだ。
信也がじっと見ている。
見られながら脱ぐ快感。
おそらくは女だけが味わえる快感。
「お風呂、入ります?」
裸になった沙耶に信也が言った。
(ばか)
「そうね。信也も一緒に入る?」
「えーっ…後で行きます」
「後?」
「ここで見てていいですか?」
(お風呂を覗きたいの?)
「いいわよ」
沙耶は、裸のままバスルームに向った。
信也が、部屋の明かりを消したので、バスルームからは、部屋がよく見えない。
(なかなか心得てるじゃない…)
何も覗かなくても、いっしょに入れば、見られるし、触れるし…沙耶は、そう思うのだが、男というのはなぜかそうやって覗きたがる。
沙耶の元の年下の彼もそうだった。
沙耶は、部屋に面した窓に背中を向けて、シャワーを浴びる。
足を開き、前かがみになってお尻を突き出し、シャワーを股間に当てる。
そこを指で洗うようにこする。
襞を掻き分けて指を前後に這わせる。
(信也、早く来て)
望みどおりは、信也はすぐにバスルームに入ってきた。
「洗ってあげる」
沙耶は、ボディソープを手に垂らし、信也の前でひざまずく。
それはすでに大きくなって上を向いていた。
沙耶はそれを両手の手のひらで挟んでこすった。
「舐めたげる」
シャワーで泡を落とし、沙耶はそれを口に含んだ。
信也は沙耶の髪を掻き分けて沙耶の顔を覗きこむ。
沙耶は顔を上げて、舐めているところ信也に見せた。
(そうだ…)
舐めているところをもっとはっきり見せる方法に気づいた。
「お風呂、入って」
信也をバスタブに横たわらせ、沙耶は信也の足の間に入った。
両手で信也のお尻を持ち上げる。
信也の体がふっと浮かんで、信也のペニスがお湯の表面から外に顔を出す。
沙耶は、それを口に含んだ。
「気持ちいい?」
「うん」
信也がうなずく。
「ねぇ、信也」
「ん?」
「入れて」
「いいけど。ここで?」
「ううん。ベッドで…いい?」
「うん」
沙耶がバスルームを出ると、信也が沙耶の体を拭いてくれたが、まだ少し濡れていた。
ベッドカバーが濡れてもいけないので、沙耶は、ベッドに手をついて信也にお尻を突き出した。
「ここでして」
自分でそう言って、その恥ずかしい言葉に沙耶は興奮した。
「ここに入れて」
さらに、沙耶はそこを指で広げて見せた。
沙耶の倒錯2-4
「姉さん、すごいえっちな格好だ」
「すごい?」
「うん。すごいよ。見てるだけででそうだよ」
「そんなに?」
そんなやり取りだけで沙耶はどんどん濡れていく。
「来て。早く…」
もう待てない。
「うっ、ああああ…」
信也が挿入すると同時に沙耶の声が部屋中に響いた。
信也に突かれ、沙耶の膝ががくがく揺れる。
沙耶は、すでに自分で姿勢を保てなくなっていた。
べっどについた手はだんだん曲がり、とうとう沙耶はベッドにあごを乗せた。
お尻を突き出しているのは、信也が沙耶のお尻を持ち上げているからで、信也が手を離せば、沙耶は床に崩れ落ちるところだ。
「ああ…ああ、信也、すごい…すごい」
沙耶の声がさらに大きくなる。
信也は、まるで馬の手綱を引くように沙耶のお尻を自分にひきつける。
抜ける寸前まで離れて、根元ぴったりまで突き刺す。
「ああ…ああ…ああ」
沙耶の頭が左右に激しく振られる。
もうとっくに達している。
次から次へとやってくる波で沙耶は大きく上半身を揺らし、そのたびに沙耶の乳房は左右に激しく揺れた。
大きなストロークで沙耶を突いていた信也の動きが小さく、早くなっていく。
「うっ…」
信也は、ぎっと歯を食いしばってがまんする。
(もう少し…もう少し…)
「姉さん、出すよ…」
「いって…いって…」
そう言ってからもまだ数回信也は沙耶に突き刺した。
「はぁぁぁぁぁぁぁあああああ…」
最後に信也は沙耶のお尻から手を離した。
沙耶は大きく前につんのめり、うつ伏せになった沙耶のお尻に信也は放出した。
(すごいわ、信也)
信也に抱きつきたかったが、とてもすぐには動けない。
