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悶絶(4)
(4)
店に戻ると、美香はすぐにチャイナドレスに着替えた。
遅れないように梨央も急いで着替える。
「梨央、あなたはこれをつけて…」
梨央は、紫アゲハの形をしたアイマスクを渡された。
「わたしは、これが仕事だけど、あなたは、もし知ってる人がいたら困るでしょ」
(そうか…、そうだわね)
知ってる人がいるなどと考えたこともなかった。
偶然、公園に居たサラリーマンの前でオナニーをさせられたことがある。
けっこう家から遠くない場所の公園だったが…。
(偶然いたんじゃないかも…。見ず知らずじゃなかったのかも…)
今まで、けっこう見ず知らずの男達に見せたり触らせたり、舐めたり、ときにはセックスもしてきた。
ただ、その後、その男達とどこかで出会ったことは一度もない。
すべて純一が仕組んでいたのかもしれない。
梨央はそう思った。
「出番です」
店のほうから、黒服の男性が呼びに来た。
「さぁ、ショータイムよ」
ドラマや映画で馴染みのあるセリフを美香が口にした。
それを実際に聞いて梨央は、ショーに出るのだということを実感した。
ステージに上がると、梨央はすぐに“いるかもしれない”知った顔を捜したが、小さいながらもステージにはスポットライトが当たり、ステージからは店の中の男達を識別するのは難しかった。
美香が深々と挨拶のお辞儀をする。
梨央も同じようにお辞儀をする。
ステージは店の中央。
超ミニのチャイナで深くお辞儀をすれば、反対側の客にはお尻を晒すことになる。
それもあいさつだ。
美香は四方にお辞儀をした。
美香は、梨央の手首に革のベルトをつけ、乳房の下の辺りを幅の広い革のベルトで締め付けた。
美香がリモコンを操作すると上から同じような皮のベルトが降りてきた。
美香は、梨央の手首と胸のベルトをその皮のベルトにつないだ。
「吊るわよ」
美香が梨央の耳元で囁く。
縛られることもほとんどない梨央は、吊られたこともない。
ただ、梨央が不安を感じる前にベルトが引き上げられた。
ゆっくり腕が引っ張られる。
腕が伸びきる寸前に胸が締まった。
(ああっ)
腕よりも胸がきつい。
足はまだ、床についているが、背伸びをするだけで、短いチャイナドレスは上に持ち上がる。
梨央が上に引かれるのに応じてお尻が少しずつあらわになっていく。
爪先立ちになったところで、モーター音がやんだ。
梨央のお尻はもう完全に露出していた。
「彼女は、ここにいらっしゃるどなたかの持ち物で、今日が、初めてのステージです」
美香はゆっくりと梨央の身体を360度回転させた。
「もっとよくご覧いただきましょうか…」
美香は、一度、引き上げていたベルトを緩め、今度は、梨央の膝にサポーターのようなものをつけた。
「足を開いて」
もともとサイズも小さかったチャイナ服は、一度ずりあがると、もう元には戻らない。
足を開けば、股間の開いたショーツも開いてしまう。
梨央は、少しだけ足を開いた。
「もっとよ」
美香の声は容赦ない。
梨央はさらに足を開く。
「もっと、もっと」
(どれだけ開くの?)
1m近く足を開いてようやくOKをもらったが、美香は、梨央の膝に手を当て、まるでお相撲さんのように膝を割った。
吊ってもらっていなければ、立っていられない格好だ。
ステージから遠かった客が、いつのまにかステージの周りに集まってきていた。
見えなかった客の顔が見える。
美香は、ここに純一がいると言った。
純一を探す梨央の視界を知った顔がよぎった。
(あっ…先生)
梨央が通っている後藤歯科医院の医師だ。
今日は、純一が集めた人ではない。
梨央は、緊張した。
梨央の目の前にもう一本、こんどはワイヤーが降りてきた。
美香は梨央の膝の裏にスチール管をあてて、それに梨央の膝のサポーターを固定すると、その管の中央の輪にワイヤーを引っ掛けた。
さらに胸に締めたベルトの背中側を吊っていたのを胸側に変える。
(どうするの?)
梨央は、何をされるのか気が気ではない。
「もっと近寄っても結構ですよ」
そう言うなり、美香は、今度は梨央の膝のほうを引き上げた。
梨央の体が宙に浮く。
体が前後に揺れるのを美香が押さえた。
ただ、背中ではなく胸側で吊られているので、足がついていたさっきよりも逆に痛みは少ない。
梨央の足がどんどん上にあがっていく。
とうとう体が水平になった。
ステージの床から1mくらいだろうか、ステージ下の客の目の高さだ。
「見えますか?きれいな色でしょ」
美香は、梨央のショーツの開口部をさらに左右に広げ、指で襞をかきわける。
(美香さん…やめて。恥ずかしい)
見せることも見られることも、恥ずかしくないわけではないが、梨央にはいやなことではなかった。
ところが、“知った人がいる”、ただそれだけのことで、梨央の中に羞恥心が湧き上がってきた。
こんなに恥ずかしいと感じるのは稀だ。
梨央の真っ白な肌が、いっぺんに赤く染まった。
美香が、また、梨央の身体を一周させる。
反対側に来た。
(先生…)
後藤にまちがいなかった。
逆さになった梨央の顔をまじまじと覗きこんでいる。
(気づいた?そんなはずない)
紫アゲハのアイマスクは、顔のほとんどを包んでいる。
出ているのは口だけだ。
わかるはずがない。
(だいじょうぶ。わかるはずがない)
梨央は、何度も何度もそう言い聞かせた。
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