スポンサーサイト
新しい記事を書く事で広告が消せます。
悶絶(6)
(6)
梨央にはセックスは特別なことではない。
スポーツみたいなものだ。
それは純一も同じで、純一も梨央もお互いの浮気を咎めるわけではない。
“浮気がばれれば、一週間の隷従”というルールは、そんな二人の夫婦としての絆だ。
する側、される側という関係は、些細なことで壊れてしまう。
たいていの場合、する側は、常にその立場で、徐々にエスカレートする。
ただ、される側は、常にそうだとは限らない。
虐められたい、辱められたいという思いあっても、日によって、体調によって、その程度は違う。
純一は、とことん虐めたくなると、刺客を送って梨央の浮気を仕掛けてくる。
梨央もその気なら、純一の仕掛けに乗る。
梨央の浮気は、OKの意思表示にすぎない。
一週間の隷従が終わって、梨央が普通の生活に戻った2日目。
「後藤歯科ですけど…」
歯科医の後藤から仕事を終えた梨央の携帯に電話が入った。
「今日の予約なんですけど…、ちょっと助手の女の子が3時からいなくなっちゃって、僕一人なんですよ。で、申し訳ないんですが、1時間遅らせてもらえませんか?」
そういう用件だろうとは思ったが、それでも胸がどきどきする。
「かまいませんけど…、先生は、いいんですか?時間外でしょ」
予約は午後6時、梨央が確か最終のはずだ。
「そうなんですけど。それはまぁ、こっちの都合ですから…」
「いいですよ。じゃぁ、ちょっと時間をつぶしてから伺います」
「すいません」
後藤の声も話し方も、いつもと同じだ。
(ばれてないわ。だいじょうぶ…)
梨央は、あのときの後藤の表情を思い浮かべた。
いつもはにこやかな優しい顔をしている後藤だったが、あの時は、無表情で目元がいつもよりきつい感じだった。
(あんな顔して、本当はサディストなんだ)
人は本当に見かけによらない。
純一も普段は、優しい顔をしているし、実際、優しい。
(そんなものなのかも…)
梨央が後藤歯科に入ると、待合室には誰も居なかった。
「すいません」
窓口から、声をかけると、すぐに後藤が出てきた。
「ああ、ごめんなさい。急に時間を遅らせたりして…。急用だとかって女の子が帰っちゃったもんで…」
梨央が診察室に入ると、3台ある診察台には誰もいなかった。
梨央は、一番手前の診察台に座らされた。
「違和感とかないですか?」
今日は、かぶせた奥歯の調整だ。
「ないです」
「ちょっと倒します」
イスの背が倒される。
ショーのときのように、梨央は後藤を下から見上げた。
「これを噛んでくれますか?」
奥歯に噛みあわせを見るものが当てられて梨央はそれを噛んだ。
後藤の顔が近寄ってくる。
マスクをして出ているのは目だけだが、まちがいない、あれは絶対に後藤に違いない。
後藤は、少し削っては、同じことを繰り返した。
「これで、いいですか?」
「はい」
「じゃぁ、起こしますから、口をすすいでください」
背もたれが持ち上がった。
「歯医者っていうのは…」
後藤が話し出した。
「職業病ですかね。口に中を見ると、すぐに冠とか歯に目がいっちゃうんです」
「はぁ…」
「で、今、治療中の患者さんは、歯を見るとだいたいわかるんですよ」
(えっ?…そんなまさか…)
梨央は後藤の顔を見た。
「もう一度、倒しますね」
後藤が、イスを倒した。
(どこまで倒すの?)
水平よりもさらに頭のほうが低くなったと思うくらい倒された。
「梨央さん」
後藤は、苗字ではなく、名前のほうを呼んだ。
「はい」
緊張して梨央の声が震えた。
「このあいだ、すごくよかったです」
(ああ、やっぱり…、歯だなんて…、そんなぁ)
「ここで、こうやって患者さんを倒すでしょ。そして、お口をあけてくださいって言うじゃないですか」
梨央は思わず口を開けて、すぐに閉じた。
「そしたら、患者さんが口をあけますよね。…開けてくれますか?」
梨央はもう一度口をあけた。
「ね。もう、たまんないんですよ。あなたのような人が、そうやって口を開くと…」
後藤が、梨央の手を自分の股間に導いた。
「ね。もうかちんかちんですよ」
確かにかちかちにいきり立っている。
「で、ときどき、ああいう会に参加して、思いを遂げてるっていうわけです」
「…奥さんは?」
梨央が訊いた。
「僕ね、婿養子なんですよ。ここは妻の父親がやっていた歯医者で…」
「そうなんですか」
察しはつく。
「ここでできたら最高なんですけど…。ごめんなさい失礼なことを…」
「今ですか?」
「えっ。ええ、今ですけど…今でなくても…いつでも…」
取り乱した後藤の表情がかわいい。
梨央は、頭をさらに下にさげ、口を開いて待った。
後藤は立ち上がり、ズボンもパンツもいっしょに降ろし、白衣の前をはだけて梨央の前に立った。
後藤のペニスが梨央の口の中に入る。
同時に後藤の手が梨央の乳房の上に置かれた。
乳房を鷲づかみにしながら、後藤は、ゆっくりと自分の肉棒を梨央の口の中に収めていく。
半分が収まった。
さらに突いてきた。
「ぐふっ」
後藤は喉の奥にまで突き入れてくる。
とうとう根元まで収まった。
「治療代は、1217円になります」
受付のカウンターで後藤は梨央にそう告げると、自分の財布から2万取り出し、それをカウンターに置いた。
「1万円お預かりします」
後藤は、自分が置いた一万円札2枚のうちの一枚を拾い上げると、
「8713円のおつりです」
そう言って、一万円札と8713円を梨央に渡そうとする。
「すいません。治療代はいただかないと違反になっちゃうんで…」
別にお金が欲しいと言ったわけではない。
「いいの?」
「はい」
「じゃぁ…」
梨央はそのお金を受け取った。
「次のご予約ですが…」
「えっ、まだ来るんですか?今日でおしまいじゃ…?」
「だめですか?」
後藤が困ったような顔をする。
(そういうことか)
「いいわ。次はいつ?」
「来週の火曜日の7時は、どうですか?」
「火曜日の7時ね。わかったわ」
後藤が、診察券の裏に予約の日時を書き込んだ。
(歯医者の時間外治療か…。バレるわね、きっと…)
悶絶 END
悶絶 (1) (2) (3) (4) (5) (6)