沙耶は、うつ伏したまま浅い息を繰り返した。
信也は沙耶のお尻をティッシュで拭き終わると、沙耶の横にぴったりと張り付くように寝た。
沙耶が身体を回して信也のほうを向く。
信也は沙耶をぎゅっと抱きしめ、そのまま回転して、沙耶を自分の上に乗せた。
沙耶の下腹部に信也のものがある。
沙耶は少しさがって信也のものを握った。
ふにゃふにゃした柔らかい感触。
沙耶がぎゅっと握ると残っていた精子がすっと流れ出る。
沙耶はそれを口に含んだ。
沙耶が強く吸うと信也が実をよじってこらえる。
それがおかしくて何度も何度も沙耶は吸う。
でも、だんだん信也がもだえなくなる。
と同時にまた大きくなってきた。
「信也、まだできるの?」
「できるけど…姉さんは?」
「ううん。もうだめ。死んじゃう」
「じゃぁ、いいよ。僕ももう…」
「舐めててもいい?」
「いいけど…」
沙耶は、信也のものを握って、まっすぐ上から喉に入れていく。
半分くらいのところで一度止った。
そこからゆっくりまた降りていく。
ぴったり根元まで全部沙耶の口の中に納まった。
(姉さん…すごいや)
それを見ているだけで信也のものはさらに体積を増した。
それでも沙耶は同じように根元まで喉に入れた。
沙耶が信也のものを咥えたまま、体の向きを変えていく。
沙耶は、信也にお尻を向けた。
大きく信也の体をまたいだ沙耶の股間を隠すものは何もない。
信也のものを舐めるのに、沙耶はわざと身体を前後に動かした。
信也の目の前で沙耶の股間が前後に揺れる。
信也の指が沙耶の中に押し込められた。
沙耶は信也の根元を親指と人差し指できゅっと絞って口で先端部分を激しくしごいた。
信也は先端が熱くなったような気がした。
じわーっ、じわーっと熱くなっていく。
我慢のしようがない感覚だ。
勝手に精子が爆発準備を始めだす。
どうやって止めたらいいのかわからない。
信也は腰を引いて、沙耶の口から逃げようとしたが、沙耶は逃がさない。
「あっ…だめだよ、姉さん、でちゃうよ」
「出して…飲みたいの」
信也は足を閉じ、必死に我慢しているが、もう時間の問題だ。
信也の足から力が抜けた瞬間、沙耶の口の中に信也の精子が溢れ出した。
沙耶の倒錯2-5
「飲む?」
信也は冷蔵庫から勝手に缶コーヒーを取り出した。
「いいの?勝手に飲んで…」
「缶コーヒーは、150円だって…」
「ほんとにラブホみたい」
沙耶が手を差し出した。
「どう?ここ?」
「どうって?」
「気に入った?」
「いいわね。いくらなの?」
「月14万くらいだって言ってたけど…」
いい感じだが、月、14万円はとても無理だ。
14万出すなら、ラブホでいい。
「高いわ。とても無理よ。1日とかって借りられないのかしら。今日みたいに…」
「どうだろう?聞いてみようか?」
「ええ。聞いてみて」
1日4千円~5千円なら、ラブホより安いし、二人いっしょじゃなくても別々に入れるし、ラブホほど人目を気にすることもない。
翌日、電車の中で信也が沙耶の耳元で囁いた。
「後で不動産屋の担当者と電話番号のメール入れとくから」
「わたしが、直接聞くの?」
沙耶は、ためらった。
「だいじょうぶ。僕のいとこのお姉さんって言っておいたから」
信也は気を遣ったつもりなのだろうが、逆にこれでいやだとは言えなくなった。
(電話をしないと、信也に悪いわね…)
メールは信也が電車を降りてすぐに入った。
担当者は、杉村日向。
意外にも女性だ。
詳しい話は、会って直接とのことだった。
彼女は、駅で目印の黒いバックを持って立っていた。
沙耶と同じくらいの年齢だ。
「あのぉ、杉村さん?」
沙耶が声をかけた。
「はい。西崎さん?」
「ええ」
「すいません。お忙しいのに…」
「いえ、こちらこそ、わざわざ来ていただいて…」
「とんでもない。どこへでも行きます…仕事ですから。お茶でも…」
日向は、沙耶をコーヒーショップへと誘った。
「さっそくですけど…いいですか?」
「ええ」
「信也君から聞いたんですけど、単発で1日ってのは、ちょっとできないんですよ。それだと、まぁ、ホテルみたいなものになちゃいますよね。そうなると、わざわざこの部屋だけのためにここに掃除の人を入れないといけなくなっちゃうんで…、もしやったとしても、たぶん普通のビジネスホテルの一泊の料金と変わらない料金設定になると思います。もしかしたら、もっと高くなるかも…」
「はぁ、…そうですよね。やっぱり…」
まぁ、それは沙耶が予想したとおりの答えだ。
「あの部屋ってバスルームが広いでしょ」
日向が声を落として話しかけた。
「えっ…ええ」
「あれ、うちがオーナーさんに働きかけて改装してもらったんです」
「そうなんですか?」
「バスルームを広くしてっていう人が、けっこう増えてまして、あそこは部屋をひとつまるまるつぶしたんですよ」
それはそうかもしれない。
一人暮らしなら、多少、部屋やキッチンを犠牲にしてもお風呂が広いほうがいいかもしれないと沙耶も思った。
「わたしもああいう部屋を借りてるんです」
「そうなんですか?」
「ちょっとラブホじゃできないようなことをするので、無理言って作ってもらったんです」
沙耶は一方的に話す日向にただ圧倒されていた。
「でも、使うのは土日だけなので平日は他の方に貸してます。月・水・金の方と火・木の方。二人とも主婦なんだそうです」
「主婦…なんですか?」
「ええ。チャットレディってご存知ですか?」
「ええ。詳しくはないですけど。よくネットで広告は見ます」
「二人ともチャットレディなの。家でもできるんですけど、なんかいやでしょ。誰が来るかもわからないし、自分の部屋を見られるわけだし、ただの会話だけど、やっぱり浮気っぽいでしょ、自分の家よりはそういう雰囲気の別の場所のほうがいいんですって…」
「そう…なんですか」
日向の言うことはなんとなく沙耶にも理解できた。
「3日来てる人は、月に20万以上稼いでるって言ってました」
「そんなに…」
沙耶の手取りがそのくらいの額だ。
「みたいです。主婦の方なんで、部屋は使うけど寝るわけじゃないから、そうじも楽だし、わたしのほうは大助かり。わたしのところも、家賃は月に14万なんですけど、週3日の方が、7万5千円、2日の方が5万円。わたしの負担と言ってもわたしの彼の負担ですけど、それは家賃の残りと水道・光熱費だけ、2万円くらいです」
「あっごめんなさい。余計な話」
日向は、慌てて本題に戻った。
「基本はですね、月か週の単位で契約していただいて、その方が誰に使っていただこうと自由ということです。いかがですか?」
「そういう主婦の方ってどうやって見つけるんですか?」
「うちのホームページなんかでずっと募集をかけています。問い合わせはけっこうあります」
「そういう人が、借り手になって契約することはないんですか?」
「ありますよ。ただ、うちはあくまで契約した方からお家賃を全額いただきますから、最初は、うまく曜日がすべて埋まっていても、空いてしまえば、契約者の負担ということになります。だから、まぁある程度は負担を覚悟できる方でないと、ご契約というところまでは…」
「紹介はしていただけるんですよね」
「それはします。それから、手数料はいただきますが、その方からの利用料の徴収の代行もします。ただし、必ず、すべての曜日が埋まるという保障はできませんので、それは予めご了解ください」
いつの間にか借りることを前提としたような説明になっていることに沙耶は気づかない。
いや、借りることをすでに沙耶自身が想定していた。
「じゃぁ、またご不明な点がありましたらお電話ください」
日向は、伝票を持って席を立った。
「あっ、それから…」
立ち上がった日向が沙耶の耳元に近づいた。
「ああ、わたし、チャットのお仕事も紹介できます。会社には内緒ですけど…よかったら、声をかけてください。それでは…」
日向は沙耶に軽くお辞儀をして出て行った。